家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
最近はデパートやコンビニでおせち料理を買う人が増えているようですね。
私は、何でもかんでも昔ながらのやり方がいいとは思っていないので
そういうのも、いいのではと思っています。
例えばコンビニのおせちって、一人分がコンパクトに入っていて、値段が手ごろで
ほんの少し、一人分だけおせちを食べたい人にはありがたいですよね。
またデパートのおせちも、普段家は作れないようなお料理で話題が盛り上がったり
買ってくることで、気楽に人を招いたりできるのなら、それもありだと。
おせちという習慣がすたれていって、お正月におせちを食べる習慣自体がなくなってしまうよりは
どんな形であっても、日本の食文化として残っていったほうがいいと思うんです。
けれど、その一方で、家庭料理研究家としては、
一品でも、
そのことによって、家庭の味を次世代に伝えることとか
その料理を作ったり食べたりすることで、新年を迎えられた喜びを新たにできるとか
手作りすることでしか得られない幸福感もあると思うから。
例えば、黒豆の甘煮。
黒豆って、たぶんお正月しか煮ないので、黒豆というだけで“正月!!”って感じがするし
豆を甘く煮て食べるって、いかにも日本的な感じがするし。
私の作り方なら、本当に簡単なので、ぜひぜひ挑戦してもらいたいです。
私の黒豆の特徴は2つ。
味付けに塩や醤油を入れないこと
黒豆を柔らかく煮て砂糖を入れるだけのシンプルな作り方
まず、味付けなんですけど
普通、塩や醤油と砂糖で甘しょっぱい味にすることが多いと思うのですが
私は、砂糖だけのシンプルな味付けで作ります。
というのも、年末年始ってただでさえ塩分取り過ぎる傾向があるので
黒豆の甘煮にまで塩や醤油を入れないほうが、安心して食べられると思うんです。
しかも、塩分が入らないことで、甘味がすっきりし、あっさり食べられるし
ヨーグルトに混ぜたり、お菓子に混ぜ込んだりして使うことも可能。
(醤油の入った黒豆をヨーグルトに入れる人もいるようですが、砂糖だけで煮た黒豆のほうが、絶対スイーツには展開しやすい)
しかも、煮汁はシロップとして最後まで無駄なく使えます。
醤油の入った煮汁って、みなさんどうしてるんだろうかと思って、聞いてみたら
そういうものだと思って飲んでると知人は言っていましたが
飲むんだったら、砂糖だけで煮たほうが、絶対おいしい。
我が家では昔から、炭酸水とレモン汁を入れてジュースにして飲んでいます。
もちろん、お湯割りにしてホットで飲んでもいいですよ。
では、煮方です。
私のやり方は最初に黒豆を水で煮て(いわゆる水煮)、そこに砂糖を入れて味を含ませるだけです。
醤油や砂糖で味付けした煮汁の中で黒豆を戻し、そのまま煮る方法があります。
これは、土井勝先生が、一般の家庭でも手軽に失敗なく作れるようにと考案されたやり方。
今や、こちらのほうが主流ですし
このやり方も、すごく良く考えられていて、優れた方法だと思うのですが
私が水だけで煮るのにはわけがあって
調味料の中で豆を煮ると
豆の肉質が糖や塩分の浸透圧によってきゅっとしまってしまうため
やわらかくなるのに時間がかかるように思うんです。
そのため、その時間を早くするためにレシピに重曹が入っているのですが
(重曹を入れると豆が早く柔らかくなる)
重曹を入れるとビタミンが壊れるといわれているし
私はできる限り余計なものを入れたくないと思っているので入れたくないわけです。
黒豆って、普通の大豆よりも柔らかく煮たほうがおいしいので
重曹を入れないで調味液で煮ると相当時間がかかる。
となると、調味液で煮るより水煮にするほうが短時間で簡単にやわらかくできる気がするんです。
でも、それだと豆に味がしみ込まないのでは?と思うかもしれません。
調味液で戻したり、調味液で煮たほうが、しっかり仲間で味がしみ込むような気がしますが
味って冷めるときに浸み込んでいくので
戻すときや煮るときに調味料が入っていなくても、調味液の中でゆっくり冷ませば十分豆の中までしむわけだから
最後に砂糖を加えも全く問題なく、味は浸み込みます。
あっ、それから、黒豆を煮るとき、なぜか昔から古釘を入れる習慣があるのですが
私は入れません。
そもそも、今時古釘なんてないですし
下手に錆びたくぎを拾ってきて入れたりすると
そのほうが、変な金属を口にすることになって危険な気がするんです。
釘の鉄分で黒豆の色が黒くきれいに仕上がるといわれているのですが
別に、くぎを入れなくても、黒豆の自然の黒さだけで十分美しく煮えるので大丈夫です。
ということで、いよいよ我が家の黒豆の煮方です。
今日の「日めくりレシピ」では圧力鍋で煮る方法を紹介しました。
圧力鍋だと加圧時間
圧力鍋で黒豆を煮るときのコツは
水加減が鍋で煮る時より少なくていいということ。
(水が蒸発しないので)
水は、黒豆の容量の
(黒豆1カップ150gに対して、水500cc)
黒豆と水を鍋に入れて火にかけ、沸騰したらいったん火を止めて
いきなり圧力をかけてしまうより、
いったんここで黒豆に浸水させてから圧力をかけたほうが
中までふっくらやわらかく煮上がります。
黒豆と煮汁を入れたら、目皿か落し蓋をのせると熱効率が良く、皮がはがれ内部に散乱するのを防げます。
土鍋なべなどの厚手の鍋で煮る場合は
水の量は豆の容量の
黒豆と水を厚手の鍋に入れて火にかけ、沸騰したら火を止めてそのまま余熱で戻します。
最低
これで黒豆に
あとはそのまま火にかけ、ふたをしてごくごく弱火で煮ます。
加熱時間は硬さの好みもあります。
固めでよければ
ごくごく柔らかくするには、やはり
(途中、煮汁が減ってきたら足してください、必ず豆が水に浸かっている状態にしないと、豆にしわが寄ります)
煮あがりの目安は
親指と薬指で挟んでつぶれるくらいの柔らかさになるまで、と昔から言われています。
あくまで、参考までに。(個人の好みですものね)
やわらかくなったら、ここに砂糖を加えます。
一気に加えると、浸透圧の関係で、豆にしわが寄ってしまうので
私も以前は
最近は、一度にバサッと入れ、火にかけて砂糖を煮溶かしておしまい。
そのまま、鍋の中でゆっくりと冷まします。(ここ大事、ゆっくり冷ますほうがいいのです)
確かに砂糖を一度に入れると、豆の水分が外に出ようとしてしわが寄るんですけど
そのまま砂糖水につけて冷ますと、再びふっくらした状態になるので大丈夫です。
このやり方は、冷ましながらまめに甘味をしみこませるので
このまま冷まして、粗熱が取れたら冷蔵庫に入れ1日くらい置いてからが出来上がりです。
調味液で煮なくても、これでしっかり中まで味がしみ込んでいるはずです。