家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
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大好きな小川洋子さんの新刊が出たので読んでみました。
「琥珀のまたたき」（講談社）
最近、どんどん自分の世界観を確立されている小川洋子さん。
今回もまた、どっぷり、濃密な小川洋子ワールドに連れて行っていただきました。
物語はママと３人の子供たちが、パパの古い別荘に引っ越すところから始まります。
本当は４人いたのだけれど、一番下の妹が亡くなってしまったことで
ママは３人の子供をこの別荘に閉じ込め
それまでの名前を捨て、それぞれに、トパーズ、琥珀、瑪瑙という名前を付け
この別荘に監禁する。
実の母による子供の監禁。
その事実だけを見ると、
まるで「アンビリバボー」とか「世界まる見え」とか
あの手のテレビ番組で取り上げられそうなスキャンダルストーリーなんだけれど
そこが小川洋子さんのすごいところで
子供たちの方からの視点で描き出されるのです。
家の壁の外には魔犬がいて、
かまれたら死んでしまうから、外に出てはいけません。
大きな声で話してはいけません。
ママの教えを守り
ママが仕事に行って帰ってくるまで、毎日３人はその別荘の中で過ごす。
お姫様の王冠や、たてがみやしっぽが付いたままのお手製の服を着た子供たち。
最初は、そこに何の違和感もなかったのだけれど
やがて子供はめまぐるしいスピードで成長する。
子供たちをずーっと、子供のままで、
自分の思い通りに囲っておきたいママと
目まぐるしく成長していく子供たち。
いくら家の周りを壁で囲っても、子供たちの体の成長はもちろん
知りたい気持ち、好奇心、興味、知識欲、心や頭の中の感情に壁を作ることはできない。
子供たちの成長とともに、危うい均衡が崩れ始める・・。
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この物語を読んで、まず思ったことは
人は、どんな環境にあっても
（たとえは、人から見れば不幸だったり過酷だったり）
想像力や、好奇心や、興味や成長したいと思う気持ちや
そう言うものがあれば、決して不幸ではなく
いくら現実の生活の中に、様々な障害があっても
心の中に壁を作ることは、誰にもできないのだということ。
小川洋子さんが、折に触れて書かれている
アンネフランクを、私はすぐに思い浮かべたのだけれど
あの状況下にあっても
彼女の心の中は、なんと自由であったか。
そして、心の中に果てしなく広がる自由な世界を持っていれば
現実の生活が閉ざされていても、決して不幸ではなかった。
私自身、子育てをしているとき
子供の成長の早さにびっくりし
それに引き換え、自分はどうかということを日々痛感しました。
その一方で、子供は自分の時間や自由を食べて成長していくいきものでした。
子供は貪欲に、いろんなものを吸収して成長していくのに
私は、どんどん自由を奪われて、成長が止まり、
社会からも取り残され、見えない壁の中で干からびていくばかり。
子供がかわいくないわけではないけれど
私はこれで、本当に幸せと言えるのか。
母親になったばかりのころは、そんなことを考えたこともありました。
大人になって成長しない自分と、日々どん欲に成長していく子供たち
やがて、子供が自分を追い越し
立場が逆転するときがくるけれど
その時、自分の子育てに後悔しないだろうか。
ある本に、人はいくつになっても成長し続けることができるが
好奇心や興味などがなくなった時から老化が始まる
というようなことが書いてあって
そうか、自分の心や成長を止めて、自分の周りに見えない壁を作るのは
他の誰でもない、自分自身なのだと気づきました。
ならば、何か毎日ひとつ、どんな小さなことでもいいので、
昨日とは違う発見や体験をしてみよう、ドキドキしたり、わくわくするようなことをしてみようと決めました。
それは例えば、新しい料理に挑戦する、みたいなことでもいいし
もっと簡単なこと、
例えば、みそ汁にすりごまを入れる、からしを入れる、しょうがを入れる
ちょっとした変化で遊んでみるとか
サラダのドレッシングにみそを隠し味に入れてみるとか
鶏肉に、使ったことのないハーブとオリーブオイルを絡めてマリネしてみるとか
ちょっとアンテナを延ばして
やったことないことを探してみれば
以外に、あっちにもこっちにも、好奇心の種は落ちているもので
料理じゃなくても、
たとえば、スーパーまで行くのに違う道を通ってみるとか
いつもと違うパン屋さんでパンを買ってみるとか
気が付けば、自分の世界がいつの間にか果てしなく広がっていました。
そんなことを、もうかれこれ２０年くらい続けていますが
まだまだ、やったことのないこと、やってみたいことは、探せばいくらでもあるものです。
今日は、買い置きのバナナが黒くなってきたので
バナナケーキにしようと思ったのですが
この前、余った生クリームで作ったキャラメルソース（冷凍）があるのを思い出し
入れてみることにしました。
冷凍庫の中で固まっているキャラメルソースを、
包丁で切って、塊のまま生地に混ぜ込み焼いてみる。
初めての挑戦は、わくわくとドキドキ。
出来上がりを待ってコーヒーを入れて
うん、今日もなんだか楽しい一日です。
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