家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
茶碗蒸しって、なんだかテンション上がる食べ物ですよね。
中に蒲鉾と三つ葉くらいしか入ってなくても
なんだか、すごくごちそう感がある。
10年以上前に
「ズボラ人間の料理術」(サンマーク出版)
というシリーズ本を出したんですけど
このシリーズは、定番家庭料理のプロセスを一つ一つバラバラにして
必要な手間とそうじゃない手間に分け
必要な手間だけを残してシンプルに作り直したら
こんなに簡単に作れて、なおかつおいしくなるということを書いたもので
読み物だけの本と、写真付きレシピ集とがあります。
その中で茶碗蒸しも取り上げています。
茶碗蒸しのめんどくさいところは
1.だし取り(だしでおいしさが決まるものね)
2.だしをいったん冷ましてから、卵液に混ぜる。
3.卵液をざるでこす(ざるって洗うのがめんどくさい)
4.具材をあれこれ準備しないといけない(エビとか銀杏とかユリ根とか・・・)
5.蒸し器が必要。
ほかにもあるかもしれないけど、
ざっと思い浮かんだだけでも、結構めんどくさい感じがする・・・。
その一つ一つを検討してみたんです。
まずは
1.だし取り。
わざわざつけたりこしたりしないで、だしを取りたいという思いが強く
「ズボラ人間の料理術」を書いた当初、考えたのは
味をつけた鶏ひき肉を器の下に入れ、その上から卵液を流して作る方法。
そうすると、鶏ひき肉からうまみが出るので、卵液は水と卵だけで作っても
食べるときに全体を混ぜてから食べれば、鶏のうまみの入った茶わん蒸しになる・・。
これ、自分ではかなりいいアイデアだと思ったんだけど
一つウイークポイントがあって
混ぜないで上のほうをスプーンですくっちゃうと
味もうまみもない間の抜けた味になる。
食べるとき、必ず最初に混ぜないとおいしくないというのは
やっぱりどこか、レシピ的には未完成な感じ。
もっとおいしくできるの方法はないかと、あれこれ考えた結果
やはり、ここはかつおだしを卵を混ぜるべきだという結論に行き着きました。
それで、計量カップに鰹節を入れて、お湯を注いでだしを取る方法を考えました。
茶碗蒸しのためだけに、だしを取って、それが中途半端に残るのが
私なんかは、すごくめんどくさいと思っちゃうほうなので
これだと、必要な分だけ、ぴったりの量を取ることができるのがいいのです。
このだしの取り方は、すごくいいんだけれど
もう一つ解決しなければならない問題がありました。
卵液に混ぜるだしは、必ず冷ましてからくわえる、というのが
茶碗蒸しつくりの鉄則になっていて
私も、その鉄則から抜け出すことができませんでした。
何でですかねえ。
教科書に書いてあると、それが絶対だと思っちゃう。
鰹節に熱湯を注ぐやり方
やり方としては簡単なんだけど、
だしを冷まさなければならないとなるとめんどくさい。
ならば、湯を入れずに水と鰹節を混ぜたものを卵液に混ぜてみたらどうか。
やってみると
蒸しているうちに鰹節が表面に浮いてしまい、出来上がりが汚くなるのです。
(鰹節は熱湯を注ぐと下に沈むのですが、水に入れると浮く)
どうやったら、手早くだしが冷ませるか
そんなことを、あれこれ考えているとき
ふと、プリンのことを思い出しました。
プリンって、牛乳と砂糖を火にかけて砂糖を溶かし
その熱い砂糖入りの牛乳を卵の中に混ぜるんですよね。
温かい牛乳を入れても全く問題ないし
むしろ、温かいのを入れるほうが卵液が温かくなって、後の加熱がうまくいく。
プリンなら温かい液体を卵に入れていいのに、
茶碗蒸しだと、冷まさないといけない!?
そんなバカなことはない。
鰹節のだしって、カツオを入れてからだしが出るまでちょっと置くので
ぐらぐら沸騰しているものを入れるわけではないし
もしちょっと卵が固まってきても、すぐに蒸せば問題なんいんじゃないか?
やってみると、問題なし。
少なくとも、家で食べるなら問題ない(と、私は思いました)。
ちなみに、卵とだしの割合ですが
普通、茶碗蒸しって卵とだしの割合が1:3とか1:4とか言われているけど
私はおかずとして食べるなら、1:2くらいでもいいかと思っています。
これは、卵豆腐の割合なんだけど、食べた時に食べ応えがぐっと出るので(と、私は思う)
ご飯のおかずにするなら、これくらいのほうがいいように私は思います。
3.卵液はこすべきか、
ということについては
まったく個人の自由だと私は思います。
ざるで超すだけの心の余裕があれば、こせばいいし
こしたくないなら、こさなくてもいいし
こさないことで、うんと気楽に茶碗蒸しが作れるのなら
こさずに作って、茶わん蒸しが食卓に並んだほうが幸せだと思う。
茶碗蒸しって、別に、エビとかユリ根とかが食べたいわけじゃないし
卵とだしがフルフルに固まった、アツアツのところをスプーンですくって食べるのがごちそうなわけなので
具は別に、なーんにもなくってもいいと思うし
むしろ、具が入ってないほうが、卵の割合が多くなるので
うちの家族には、逆に具なしのほうが人気です。
ではいよいよ、蒸し方です。
蒸し器で蒸すとなると、確かに大変。
なので、普段私は土鍋かフライパンを使っています。
蒸すときは、
茶碗蒸しの器にラップをしておくと、水滴が落ちることがありません。
(ふたにタオルとかをまいて水滴が落ちないようにする方法が紹介されていますが、
器にラップをしたほうが、うんと楽)
卵は強火で蒸すと、すが立って、穴ぼこがぼこぼこあき、口あたりが悪くなるので
“必ず弱火”というのがお決まり。
けれど、最初からずーっと弱火で蒸すと、めっちゃ時間がかかるから
最初の3分くらいはがーっと強火で蒸して
フライパン(土鍋)の内部の温度をがーっと上げておいてから
弱火にするのがコツ。
土鍋なら保温力があるので、最初3分強火にすれば、後は火を消しても大丈夫です。
ということで、今日の結論。
だし取りは、
鶏ひき肉を使えば、水と卵だけでも作れるけど
鰹節にお湯を注いだだけのだしをつかえば、さらにおいしく作れる。
だしは、冷まさず入れても大丈夫。