家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
プロフェッショナル仕事の流儀
「縁の下の幸福論~校正者・大西寿男~」
を見ました。
校正者というのは、
たぶんあまりなじみのない職業だと思うのですが
本になる前の原稿をチェックする仕事をされている方です。
実は、ちょっと前に
「文にあたる」(牟田都子著 亜紀書房)
という本を読んだばかりだったので
校正という仕事に
尊敬と、興味を持ったのでした。
実は私、校正の方には、相当お世話になっていまして
ただ、私の場合、料理本なので
大変な仕事だということは分かっていましたが
ここで書かれているようなご苦労があるなんて
正直、考えたこともなかったんです、すいません・・。
というのも
料理本の校正というのは
小説のような、文章の校正とはちょっと違って
例えば、
レシピの作り方に矛盾はないかとか
作り方を読んでわかりにくい部分はないかとか
写真の料理の野菜と、材料があっているかとか
(写真に写っていない場合は、作り方の中に入っているかチェック)
材料の切り方(厚みや大きさも含め)あっているか
あとは
表記の統一(青ネギと青ねぎ、出版社によって、ひらがなか、カタカナかが違う)
みたいなことを、細かくチェックしてくださるんです。
私も、何度も何度もチェックするんですが
それでも、見落としてしまうんですよね。
でも、これって、私が作って私が書いているレシピだから
私は、当然レシピが読めるけれど
自分が作ったこともないレシピを読むのって
校正の方は相当苦痛だと思います。
しかも、作り方を想像しつつ、材料の抜けまでチェックしないといけないんですから
相当大変です。
それを考えると、本当に頭が下がります。
で、あらためて
「文にあたる」の話なんですが
著者は
お父様が校正者で
自分には、校正は向いていないと思っておられたんだけれど
むいていないと思っている人の方が、むいているといわれ
いつの間にか、お父様と同じ仕事をするようになったという方です。
この本を読むと
校正という仕事のイメージが変わります。
校正って、日本語の誤字脱字を直される仕事かと思っていたんですが
いやいや、そんな単純な事じゃないってことを知りました。
そこに書かれていることが正しいのか
資料を探し、資料を読みこみ、資料を読み比べ
辞書で調べ、
更には、著者が参考にしたものもすべて目を通し
いやあ、ものすごい仕事量です。
資料を手に入れるために
図書館で探さなければならない場合もあり
一冊、校正するのに
どれだけの労力と時間がかかってるのか。
なのに、
校正の仕事って裏方なので
ものすごく時間と労力をかけてやっても
自分が表に出ることはない。
しかも、
間違いがなくて当たり前
一つでも、取りこぼしがあって間違いが残っていたら
それは、校正者の落ち度として減点方式で評価されてしまう。
校正者が置かれている、厳しい状況なんかの話なんかも書かれており
あらためて
大変な仕事だなあと思いました。
一冊の本には
表に現れない、たくさんの物語が含まれています。
校正の方が、一つ一つの言葉について
コツコツ調べていくような地味な仕事のおかげで
本の信頼性が保たれるんですね。
SNSの情報は
言葉が、ふるいにかけられずに、表に出てしまうのに対し
本は、
言葉を細かいフィルターにかけている。
そのフィルター的役割を一手に担っているのが校正
これから、本を読むときは
校正者にも思いをはせられるように
そんなことを思いました。
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