家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
第24回手塚治虫マンガ大賞受賞作
「ニュクスの角灯(ランタン)」(全6巻)(高浜寛 リイド社)
を読みました。
舞台は
1978年の長崎
明治維新から10年ほどたって
世の中に西洋のものがじわじわと入ってきている時代。
特に長崎という土地柄だけに
外国文化はいち早く入ってきています。
主人公の美世は
西南戦争で両親を亡くし
おじさんの家に預けられるのですが
酒乱の父親から、お人形のように育てられたという過去があり
そのことは、心に影を落としています。
やがて
西洋骨董屋の”蛮”というお店で働き始めることになった美世。
物語はそこから始まります。
最初は、まったく自分に自信がなかった美世だったのですが
骨董屋”蛮”の店主、百年(モモさん)や、モモさんの養父岩爺(がんじい)や
そのほか、たくさんの出会いの中で成長していく話です。
とはいえ、
よくある、ただの成長物語とは違うのは
この明治の初めという時代。
いろんな価値観が大きく変わり
西洋の文化や物が、大量に日本に入ってくる。
その時代考証が、とてもしっかりした漫画で
間に挟まれた、著者の話もめちゃめちゃ面白く
まるで歴史小説を読んでいるようで
それが、この漫画の魅力でもあります。
いや、もちろんストーリも、いいです。
何もできなかった美世が
自分の心の弱さに向き合い
フランスへと渡り、違う文化に触れあううちに
更に大きく成長していくところは感動します。
そのこともあって、
この漫画は、私にとってもとっても面白かったんです。
もちろんストーリもすごくいいです。
少し恋愛要素もあって、キュンキュンするところも多々あり
めちゃ号泣するシーンもありました。
漫画の最後に出てくる
アメリカの神学者ラインホルド・ニーバーの詩
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神よ、どうか私のお与えください
自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを
変えられるものを変えていく勇気を
そして、
二つのものを見分ける賢さを
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この詩が、この漫画のテーマだと思います
美世は、この賢さで
自分の未来を切り開きました。
周りの状況
父親のトラウマ
初恋の人への届かぬ想い
自分の力ではどうにもならないことを
どうにもならないまま受け入れ
その上で、今自分にできることを精いっぱいやって
混沌の時代を力強く生き抜きました。
悪いことの後にはいいことがあり
いいことの後には悪いことがある
だから、目の前に起こっていることで
一喜一憂せず
自分を見失わず
自分が今やるべきことをやって
今日を生きる事
そのことの大切さも
この漫画は教えてくれている気がしました。
そういう意味では、
今のコロナの時代
読むべき漫画なのかもしれません。
最後の終わり方は、
ある意味ハッピーエンドであり
ある意味ではハッピーエンドではないのだけれど
私は、美世はすべてを受け入れたと思うし
幸せな人生だったと思います。
いろいろ考えさせられるし
繰り返し読みたくなる、心に残る作品でした。
おすすめです。
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