でいりいおくじょのBLOG

2023.10.08

映画日記「川っぺりムコリッタ」

面白そうな映画を教えてもらったので

早速見てみました。

 

「川っぺりムコリッタ」

 

台風や大雨になれば、たちまち氾濫してしまう川のそばに建つ

安普請の集合住宅「ハイツムコリッタ」

 

この映画は、このハイツムコリッタで暮らす人々を描いた作品。

さして大きなストーリ展開があるわけでもないのだけれど

見終わった後は、なんかちょっと、ホーっとなり

じわっと、温かいものがこみあげてくるような映画でした。

 

ざっくりとしたストーリーはこう。

 

塩辛工場で働く事にした山田(松山ケンイチ)が

そこに住むことになるところから物語は始まる。

 

山田はちょっと訳ありで、家族もお金も生きがいもない。

 

隣に住むのが自称ミニマリストの島田(ムロツヨシ)

向かいに住むのは、息子と二人で墓石のセールスをしている溝口

夫を亡くした大家の南

僧侶のゲンちゃん。

 

山田は、毎日塩辛工場でイカを捌き、もらってきた塩辛でご飯を食べる

島田は、空き地を耕し野菜を育て

山田の家のお風呂に入り、ご飯を食べる

溝口は、淡々と墓石のセールスをする。

 

生きるための、最低限の生活が

ただただ、淡々と繰り返される。

 

ここに住む人たちは

みんな、お金もなく、生きがいもなく、大きな希望もない

けれど、それが不幸かというとそうでもない。

 

小さな幸せを、一つ一つ大切に感じて生きていくことで

それはそれで、充分だと思っているのだ。

 

そんなある日、

 

山田のもとに役所から電話がかかってきて

父親が孤独死をしたことを告げられる。

 

遺骨を取りに来いという。

 

しかし、山田は取りに行くつもりはない。

 

山田の両親は子供の頃に離婚し

父親とは音信不通、どんな暮らしをしていたかも知らないし

葬式や、お墓や、お金のかかることはできるわけがない。

 

ところが、その話を聞いた島田が

それはだめだよって言う。

 

どんな命でも、なかったことにしてはいけない

(たぶんここがこの映画の大きなテーマの一つだと思います)

 

仕方なく、遺骨を引き取るのだけれど

葬式をするお金も、お墓を立てるお金もないので

この遺骨を、そのまま部屋に置いておくしかない。

 

困った。

どうしたものか

 

おいておくのも気持ち悪い。

 

川にそのまま流そうか

いやいや、それは犯罪だ。

 

孤独死した父は、死んで骨になった

肉体はなくなったが、生きた時間は確実にある。

 

生きていること、死ぬという事

肉体が朽ちるという事、肉体が朽ちてもなくならないもの

 

・・・・・・・。

ネタバレになるので、全部のストーリは書けませんが

根底に流れているテーマは命だと思います。

 

生きるって何なのか

死ぬってどういうことなのか

 

ご飯が美味しい

お風呂が気持ちいい

 

小さな幸せを積み重ねが

命を支えている

 

なのに

それに気づかずに日々暮らしている

 

どんな命でも、なかったことにしてはいけない

 

命がなくなっても、その人がいなかったことにならない。

 

肉体は朽ちて焼かれ

残った骨は砕かれて粉になって、野に撒かれても

その人の存在はなくならない。

 

その人が生きた時間

その人が、そこに存在したという事

そのことはなくならないし

それ自体が尊い。

 

生きている人が

その人の事を忘れないでいることで

その人は、ずーっとあり続ける。

 

肉体は朽ちる。

けれど、命は朽ちない。

 

そう思うと

 

ハイツムコリッタのそばにある大きな川は

まるで三途の川のように思えてくる

 

生きると死ぬは

川を挟んだあちらとこちら

 

誰もがみんな川っぺりにいる。

 

生きた人はこっち側

死んだ人は向こう側

けれど、三途の川なんて、しょせん川だし

魂はひょいッと飛び越えられる。

 

ムコリッタは、1日の30分の一

24時間のうちの、ほんの48分の事らしい。

 

生きている時間って

本当は、そんな短い時間なのかもね

 

だからこそ、尊くて、切ない。

 

切ないけれど、やっぱり尊い。

 

見過ごしてしまっている幸せを

大切にしたいなと思えた映画でした。

 

2023年10月7日ムコリッタ

コメント

  1. ママデューク より:

    ネタばれ注意‼️
    お忙しい中、早速「川っぺりムコリッタ」観て頂いてありがとうございます🙇‍♂️
    死生観についても考えさせられる作品だけれど、どこかほのぼのしていて、コミカルで、こんな田舎暮らしも悪くないなぁと感じさせられる作品に仕上がっていたのが、ボクはとても良かったです🎞

