でいりいおくじょのBLOG

2013.05.05

ごはんぐるり

西加奈子さんの作品はけっこう好きです。
まず、ええっ~!?と思うのがイラン生まれ、エジプト、大阪育ちという経歴。
自分の知り合いで、イランとかエジプトとかで生まれ育った人がいるかぁ?
私なんか世界地図でどこにあるかも正確にいえへんし。
イラン、エジプトという特殊な文化と大阪という強烈な関西DNAが融合した結果
楽天的なのに小心で、鷹揚なのに繊細で、時に独特な大胆さで達観に至る
このへんがなんともいえずグッとくるのです。
 
「ごはんぐるり」
(西加奈子著 NHK出版)
この本は、雑誌今日の料理で連載されていた食べ物エッセイを一冊にまとめた最新刊。
連載中から毎回楽しみにして読んでいたのですが
今回一冊になったということで西ファンとしては早速購入。
改めて一気に読みました。
 
この本に書かれている食べ物は
決してグルメというものではありません。
けど、西さん自身が料理が好きと書いておられるように
食べることや作ることが好き、という気持ちのようなものがすごく伝わってきて
そして、その「料理が好き」というのも
「私、けっこうイケてるでしょ」的な要素は全くなく
別にそれをアピールしたり自慢したるするんじゃなくて
本当に誰かに作ってあげたり、誰かと一緒に食べたり飲んだりするのが好きで
その満ち足りたな何かを、一生懸命言葉にして紡いでいっているというような
そんな感じのエッセイなのです。
西さんのエッセイ集としては
「この話、つづけてもいいですか。」
(西加奈子著 筑摩書房)
というのがもう一冊あって
こちらはかなり強烈な私生活が書かれていて
小説になっているモチーフのあれこれを垣間見ることができ
これも西加奈子作品を読むにはおすすめの一冊。
 
今回のエッセイは、
連載されていたのが「きょうの料理」、NHK出版ということが影響しているのか
それよりは、かなりテンション抑え目ですが
それ分、西さんの繊細な優しさのようなものがよく出ていて
私は、こちらも好きです。
 
エッセイの中に
読書が好きで、特に食べ物の描写があると立ち止まるという話があって
それすご~く分かるんですけど
反応している料理が、私とは全然違っていて
 
読んでいるものが外国の本が主流で
 
フライにして、グレーヴイーでトロ煮にしたマーモットの肉と
ルバーブのパイを持っていくピクニック
とか
簡易食堂で出されるクラブ・ケークとひきわりとうもろこしを・・・
とか
アップルジェリー付き塩振りクラッカーとポテトチップス
濃いアイステイーで流し込むホイートブレッドとケール
 
というような箇所に反応する西さん
さすがに反応するところが違う・・・。
 
でも、西さんの言うように
食べ物って文字で書かれると、なんだかわからなくても美味しそうな感じがする。
たぶん、その料理が目の前に出てきたり、実際に食べてみて利するより
こんなふうに文字で読むほうが、何倍も美味しそうな感じがする。
 
お江戸の時代小説とかに出てくるなんでもない煮っころがしとか
漬物とか豆腐とか
明治時代のハイカラな人が食べていたアイスクリームとか
文字で見ると、今の実際に食べているものよりも
もっともっと美味しかったんじゃないだろうかと思ってヨダレが出るもんね。
 
文字の力、すごい!!
 
あとがきを読むと
食べ物についてエッセイを書くなんて簡単だと思っていたら
だんだんネタが尽きてきて
後半はかなり苦労され様子。
 
最後には
トルコ、セネガル、ベネゼエラ、フィンランドの料理を習いに行くという体験までされ
けっこう、頑張られたってよう。
それも、全部包み隠さずに書かれるところが、また好感が持てるところ。
 
ゴールデンウイークもそろそろ終わり
こんなのんびりした食べ物エッセイを読んで過ごすというのも、
悪くないんじゃないかと思います。

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