家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
読書メーターで、他の方の本のレビューを読むのが結構好きです。
自分では絶対読まないような本との出会いも楽しいし
自分とは違う感じ方や、ものの見方に触れさせてもらえるので
いろんな意味で、いい刺激をもらっています。
そんな読書メーターで、久しぶりに楊逸(ヤン・イー)さんの名前を発見し
本のタイトルがなんともダイナミックだったので、ものすごく興味をそそられ読んでみました。
「蚕食鯨呑(さんしょくげいどん)」(楊逸著 岩波書店)
楊逸さんといえば、2008年に「時が滲む朝」で芥川賞受賞
日本語を母国語としていない人の受賞は初めてということでずいぶん話題になりました。
当時、すぐに読んだはずなのですが、正直どんな話だったのかほとんど記憶に残っていません。
ただ、どこか、遠くで起こっていた出来事と思ってた文化大革命~天安門事件を
楊逸さんはリアルタイムで経験されていて
私とほぼ同じ年代に生きてきているのに、見えている世界がずいぶん違うということに相当ショックを受けたことは、鮮明に覚えています。
さて、この本は、毎日新聞の日曜クラブで連載されていた「楊逸の味わう」を
一冊にまとめたもの。
タイトルの蚕食は、蚕が桑の葉を食べるようにじわじわ食べることと、
鯨呑は、クジラが獲物を丸々飲み込むこと
そこから、じわじわ侵略して、最終的には併呑してしまうという、侵略法を表す言葉だそう。
一話読み切りで読みやすいのはいいのですが
ただ、一話がちょっと短すぎて、もう少し深いところまで書いていただきたかったなあという物足りなさが少し残ったかな。
それにしても、楊逸さんは大学の時に日本に留学生としてこられて
以来ずーっと日本暮らし。
でも、これを読むと、
住む場所が変わっても、やはり中国人であるというアイデンティティーはゆるぎない。
それを自分のことに置き換えてみると
京都で過ごした時間と、東京で過ごしている時間が
ほぼ同じくらいになりつつあるのですが
それでも自分の本質は京都にあって、東京の人になることはありません。
でも、かといって、東京の居心地が悪いかというと、決してそうではなく
むしろ暮らしやすいと思っているのですが、根っこのところでは、いつまでたってもお客さん気分なのです。
ところが、子供たちは私の感覚とは違うようで
すっかり東京になじんでいます。
出身は?と聞かれれば、何のためらいもなく東京と答える。
こんなにバリバリの関西弁をしゃべる母親に育てられた東京人。
楊逸さんのお子さんもそうですね、中国人の母親を持つ日本人。
そのお子さんがアメリカから帰ってきた時、
一番最初に食べたいと言ったのが、楊逸さんの作る中国料理ではなく、日本のお寿司だったそう。
普段家で、楊逸さんが日本のお寿司を作ることはほとんどなく
楊逸さん自身は日本のお寿司があまり好きではないのに
なぜ?
不思議ですね。
そういえば、うちの娘も、
好きなおでんの具はと聞くとちくわぶといいます。
我が家のおでんにちくわぶを入れたことなどないのに、です。
なんで?
この本では、中国の食べ物と、それにまつわる故事や、昔ながらの食習慣など書かれていますが
たぶん、祖国を離れてみると、逆にそんな祖国の食にまつわる話が懐かしく
大切にしたい気持ちになるものだと思います。
私も、京都を離れてみて初めて京都の食というものを深く知りたいと思ったし
京都に帰ったときは、少しでも京都らしいものに触れたいという思いが、ますます強くなっています。
たぶん、楊逸さんも、そんな感じでこのエッセイを書かれたのかなあと思ったりしました。
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さて、今日のお弁当です。
ポークチャップ
マッシュポテトのチーズ焼き
いんげんのごまサラダ
キュウリの甘酢漬け
卵焼き、ミニトマト
トウモロコシごはん
ポークチャップは豚肉と玉ねぎを炒め、ケチャップとウスターソースで味付けたもの
隠し味に辛子を入れています。
洋食ではありますが、ケチャップとウスターソースの味はご飯によく合います。
マッシュポテトのチーズ焼きは、昨日の夕飯のマッシュポテトを取り分けて丸めておき
小麦粉をまぶして、両面こんがり焼いてから
上にピザ用チーズをのせてとろりと溶かし、
チーズの面をカリッと焼いてみました。
トロリと柔らかいジャガイモと、かりっと香ばしいチーズが絶妙なおいしさです。
キュウリの甘酢漬けは、甘酢を厚くしたところにキュウリを入れて漬け込むだけ
ピクルス益を厚くしておいてつけると、短時間でしっかり味がしみこみます
トウモロコシごはんは、
包丁で身を削り取ったトウモロコシを昆布を入れたごはんと一緒に炊き込むだけ
味付けは、塩と酒
シンプルですが、プチプチとしたトウモロコシの食感と甘さが
絶妙なおいしさです。
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