家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
若松先生の新刊本を読みました。
「光であることば」(若松英輔著 小学館)
人生の中で、つらい時や悲しい時
コトバによって救われることがあります。
そういうコトバをめぐる話が書かれた本です。
一言で言って
この本、
私、かなり好きです。
私、先生のコアなファンなので
先生の本はかなり読んでいると思いますが
これまで読んできた先生の本の中で
一冊選ぶとしたら、この本を選びます。
それくらい好き。
何がそんなにいいかというと
ここに書かれているコトバと先生自身がものすごく近くて
その境目がほとんどなくて
言葉を読んでいるんだけれど、先生がそこに寄り添って下さっているかのような
そんな温かさと優しさを感じる、そこがもうグッとくるんです。
今までの本とは違う、近さなんですよ。
誰の心の中にも眠れる詩人がいる
というのは、他の本でも書かれていることなんだけれど
この本を読んで、自分の中の眠れる詩人を初めて感じました。
私小学生の頃
引っ込み思案で人見知りで、一人で本ばっかり読んでる子供だった
というのはこれまでも、書いたことがありますが
実は、人と話ができない分
ノートに、いろんな言葉を書きまくっていたんですよ。
あの頃は、口で言うよりも書く方が得意だったんです。
(たぶん、今でもそう)
中学、高校、大学になっても
それは続いていて、実は詩を書くのも結構好きで
まあ、恥ずかしくなるような甘ったるいポエムを書いていたんですけれど
でも、いつの間にか書かなくなって
詩を読もうにも読めなくなって
難しくて、意味不明で、全然面白くなくて
正直、詩なんてつまらないと思ってきたし
若松先生の詩の講座も受けたけれど
さっぱり意味が分からず、
詩は、自分には合わないなあと思いました。
ところが、この本を読んでみると
なんていうか、自分の心の深いところにあるコトバの存在に気付いたというか
たぶん、これが、内なる詩人なのか
と思える瞬間がありました。
その内なる詩人が
外に向かって、何かを発したがっている感じ。
読むと書くの講座に参加して
全然思うように書けなくて
苦しくて、つらくて
なんでしんどいう事やってんだろう?って毎日のように思っていて
でも、やめたくなくて
どうしてもやめたくなくて
自分のうちになるものが
ものすごい力で、外に出たがっているのを感じることがあって
たぶん、それが私の内なる詩人のコトバなんだと気付きました。
そういうことを、この本を読みながら感じて
コトバにならない分
涙がいっぱい流れました。
読みながら、ボロボロ涙を流しました。
それからもう一つ
この本の最後の方に書かれている
何か「について」知ることよりも
何か「を」知った経験が不可欠だ
という話。
それを知識と区分するように叡智と呼ぶのだそう
叡智とはフィロソフィー
私が料理研究家になるといった時
父は私に
フィロソフィーがあれば大丈夫だと言ったんです。
実は、そのフィロソフィーの意味が、長くわからなかくて
でも、ずーっと自分の中では一番大事で特別な言葉でした。
それが
ここへきて、はじめてわかりました。
そうか
料理について知るのではなく
料理を知る経験を積んでいくこと
頭で理解するのではなく
興味や喜びをもって学び続ける事
そして、それがまるで何かに導かれるように
そうあること。
ちなみに、私が大学生になった時、父が強く言ったことは
大学にはいってまで勉強するようなことをしてはいけない
でした。
父は大学で教鞭をとっていたのにです。
いや、大学で教えていたからこそ、
私にそういったのだと気付きました。
勉強ではなく
学びが大事だと。
若松先生がこの本で書いておられることと
まったく同じことを言っていたのに驚き
今、この本で、もう一度父のコトバに出会いなおすことができました。
この本のおかげで
若松先生のおかげで、
父の言ったことを、初めてきちんと理解することができたように思います。
そういう意味でも、この本は
私にとって、特別な本になりました。
読めば、優しい気持ちになれます。
本当に、本当にいい本です。
おすすめです。
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