でいりいおくじょのBLOG

2023.03.06

読書日記「読み終わらない本」

大好きな若松先生の新刊が出たので

さっそく読んでみました。

 

「読み終わらない本」(若松英輔著 角川学芸出版)

 

今回の本は

先生が若者に向けて、

手紙形式で書かれている本。

 

読むこととは何か

言葉を媒介にして、自分とどう向き合うか

というようなことがテーマです。

 

前半は、本と、その本が書かれた背景や、著者の話など

ちょっと重めな内容

 

これまでご自分の心に深く残った言葉たちを

次の世代に伝えたい

そういう思いで書かれています。

 

けっこう読みごたえがありますが

取り上げられている本のほとんどを、私が読んだことがないこともあって

少々、しんどめでした。

 

この本の後半2割

若松先生自身の話を語っておられるんだけれど

ここからがめちゃめちゃいい。

私は、先生自身のことが書かれいてる部分が好きでした。

 

こんなにたくさんの本を読んでおられる先生なのに

16歳まで3冊しか本を読んだことがなく

国語の成績もよくなかったそう。

 

そもそも、本を読む習慣もなく

家にはたくさんの本があったにもかかわらず読まなかったんだとか。

 

それが、17歳でひとり暮らしをはじめてから

孤独と向き合い、自分自身の心と向き合うようになり

そういう時間の中で本の言葉に助けられるという経験をし

そこから本を読むようになられたのでした。

 

先生にとって

本とは言葉であり、もっと言えば言霊なんですよね。

 

それによって、勇気づけられたり、生きる希望をもらえたりする。

 

だから、1冊すべてを読む必要はなく

その中の、ほんの少しの短い言葉を読むのでいいと、先生はおっしゃる。

それでも十分、生きる希望になると。

 

この本で先生の伝えたかったことが、ちょっとわかるような気がしました。

 

もしも、今すごく孤独感を感じていたり

生きる意味を見失っていたりしたら

本を手に取ってほしい

そこに、何か自分を救ってくれる言葉がある

それが生きる力になる

そういう事がおっしゃりたかったんだと思います。

 

 

私にとって、本は物語です。

言葉が点だとしたら

物語は面

 

だから、

私が本に抱いているものは

先生とは少し違います。

 

私は先生とは逆で

子供の頃から本の虫で

幼稚園の頃から本ばっかり読んでるような子供でした。

 

人見知りで、引っ込み思案で、外遊びが苦手だったので

本の世界は、自分を守ってくれる基地のようなものだったのです。

 

小学校の頃から図書室の常連で

ジブリの映画「耳をすませば」のしずく、まさにあんな感じ。

図書カードに、全部私の名前が書いてある

図書館の本を、片っ端から読んでいました。

 

本の世界に入って、その中で登場人物になりきって

喜んだり、悲しんだり、苦しんだりする

というのが私の読み方。

 

不思議の国のアリスが、ウサギの穴に落ちるみたいに

物語の世界に入って、とっぷり浸るのが好きなのです。

 

外遊びが苦手だったので、一人で本の世界に入っていることが

最高に幸せだったのです。

 

それが

ある時期、本を読むのがつらくなった時期があります。

料理研究家として仕事をし始めた頃

自分が何も知らないことに気づいて

もっと、料理の知識を入れなければ

もっと栄養のこと、もっと料理に役立つことを知らなければ

というようなことを思うようになり

日々、コンプレックスと焦りのような状況に陥りました。

 

本の読み方が、その時期変わりました。

役に立つか、立たないかを基準にして

役に立つ料理関係の本だけを読みまくるようになったのです。

 

考えてみたら、あの時はつらかったなあ。

 

あんなに大好きだった本を読む時間が

修行の様に忍耐の時間になってしまったのですから。

 

そんな本の読み方では、ちっとも楽しくない

 

結果

それからしばらく(たぶん数年)

本が読めなくなってしまいました。

(本を読みたいのに、料理と関係のない本を読む自分が許せなかったりしたのです)

 

若松先生も、本が読めなくなった時期があると書いておられましたが

私も、そうでした。

 

けれど、そこを乗り越えるきっかけも本でした。

 

どの本がきっかけだったかは、正直分からないんだけれど

料理と全く関係のない本だったことは確かです。

 

私は、本に求めるものは知識ではなく

もっと、広い、心の中の世界だということに気づいたのです。

 

若松先生曰く

言葉は種のようなものだそうです。

 

心に落ちて、時間をかけて育てていく

そんな風に、本の中の言葉を読む

 

私にとって本は

心という大地を豊かにしてくれる

肥料とか、微生物とか

そういう位置づけです。

 

だから、「言葉は種」という感じは

新鮮な響きでした。

 

そうか、そんな風に味わったこと、なかった気がする。

そんな風に、私も本を読んでみよう

まずは詩から、ですね。

 

本を読むって、いいね。

 

この本は

本の読み方が少し変わり

また、自分を支えてくる言葉に出会える予感がする一冊です。

 

たぶん、孤独や、閉塞感を感じている時こそ

言葉に出会うチャンスなんじゃないかと思います。

 

是非是非、おすすめです。

読み終わらない本

コメント

  1. ちゃび より:

    本を読むっていいですよね。
    私はたくさん読んできた方ではないですけれど、小学校高学年から中学生時代は詩集が大好きでした。
    あと、小学生で難しく感じつつもギリシャ神話に夢中になってた時期もありました。
    高校時代はハマった作家さんの文庫本を次々読みあさった時期がありました。
    就職して忙しさで読めなくなり、体調問題で退社してしばらくして落ち着いた頃には、途中で終わってしまっていた続きを読みたくなって図書館通いをした事も。
    今は全然読めていないのですが、読みたいなという気持ちがあります。
    小学生の時に読んでずっと物凄く印象に残っている童話のような本があって、無性にまた読みたくなり、先日ネットで探しまくって古本を購入しました。
    本って、幻想に浸れたり気付きを与えられたり、考えるきっかけになったり活力が湧いたり…読む本によって様々ですが、私は本を読む事は心が豊かになるように思っています。
    先生の読書日記を読んでいて、ゆっくり読書する豊かな心と時間を持ちたいなと改めて思いました。
    スマホばかり弄っていないで読書をする事で、改めて時間や心のゆとりの大切さを思い出し、豊かさを取り戻せるように思います。
    気付かせてくださりありがとうございます。

    1. 奥薗壽子 より:

      本を読むのっていいですよね。
      なんか、いろんなことを忘れて、その世界に浸れます。
      特に小説は、いろんな人生を経験できる所が気に入っています。
      面白い本があったら、ぜひ教えて下さい。

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