でいりいおくじょのBLOG

2020.05.14

読書日記「旅行者の朝食」

何度読み返しても面白く

読み返すたびに、笑ったり、へえーと感心する

やっぱり、開高健さんと米原万里さんは食の本の双璧だと思う

 

「旅行者の朝食」(米原万里著 文春文庫)

 

著者はロシア語同時通訳者であり、名エッセイスト。

惜しくもお亡くなりになって、ずいぶん経ちますが

依然としてファンは多く(私もその一人)

書かれたものは、不思議なくらい古くなっていなくて

何度読んでも、やっぱり面白い。

 

実際、私はこの本、もうすでに2回くらい読んでいるんですが

読むたびに、新しい発見があったり

同じところで、ああそうか~って思ったり

やっぱり文章がうまいわあ~って感動したり。

 

例えば、

今のフランス式の料理のサービスの仕方って

もともとは、ロシア式の料理だし方だったという話。

これだけで、面白いと思いません?

 

もともとフランス料理は、最初から全部の料理をテーブルの上に並べ

そこから好きに取り分けて食べるやり方だったそうなんです。

 

このサービスの仕方だと、見た目は豪華で派手に映るんだけれど

温かいものを温かく

冷たいものを冷たく食べるという事ができない。

 

一方、ロシアでは、一品一品料理を出していくというのが伝統的なサービスのやり方。

 

19世紀になってから、フランスが、このロシア方式を取り入れて

今のスタイルになったそうなんです。

 

へえ~~~~~っ、へえ~~~~~~っ、へえ~~~~~~

ですよね。

 

ところが面白いのはここからで

 

そういう予備知識を持った人が、ある時ロシア人のパーテイーに招かれると

テーブルに何種類もの料理がびっしりと並べられているんです。

 

「あれ、ロシアでは、本家のロシア式サービスではなく

フランス式サービスで料理が出されるのか」

って、思うわけ。

 

フランスはロシア式サービスを取り入れて一品ずつ出すようになったのに

ロシアは、フランス式を取り入れて、全部をテーブルに並べるやり方をしているのかと。

 

ここからが面白いところ。

予想の上を行く。

 

実は、最初に並べられているたくさんの料理は

全て冷たい前菜で

この後温かい前菜、スープ、魚料理、肉料理と運ばれてくるそうな。

 

それを知らない人は

最初の料理がすべてだと勘違いして食べてしまうので

メインの料理まで、到底たどり着けなくなるんだって。

 

二重三重に興味深い

面白いなあ、こういう話。

 

また、この外には、キャビアの話も面白かったなあ。

 

キャビアといえば、チョウザメの卵ですが

昔はたくさん獲れていたのに、

ある時を境に、乱獲とか、環境破壊とかが原因で全く獲れなくなっちゃったそうな。

これは大変だっていうんで、なんとかせねばッてことになった。

 

で、考えてみたら、鮭の場合、卵(いくら)を産んだら、

もう後は死ぬしかないんだけれど(お産は一回だけ)

 

でもチョウザメの場合、何度でも卵がうめるそうなんで

それなら、卵を持ったチョウザメを捕まえて、麻酔をして

お腹を切って卵(キャビア)だけを取り出し

もう一度縫い合わせたらいいじゃないかという事になり

でも、どうせなら、次の卵を取り出しやすいようにしようってことになって

特殊なジッパーを取り付けて、同じ親魚が何度も産卵できる方式を実現した。

 

・・・・・。

 

なんて話がまことしやかに書かれているのですが

実は、これは全くのガセネタで

まんまと騙される。

(そのあと、本当の話もきちんと書かれています)

 

という風に、とにかく、どんどんどんどん読まされちゃうんです。

 

読みはじめたら一気読みです。

 

同時通訳という仕事は、

その場で、瞬時に翻訳する必要がある。

 

じっくり調べることができる翻訳者とは、そこが違うところで

とにかく膨大な知識を持っていないといけないそうなんです。

 

現場に向かう前には、

膨大な予習が必要で、そのためにものすごくたくさんの本を読まないといけないのだそう。

 

それがあっての、この知識と、語彙力と、表現力なんですね。

 

本当にただただ、恐れ入るしかありません。

 

とにかくすごい。

自分の勉強不足を思い知り

頑張ろうって気になる。

 

米原真理さんの本はどれもハズレがありませんが

食に興味があれば、この本は本当におすすめです。

 

2020年5月13日旅行者の朝食

コメント

  1. 山崎 より:

    エビのトマトクリームスパ、おいしそう。お店の味ですね。作ってみたいです。

    1. 奥薗壽子 より:

      是非是非、お試しあれ。

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