家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
ちょっと前に、第164回の直木賞受賞作を読んだので
「芥川賞」の方も読んでみました。
「推し燃ゆ」(宇佐美りん著 河出書房新書)
推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。
から始まるストーリーは
出だしから、心をわしづかみにされます。
主人公のあかりは高校生で
推しは、アイドルグループ「まざま座」の真幸くん。
あかりは、学校も、私生活もアルバイトも、何もかもうまくいっていません。
実は、彼女なりに精いっぱい頑張っているのだけれど
病気(病名ははっきり書かれていないのだけれど、おそらく発達障害)のために
頑張っていることが伝わりにくく、努力が足りないとか、さぼっているように誤解されがちなんです。
注意力が散漫で、
簡単なことも覚えられないし
順序だてて物事を整理することや、想定外のことに対応していくことができません。
そんなあかりなのですが
推しの真幸君の事となると、別のスイッチが入って
とってもしっかりした普通の女の子になれるのです。
つまり、あかりにとって、単なるファンというのではなく
彼女の背骨であり、暮らしの骨格でもある。
子供のころから、普通の子のように、いろんなことがうまくできないあかりは
子供のころは、お姉ちゃんと同じようにできなくても
周りが許してくれたし、ぎゅっと抱きしめてもらえたんです。
けれど、大人になると
あかりは何にも変わっていないのに
っていうか、何にも変わっていないからこそ
ちゃんとできないことで回りとの溝ができていくわけです。
なんで、ちゃんとできないの?と。
がんばっていないわけじゃない
頑張っているのだけれど、できないんです。
真幸君が子役の時に演じたピーターパンで
大人になんかなりたくない!!
と叫ぶシーンがあり
それが、そのままあかりの中に入ってきたんだと思います。
ずーっと子供のままでいて
できない自分を受け入れて、よしよししてほしい。
あかりの本心は、そこにある気がします。
ちなみに、お姉ちゃんの名前はひかり
主人公はあかり
光は、そこにあるだけで明るい。
けれど、あかりは、誰かがともさなければ光を発することはできない。
光というのは、自然に発するもので
あかりは、誰かがともさなければともらない。
その辺も、示唆に富んでいて
あかりは自力では光れないのです。
あかりにとって、真幸君は光りをともしてくれる人であり、
普通の人になるための背骨だったのです。
その真幸君が事件を起こし、
これからの活動がどうなるのか、わからない状態に。
さあ大変・・・。
ストーリーを言葉で書くと、
なんだか、軽い話のようにも思えますが
実際に読むと、かなり雰囲気は違います。
いやあ、正直、唸りました。
うまいです。
いろんな意味で、すごかった。
本の帯に、大好きな高橋源一郎さんが
すごかった。ほんとに
というコメントを書いておられるのですが
私も同じことを言いたいです。
すごかった。ホントに。
最後の終わり方も、私はうなりました。
このすごさは、読まないとわからないかも。
この作者の別の作品も、読んでみたくなりました。
おすすめです。
コメント