でいりいおくじょのBLOG

2015.10.06

読書日記 「新しい道徳」(北野武著 幻冬舎)

平成30年以降、小中学校の正式な教科となることが決定した道徳。

そんな道徳について、たけしさんが持論を展開されている興味深い本

話題の新刊をさっそく読んでみました。

そもそも道徳とは何か?
 

たけしさんいわく

社会の秩序を守るためのもの…と言えば聞こえがいいが

結局は支配者がうまいこと社会を支配するために考えたもの。
 

牧場の柵のようなもの、というたとえはとても分かりやすい。

牧場の持ち主が変われば、柵の形や場所が変わる。
 

道徳教育というのは

こうあるべきというような型が先にあって

子供たちを無理やりその柵の中に押し込めようとしているのではないか。
 

人間は、一人一人違っていて

自分とは違う人間で世の中は成り立っていて

その自分とは違う誰かのことを認め合い、大切に思うことこそが

道徳であるはずなのに

最初に道徳ありきで、行動をコントロールするというのはおかしくないか?

というのが、たけしさんの考えた方のようです。
 

話し言葉のように書かれた文章なので

とても読みやすく、わかりやすいのに

語られている内容は、かなり深く、考えさせられことがたくさんありました。
 
たけしさん自身も書いておられることなのだけれど
この本は、読んでそうなのかと、そのままうのみにするのではなく
ここに書かれたことを、自分自身がどう感じ
どんな風にこれから生きていくのかということをかんがえる
一つの、きっかけにするのが正し読み方で
 
そういう意味では、読んだ後、何を考えるかということに意味がある本なのだと思います。

**********************
 

この本を読んで、

私が感じたことは、料理の中にも道徳的なことがあるなあということでした。
 

たとえは、料理に手をかけることが愛情かということ。
 

道徳的な観点から言えば

食べる人のことを思って、手をかけて料理を作ることこそが愛情で

だから、丁寧に時間と手間をかけて料理を作るべきだということになります。
 

でも、それが料理というものの大前提になってしまったら

料理を作るのも食べるのも、結構しんどい。
 

確かに、料理を作るという行為の中に愛情は含まれているとは思いますが

手間や時間をかけることと、愛情の量は必ずしも比例しないと私は思うし

愛情を振りかざし

見るからに愛情愛情している料理って

なんか、愛情の大安売りみたいで

愛情って、そういうものじゃないでしょ、と言いたくもなる。
 

道徳も料理も

自分と誰かのかかわりの中で成立するわけだから

根底に、相手を思う気持ちは必要だけれど

「食べる人のことを思って、愛情を込めて料理しましょー」

みたいなことを口にした途端、どこか胡散臭い感じになってしまう気がするんです。
 

何日もかけて仕込んだビーフシチューより

塩昆布をのせたお茶漬けが喜ばれることだってあるわけで
 

要は、相手の気持ちにどれだけ寄り添えるか、それが大切なことであって

それを無視して、
手をかけねば、心をこめねば、あなたのために、家族のために
という思いが大きくなりすぎたとき
(もちろん、家族がそれを望んでいれば、お互いに幸せだと思うけれど)

その思いは、自己満足あるいは押しつけになるのではと思うのです。
 

例えば、今日の我が家の料理は

きのことろろ湯豆腐でした。
 
作り方は

土鍋に水と昆布を入れて火にかけ

沸騰したら塩少々で味を調えて、豆腐としめじを入れてさっと煮

最後に、たたいた長芋を入れて一煮立ち。

ねぎをたっぷり上に入れて出来上がり。
 

鰹節としょうゆとみりんで作った自家製たれと

しょうがとねぎの薬味を、各自好きに入れながら食べます。
 

調理にかかった時間は10分程度
手間もほとんどかかっていません。
 
けれど、この料理に愛情がないかというとそんなことはなく
 
ちょっと肌寒い日に、温かい料理がうれしかったり
仕事で疲れ気味の娘のおなかにもやさしかったり
しょうがやネギで免疫力がアップして、風邪予防ができたり
 
結果として、いいことがあれば
手間も時間もかけなくても、これで家族が喜んでくれれば

別に、料理は愛情なんて、堅苦しいことを言わなくても通じ合えているわけで。
 

道徳だって、料理だって
結局は

自分と自分以外の人をみえない何かでつなぎ

お互いに幸せにいられるためのもの。

自分と自分の周りの人との関係の中で

何が必要で、どこまでならしあわせで、それ以上やれば負担になるか
答えを求めるんじゃなくて
自分で考えることが大事なんじゃないかな。

道徳にも、料理にも、正しい答えなんてないんだから。


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