家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
減塩本の終わりが見えたと思っていたのに
最後の最後に難航しています。
減塩本なので
各料理に塩分量を入れるのですが
その塩分量に関して
使った調味料の塩分量を足すだけなら
問題なくサクサク進むのですが
今問題になっているのは
魚の下味に使った塩が
果たしてどれくらい魚に浸透するのか。
塩を直接魚にふり、10分ほどおいて出てきた水分と共に拭きとった場合
ふった分量の約60%が魚にはいる、というデータはあるそうなのです。
けれど、今回の本では
魚を塩水に浸けて下味をつけつつ、臭みを抜く方法を使っている料理が出てきます。
この方法は、私が昔からやっている下処理法ですが
一般的な方法ではないため、データがありません。
減塩で魚を料理する場合、
何が一番難しいかというと
魚の生臭みをどうやって取るかということです。
鮮度のいい魚を使えば解決するのでしょうが
減塩したいと思っているすべての人が
いつもいつもそんなに鮮度にいい魚を買えるとは限りません。
夕方のスーパーで買った魚であっても
美味しく減塩できる魚レシピを考えるのが、家庭料理研究家の仕事です。
魚は普通、塩をして身を締めることで臭みが抜けます。
けれど、減塩料理の場合、この塩が問題になるため
美味しくするための下処理で、塩分を取り過ぎてしまう可能性が出てくるのです。
しかも減塩料理ですから
調理に使う調味料自体も、ふつうのものより少なく
その少ない調味料を効果的に活かすためには
素材の旨味をどうやって引き出すかが、大きなポイントになります。
塩水につけるこの方法は
短時間で臭みが抜けるし
短時間でひき上げれば、それほど塩分が浸透することもありません。
繰り返し繰り返し、この方法で下処理をしてみて
この方法なら、直接塩をするよりは塩分が浸透させず
臭みを効果的に抜くことができるという確信がありました。
けれど、データがないのです。
データがなければ、実際やってみた結果がそうだと思っても
予測の域を超えることができません。
ここ一週間ほど
この下処理の塩分量について
どうすればいいかという意見を出し合い
いろんな可能性を探っているところです。
まだ、結論は出ていません。
今回の本は減塩料理の本で
はじめて減塩をしたいと思っている人に向けた
言ってみれば減塩ビギナー向けの料理書です。
減塩ビギナー向けだといっても
減塩に関しては、健康につながる問題なので
可能なかぎり、誠実に真摯に向き合いたいと思って来ました。
けれど、私一人が誠実に真摯に向き合いたいと思っていても
一人の力では、その情熱は情熱だけで終わってしまうわけで
今回の下処理の問題にしても
私が問題に思うだけでは、本に反映されるとは限らないわけで
そういう意味では
この私の不器用な誠実さや真摯な情熱を共有してくれるスタッフに恵まれたことが
なんとありがたいことか、今さらながらに感じています。
みんな根気よく付き合い
少しでもいい本にするために
まじめに、本当にまじめに、取り組んでいます。
そのことを思うだけで
ありがたくて
私は、正直泣きそうになってしまいます。
魚の下処理の問題は
まだ、結論が出ていませんが
この本が間違いなく真面目で正直な本に仕上がっていることは確かです。
ホントです。
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