でいりいおくじょのBLOG

2024.01.28

自分らしく料理する

中川一政の絵を始めて見たとき

一瞬で心をわしづかみにされ

しばし、その前から動けなくなりました。

 

20年以上前のことです。

 

その時は、どういう方なのかも知らなくて

それが、どこの美術館だったのかも

さっぱり思い出せないのですが

 

ただ、なぜかわからないんだけれど

ものすごく心惹かれたという記憶だけは鮮明で

以来ずーっと、大好きな存在です。

書かれる文章もいいんです。

 

そんなことを急に思い出したのは

日経で連載中の若松先生のエッセイに

中川一政のことが書いてあったから。

 

引用されている中川一政の文章にハッとしました。

 

それは、こういう内容で

 

人に教えてもらったらすぐにできるようになると思うけれど

自分らしく、自分の仕事ができるようになるためには

それだけの時間はかかる

 

私自身すべて独学なので、

これ、めちゃめちゃわかります。

 

学校に行ったり、料理の先生のアシスタントになったりすれば

短時間で効率よく料理の基礎は学べて

めきめき料理の腕は上がったと思います。

 

でも、一番肝心な事は

ある程度の所まで行った、その先にある

という事を、なぜか私は直感的にわかっていて

 

その先に行くために

そこまでのところを最短距離で行くことに意味はないと思っていたのです。

むしろ、そこまでの所を、一歩一歩自分の足で進んでいくことで

その経験が自分を支えると思っていました。

 

実際は

料理をきちんと学校で学んでいない事や

アシスタントの経験がない事や

グルメなお店で食べた経験がほとんどない事や

そういう事で、ひどく見下されるという事、

料理を仕事にしていると、当然あります。

 

仕事のチャンスを失ったことも、数えきれないくらいあります。

 

けれど、やっぱり、最終的には

そういうものを持っていようが、持っていなかろうが、関係ないと思います。

 

先に行くためには

そんなものは何の役にも立たない。

 

先に進むってことは

いかに自分らしく、自分の料理を作れるかってことだからね。

 

そこで、自分を支えてくれるものは

数えきれないほどの失敗経験や

やれどもやれども上達しない料理の腕に対する絶望や

疲れて果てて、やりたくないと心で叫びながら家族に作った料理や

どうやってもアイデアが浮かんでこない苦しみや

そういう、自分の経験。

 

それしか自分を支えられないと思うのです。

 

もう、本当にだめかもしれないと思った事なんて

何度もあります。

 

でも最後の最後で自分を信じて

誰かのまねではなく、自分の料理というものを守れたのは

そういう数えきれない経験のおかげだと思っています。

 

今でも、試作している時は

とんでもないものを作ったりしていますが

 

それが私を作っていると思っているから、

その経験を、今も大切にしています。

 

我ながら、不器用な生き方だなとつくづく思います。

 

2024年1月27日とら

コメント

  1. モフモフごろごろ より:

    とてもとても共感しました∼~😊

    ほんと、わたしの全ての感情、体験はかけがえのないわたしの財産、宝物です!
    これからも、そのままの私に正直に(^^♪

    YouTubeもいつも楽しみにしています!
    簡単で美味しく、お助けマンのレシピ大好きです💖
    ありがとうございます~!!

    1. 奥薗壽子 より:

      うれしいコメント、ありがとうございます。
      そうですよね。自分らしくです。
      これからもよろしくです。

  2. ちゃび より:

    “しばし、その前から動けなくなった”なんてものに出逢えるって素敵ですよね。

    私は“絵描き”ではありませんが、芸術鑑賞は好きで若い頃よく色々観に行ったりしていました。

    好きな画家の作品を主に観に行っていましたが、他の画家の作品も同時展示されているイベントに行って、他の画家の作品に魅入られた事もありました。

    中川一政さんは知りませんでしたが、先生の話を聞いて少し観てみました。
    なかなか個性のある絵ですね。
    私自身は美術的な絵は描いていませんが、娘が幼い頃からずっと描く事が好きで、今時の言い方?でいうと?“絵師(の卵?)”です。
    なので先生を虜にした?絵もとても気になります。