    又々長いですが、以下は観た時の感想です🎞
    それでは良い映画を沢山観て良い人になって下さいね😉サヨナラ・サヨナラ・サヨナラ👋足立区一のお調子者f@

    「川っぺりムコリッタ」(監督 荻上直子 120分)
    話の内容は、富山の田舎に流れて来た訳アリ男の生活
    主人公山田が、イカの塩辛工場に勤めるというのがリアルだった
    ヤギが入口にいるハイツムコリッタが良かった(ヤギの鳴き声がいいアクセントになっていた)
    川っぺりのブルーシートなどのホームレスの生活感が印象に残った(将棋指したり空き缶運んだり)
    山田が風呂上がりに牛乳を飲むというのが印象に残った(孤独死した父親も風呂上がりに牛乳を飲んでいた事が後で分かり、山田が父親との親子の絆を感じる演出も良かった)
    山田が米の炊けた匂いを嗅ぐのは、鈴木清順監督の「殺しの烙印」を思い起こさせた
    黒服着た高級墓石のセールスマン親子がコミカルだった。セールスマンの父親溝口のすき焼きふぐというご馳走を食べる妄想を話す演出とセールスを無碍に断られる撮り口がコミカルだった。又大きな屋敷でセールスしたら200万円の犬用の墓石を買ってくれてその金で家ですき焼きのご馳走を作っていたら、匂いにつられて島田と山田がすき焼きを食べに家に入り、ハイツムコリッタの管理人南親子もたまたま通りかかってすき焼きの御相伴にあずかり、すき焼きを囲んで会話が弾む「擬似一家団欒」になるのもコミカルだった
    電車が走る鉄橋2本が通っている間の、川っぺりの廃品置場のロケーションが良かった。山田が廃品置場から古い扇風機を拾ったり、溝口の小さな息子がピアニカホームレスがギターを弾きバッハの曲を演奏するのを山田が廃品に座って聴いてる撮り口演出も良かった
    父親の遺骨を便所に流そうとしたり、川に流そうとする演出、地震で骨壺が割れたら塩辛の壺に遺骨を詰め替える演出がコミカルだった
    父親のガラケーの通話履歴を見て電話をかけたら、いのちの電話につながるというのがリアルだった。時代遅れの公衆電話ボックスからいのちの電話にかけるシーンも印象的だった
    最初はご飯味噌汁塩辛工場で貰った塩辛と海苔の瓶だけの食卓だったが、塩辛工場の社長から貰った塩辛の壺が増えたり、最後には質素だけれど焼魚や野菜の漬物も加わり、美味しそうでまともな食卓になっていく演出が良かった。その食卓の変遷で山田の人生の立ち直りを暗示する演出のようにボクは感じた
    死んでいるおばあちゃんの住人と山田が会話するエピソードは味がある演出だった
    川っぺりの土手で、山田と自転車で通りがかった南が一緒にアイスキャンディーを食べるシーンが良かった
    お寺のお坊さんがチューインガム噛んでるという小ネタが良かった
    台風で川っぺりが氾濫してメチャクチャになるシーンが出てくるんだろうなとは感じてはいたが、スケールは小さかったけどボクの期待通り台風のシーン台風の被害シーンが出て来たのが良かった
    タクシーの運転手の笹野高史はハマり役だった。そのタクシー運転手の話す、花火職人だったので死んだ妻の遺骨をすり潰して花火の火薬に混ぜ、遺骨を空高く花火と一緒に打ち上げたというエピソードは味があるなぁと感じた
    その後の管理人の南さんが、死んだ亭主の遺骨を齧ってオナニーするシーン・演出は、ボクはノレなかった
    最後夕焼けの川っぺりの土手を主人公山田達葬儀の列が行進するラストシーンはシーン的に良く、坊さんのガンちゃんを筆頭に喪服の山田が父親の遺骨を撒きながら歩き子供達はピアニカなどで演奏しながら歩いているというのもとても良かった
    全般的に
    犯罪者の更正、孤独死、田舎の慎ましやかな生活という重たくて暗い題材だが、コミカルな演出を交え、こんな田舎暮らしも悪くはないなと感じさせる事に成功していたとボクは感じた
    田舎のシーンは観てるだけで楽しいし、コミカルな演出もいくつかあり、「かもめ食堂」「めがね」「トイレット」と荻上直子監督作品を観たが、この作品が1番オモロいとボクは感じた作品

    1. 奥薗壽子 より:

      いい映画でしたね~。教えて下さってありがとう。
      また、おすすめの映画があったら、是非是非教えて下さいませ。

  2. ママデューク より:

    少し前に観て良かったのは「アメリ」(監督ジャン=ピエール・ジュネ)です🎞フランス映画なのにとても分かりやすいコミカルさが楽しかったです🎞
    お忙しい中恐縮ですが、観て頂けると嬉しいです🎞
    それでは失礼致します🙇‍♂️足立区一のお調子者f@

    1. 奥薗壽子 より:

      おおおお~~~~~っ!!
      アメリ、知ってます、見たことないけど。
      近いうちに見てみますね~~。ありがとうございます!!

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