家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
直木賞を受賞した話題作なので
前から読みたいと思いつつ、なかなか手に取ることができなかったのですが
最近映画化もされたという事で
これはもう、とにかく読まなきゃと思って読み始めました。
「蜜蜂と遠雷」(上・下)(恩田陸著 幻冬舎)
国際ピアノコンクールの一次予選から本選まで
コンクールを通して、成長していく人間模様を描いた作品です。
音楽という、目に見えなくて、すぐに消えてしまうものを
言葉に置き換えると、こんな風になるのか
という事に、とにかく圧倒されます。
時にドキドキしながら
時に苦しくて苦しくて、本を閉じて深呼吸しながら
時に、つづきが知りたくて、ページをめくるのももどかしくなりながら
音楽と言葉の中にどっぷり浸れます。
読後感は本当に気持ちよく
とてもいい物語でした。
それぞれの登場人物が、コンクールを通して成長していく過程は
苦しくもあり、切なくもあり
でも、それぞれに共感するところあり、です。
音楽というのは、芸術だし
何か決められた正しさみたいなものを基準にして
最も素晴らしかった人を選ぶのがコンクールで
コンクールで優勝するという事は、すごいことなんだとは思うけれど
でも本当は、そこは、一つの通過点で
自分を成長させるチャンスであり
コンクールという、極限状態の中で、何を感じ、何を得たのか
本当はそっちの方が大事で
それは、誰かに評価されるような類のことではないんですよね。
それをどれだけ糧にできるのかという事にこそ意味があるんだとおもう。
それは、外からは見えなくて、それぞれの人の心の中にあること。
比べたり、評価するべきじゃないこと。
この本は音楽の話だけれど
多分、このことは音楽のことだけじゃなくて
他のことにも、当てはまる気がします。
何かの目標に向かって、一生懸命やって
それが、思ったような評価を得られなかった時、
その結果を見て、自分のやったことが全否定されたような気持になったり
すべてが無駄だったような気持になることがあるけれど
本当は、全然そうじゃない。
結果だけを見て、ダメだと思っていること自体が勘違いで
結果じゃないんですよ。
ああ~~~~~、そうなんだよ、私。
人の呼吸っていうのは、
「吸って吐く」のではなく「吐いて吸う」のが基本なんだって。
とにかく、全力で頑張って、力を出し切ったところからがスタートなんです。
そう考えると
ああ、私はまだまだ、息を出し切っていないかも、って思う。
まだまだ、頑張って頑張って、持てる力をもっと出し切って
そうして、出し切ったところで新しく入ってくるエネルギーがどんなものなのか
それが知りたくて、たまらなくなります。
そういう風に生きていけば
いくつになっても、まだまだ成長できる気がしてきます。
余談ですが
この小説のあとがきを書いているのが
恩田陸さんの担当編集者さんで
この方の文章が、またいいの。
これを書いておられるときの、恩田陸さんの
素の姿を垣間見ることができ
恩田陸さんもまた、全力で息を出し切った方だったんだという事がわかり
ますます、この小説が好きになりました。
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