    そして、先生の“その先に行くために、そこまでのところを最短距離で行くことに意味はないと思っていた。”という言葉はとても心にガツンと響きました。

    何度も何度も復唱して考えたい言葉(考え方)です。
    たぶん娘も同じ感覚のタイプだと思います。

    独学で極めるって、簡単ではなく、そして物凄い素晴らしい才能であり、大きな強みだと思っています。
    なので娘の考えにも納得感もあり、感心もしているのですが、私自身がずっと型にはめられて生きてきたような人間なので、娘に対してそれは物凄い素晴らしい事!と思っているし、そう言ってもいますが、1人でそんなに考えられてやっての蹴られてるって物凄いんだから、学べばもっともっと早く会得できるよって言ってしまいそうになる所があります💧
    正直、子育ての壁にずっとぶち当たり続けている状態です。
    娘は早道は知っていても、自分はその道には向かわず、自分一人の力でやってのけて会得して、開拓して開進していきたいんだ!という考えのようです。
    私はそれに対して否定的ではありませんが、例えるなら私は型からはみ出ないようにと気を付けるマニュアル君で生きてきた人間で、娘は冒険家、開拓家。
    私も専門職に携わってはいましたが、私よりももっと職人的、クリエイティブタイプだなと思っています。

    先生が独学だったってのは驚きましたが、でも世間の誰もが知っている存在であり、絶大な信頼を得ている家庭料理研究家としての知名度も激高!
    本当に凄いと思っています!
    自分自身の力で確立されたのだと思いますし、“先生らしさ”の料理はとても分かりやすく、ファンも多く、浸透しているし支持されています!
    (レシピ本のレビュー見てるとよく分かる!”)

    先生の確固たるお考え、自信を持って貫き、もちろん多大なる努力も経て確立された賜物だと思います。

    私事の話ばかりして申し訳ありませんが、私の娘はこの先、大きく開花するか、真逆を行ってしまうかのどちらかだと思っています。

    先生のように明るい花を咲かせられる方へと願います(;^_^A

    1. 奥薗壽子 より:

      私思うんですけど、その人が持っているスピードがあると思うんですよ。
      私も近道できないタイプで、そっちに行った方がはやいと分かっていても、遠回りする方を選ぶ。
      近道があるのに、なんで遠回りするの?って聞かれても
      近道したくないってことに、理由などないのです。
      娘さんは、きっと私と同じタイプです。
      近道も、遠回りも、どっちが正しいというのはないと思うんです。
      自分が選んだ道を歩くしかありません。
      娘さんは、私と同じで遠回りすることが苦ではないのだし
      たぶん、苦労しても後悔はないと思います。私は娘さんを応援します。
      大丈夫と思います。

  3. ちゃび より:

    お返事ありがとうございます。
    娘は今、とても甘えた生き方をしています。
    社会に出たら沢山の壁にぶち当たり、苦悩もする筈。と思っています。
    辛い思いや生きにくい生き方をしてほしくない。と思いますが、揺るぎなく“自分”を持っていて、必要ない。やりたくない。と思う事は、誰になんと言われようとも動きません。
    100%自由人です。
    生徒本人である娘より、親の私の方が登校日数が多いです💧
    私が今、苦悩だらけです(笑)
    でも娘の芯は物凄く頑丈だし、娘の人生は娘のもの。
    苦労しながら好きに生きていけばいいかと最近は思うようになりました。
    先生が仰ってくれたように、苦労しても後悔しない子だろうと思います。
    きっと、逞しく生きていくだろうと思うようになりました。
    同じ年頃の子達、“普通”とはかけ離れた生活をしていますが、親の私以外の人様には迷惑もかけてないし、人としても思いやりも持ってる子なので、好きにさせてやるのが結果的に彼女の人生も良いものになるのかもとも。
    彼女の未来は彼女のものなので。
    愛してるから手放しで貝になるのは難しいし、親として悶々と辛くなったりもしますが、尊重して応援してやれる存在でいてやりたいと思います。
    先生のページなのに、私事を沢山してしまいすみません!
    それなのに親身に聞いてくださり、暖かいメッセージをありがとうございました。
    心より感謝します🍀*゜

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