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目指せ京都本100冊読破!‥の4冊目
「京都人だけが知っている」(入江敦彦著 宝島文庫)
実は、この本は最初に2001年に単行本で出版されて
私は、その時にその単行本で一度読んでいるのですが
あの当時、私は、九州経由で東京に引っ越して数年たったくらいの時期で
京都人と言いつつ、京都のことはほとんど知らず
かといって、九州人でも東京人でもないという
ほとんどアイデンティティーが崩壊しているような状況だったこともあり
ほとんど内容を理解できなかったんです。
まるでよその国の話を読んでいるみたいな感じでした。
結局、その本はいつの間にか失くしてしまっていて
文庫になっていることを最近知って、
もう一度読んでみたくなって買いなおしたのでした。
で、
改めて読んでみてびっくりした。
めちゃめちゃよくわかり
そうそうそうそう・・・・って、めちゃめちゃ共感しました。
たぶんね
ずーっと京都に住んでいる京都人が読んでも
そんなに共感しないかも。
京都に生まれ育った京都人で、そのデイープな部分を感覚的に知っていて
なおかつ、京都の外にいて、京都を俯瞰でみることが出来た時
おおおおおお~~~って、思うんだと思う。
そんなわけで、
いちいち、うなづく私でありました。
例えば京都語について
間接話法と婉曲表現が特徴で、
感情を出す前に幾度も内部で屈折させて、独特の修辞をこれでもかとのせて
それを柔和な音で発音する。
これ、たぶん、京都人以外の人にはめちゃめちゃわかりにくいと思いますが
京都人の私は、めちゃめちゃわかる。
でもね、東京に25年くらい住んでいると
間接話法や婉曲表現が、ネイティブの京都人にしか通じないこともよくわかっているし
内部で感情を屈折させると、まとまる話もまとまらなくなるので
(江戸っ子弁は、単刀直入、ストレートで黒白はっきり)
その辺は、バイリンガルに使い分けられるようになったけどね。
そんなささやかなことで、じわっと笑ったり、ニンマリしたり
かなりマニアックな気分に浸れます。
そういえば、
今回、へえ~っと思ったことがあって
それは聖護院かぶの話。
聖護院株って、京都を代表する漬物、千枚漬けの材料ね。
バレーボール位ある大きなかぶで
冬になると、漬物屋さんの店頭などに、山積みになっていたりします。
京都に聖護院というところがあって、
その近辺で栽培されていたことで聖護院かぶという名がついているわけで
由緒正しき京野菜かと思っていたら
天保年間に、洛東で作られた近江のかぶを、聖護院に持ってきて育てたことで
聖護院の名をつけて、京野菜になったそうで、
嗚呼~、近江~。
生粋の京都やなかった~。
しかも、この聖護院かぶ
栽培地がどんどん移動して
衣笠から紫竹、玄琢と、どんどん京都の西北へと移動し
そのうち、京都市内を通り越し
昭和30年代には、亀岡で栽培されるようになったそうな。
実は、私の祖母の田舎が亀岡で
確かに、亀岡で、うちの親戚も聖護院株を栽培していました。
千枚漬けのかぶを、なんで亀岡で作るのか
不思議に思ってたのですが、久しぶりの読んで謎が解けました。
ちなみに
聖護院かぶって、規格がものすごく厳しくて
かぶの形が、きれいに左右対称になっていて、
きちんと中心に芯が来ていないとだめなんですよ。
そうでないと、きれいにスライスできないから。
だから、形がちょっとでも歪んじゃうと、商品にならず
買い取ってもらえないから自分ちで食べるしかなく
時々もらって、煮て食べたりしてました。
きめが細かくて柔らかいかぶなんで
煮てもすごーくおいしいんだけれど
なんせ大きいので、一つもらったら食べきるのが大変で
だから、商品にならないかぶを、いくらでもやると言われても
なかなか、たくさんもらえないのが、悔しかったのを思い出します。
そんなことも、京都にずーっと住んでいたら
見えなかったことが、たくさんあったなあなんて
改めて思いました。
それにしても、京都人は、日本の中でも特殊な民族だと思う。
京都人以外の人に読んでほしいような、読んでほしくないような
複雑な気持ちになる本でした。
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