でいりいおくじょのBLOG

2015.01.09

土鍋で炒めるのは、おすすめできません

最近、テレビや雑誌などで

土鍋に油を入れ、具材を炒めてから煮込むという調理過程を見かけます。

土鍋の種類によっては、炒めものもできることをうたっているものもありますが

基本的には、土鍋は炒め物にはむきません。

私はもう20年以上前から、土鍋が大好きで、いろんな土鍋を集めて使ったことがあるし

自分のオリジナル土鍋を作らせていただいたときには

それこそ、土鍋の材料となる土のことなども勉強しました。
 

なので、普通の人よりは土鍋のことをよく知っていると思うので

やっぱり、これは危険なことでもあるので、書いて伝えなければと思った次第。
 

そもそも土鍋というのは、ご存じのように粘土でできているので

拡大してみると、粘土の粒子の集合体で空気の穴がたくさん開いています。
 

土自体が持つ本力の良さもありますが

空気の穴がたくさん開いているため、

その空気の層で熱をキープできるので

更に保温性にアップしているのです。
 

ところが、粘土の粒子というのは、熱によって膨張したり収縮したりするので

急激な温度変化を与えると

収縮がアンバランスになって、ひびが入ったり、割れたりします。

だから、料理の後の熱々の土鍋を

急に洗い桶につけて冷やすと割れることがあったりするんですね。
 

昔から土鍋は急に冷やさないとか、空焚きをしないとか

そういうことは、土鍋を使う上では常識だったと思うんです。
 

そういう常識が、常識でなくなった背景には

いろんな技術革新があって

耐熱性の高い硬質粘土(温度によってあまり変化しない粘土)を使った土鍋が開発され

特に、セラミックの土鍋がでてきたことで、土鍋の使い方は大きく変わったと思います。
 

セラミックはとっても耐熱性が高い粘土なので、空焚きはもちろん、

食べ終わった後、熱々の鍋をすぐに水洗いしても問題ありません。

当然、普通の鍋のように、油でいためて煮るというようなこともできます。
 
 

けれど、です。

今流通している土鍋が、すべてセラミックではないし

多分、自分の使っている土鍋の材質がなにか

全ての人がきちんと把握しているとは到底思えません。
 

説明書を見れば、書いてある場合もあるけれど

電化製品と違って、土鍋の取説なんて、そんな丁寧に読まないと思うし

きちんと保管もしてないと思うんですが、いかがですか?
 

そういう状態で

土鍋で炒め物をしている映像を見てしまうと

土鍋って、普通の鍋と同じように炒めて煮ることができると思ってしまう人が

いるんじゃないかと心配しているわけです。
 

老婆心ながら、それは、とっても危険なことだと思います。
 

実は私、以前土鍋が突然割れて、すごく怖い思いをしたことがあって
 

それは、まだ子供が小さい頃で

普通に、土鍋をガスにかけて鍋ものを作っていたんですね。

(基本通り、普通に湯をはって煮ていただけ)
 

で、出来上がったので台所から食卓に運ぼうと思って

土鍋を持ち上げたら、突然割れたんです。

当然中身はバーッと床に散らばって
 

幸い、近くに子供がいなかったし

私自身も大事には至らなかったのですが

やはり、いきなり割れた瞬間は、すごく怖かった。
 

多分、火にかけているときから小さなひびが入っていて

持ち上げた時に、何らかの衝撃が入って、一気に割れたんだと思うんです。
 

となると、同じように普通の土鍋で炒め煮などをしていると

知らない間にひびが入っていて

持ち上げた途端に割れるということは、可能性として起こりうることです。
 

考えただけでもとっても怖い。
 

更に、土鍋にじかに油を入れると土が油を吸って、

その吸った油が土鍋の表面までしみだしてくる可能性があり

そうなると、表面に染み出した油にガスの火が引火したら

土鍋ごと燃え上がることになります。
 

油をいきなり土鍋に入れるの、そういう意味でも危ないのです。
 

ということで、最後にもう一度まとめると
 

お手持ちの土鍋の材質が、どういうものであるか

取扱説明書に、炒めることができると書かれているかどうか

きちんと確認してから、土鍋で炒める作業をしてください。
 

また、炒めることができると書いてあっても

大量の油を入れると、染み出した油に引火する危険があるので

あくまで油は少量で。

(揚げ物は論外です)
 

土鍋は本当に優れた調理道具です。

でも、どんな調理道具でもそうだと思うのですが、得手不得手というものがあって

土鍋は油を使った炒め物、揚げ物には基本的に向いていないのです。

向いていないことをわざわざやるより

保温性や、熱のあたりの柔らかさとか、そういういいところを上手に使った方がいいと

私は思っています。
 

********************
 
1月8日の「日めくりレシピ」は「白菜と鶏むね肉の蒸し鍋」

蒸し物は土鍋の得意分野です。

おいしく蒸し揚がるだけでなく、熱々のまま食卓のせられるのもいいところです。
 
1月9日の「日めくりレシピ」「納豆こんにゃくヌードル」

食物繊維たっぷりの、ダイエットな一品

腸内環境を整えれば免疫力も上がります。
 

「日めくりレシピ」はツイッターでも毎日お知らせしています。

奥薗壽子で検索してみてくださいね。
 

コメント

  1. 森田 昌子 より:

    よろしくお願いします。

  2. 田中宏 より:

    流れてきた動画で土鍋で先に豚バラ肉を炒めて、キムチ鍋を作っていました。
    大丈夫なのかな?と[土鍋 炒めてもいい]と検索したら奥薗先生のこちらのページにヒットしました。

    読ませていただいて、『ですよね。』と
    大納得しました。

    奥薗先生が体験なさったことは本当に恐ろしくて、想像すると胸が痛くなります。

    教えていただいてありがとうございました。

    奥薗先生のYouTubeを観て、料理をするのが楽しくなったひとりです。
    フライパンを使う時は毎回、水滴技を使っております。
    プリンも上手に作れるようになりました!

    ふと、検索した時にこうして、奥薗先生から大切な事を教わって嬉しかったです。

    ありがとうございました。

    1. 奥薗壽子 より:

      うれしいコメント、ありがとうございます。
      昔に書いた記事を、今また読んでいただき、こうやってつながっていける事
      本当にありがたいです。
      Youtubeもみて下さっているとのこと、感謝です。
      これからもよろしくです。

  3. 料理人 より:

    自分で土鍋作ったって素人ですよね?プロの料理人が低温なら炒めてもいいって言ってますから。

    1. 奥薗壽子 より:

      一応、料理研究家歴30年のプロです。
      ちゃんとメーカーさんと共同研究して作りました。
      土鍋の本も出しています。
      その時に勉強したことを書きました。
      土鍋によっては、炒められるものもありますが
      全ての土鍋で炒められるわけではありません。
      土鍋の材質によります。
      プロの料理人と言えども、土鍋メーカーさんの制作現場まで足を運んで研究されているのでしょうか?
      もしそうなら、そんな無責任なことはおっしゃらないと思います。

  4. 荒木周子 より:

    油で炒めるのは危ないと理解できますが、中華風な炊き込みご飯を作る時に香り付けのニンニクやネギ、ショウガなどを別鍋で炒めて、さらに野菜等も炒めて、それを土鍋に移すのも具材が油っぽくてだめでしょうか。あるいは先に米を入れてそこに炒めものを足せば少しはいいような気もするのですが、土鍋は油っ気のないご飯とか鍋物のイメージがあって中華風炊き込みご飯ができるのかどうか悩んでいます。お教示お願いいたします。

    1. 奥薗壽子 より:

      フライパンで炒めた具材を入れた炊き込みごはん、まったく問題ありません。
      土鍋に直接油を入れて、何かを炒めるというのが、危ないという話です。
      中華風炊き込みご飯は美味しくできるので、是非是非作ってみて下さい。

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