でいりいおくじょのBLOG

2014.03.22

読書日記 「八つの小鍋」(村田喜代子著 文春文庫)

村田喜代子さんの短篇集です。

その名の通り8つの短編で構成されています。

中でも一番のおすすめは「鍋の中」
 

夏休みをおばあさんと過ごすことになった4人の孫達の話です。

おばあさんに一通の手紙が届き

ハワイのパイナップル農園で成功している弟がいることが判明。

おばあさんの代わりにおばあさんの子どもたちがハワイに行くことになり

その間、孫達がおばあさんと過ごすことになります。
 
 

その暮らしの中でおばあさんが話す、
 

おばあさんの兄弟の話がなんとも言えず不気味で
 

孫達の心に少しずつくらい影を落としいきます。
 
 
 

心のなかがちょっとザラッとするような、なんとも言えない不思議な世界観に
 

孫も読者も翻弄されていくのですが
 

途中から、おばあさんの話のつじつまが合わなくなって・・・。
 
 
 

本当にあった話も、人にい聞いた話も
 

想像の話も、記憶の中で変化していった話も
 

そういうったものが渾然一体となって、別の世界の中でフワフワと生きてるおばあさんと
 

今をリアルに生きている若い孫達。
 

その奇妙な組み合わせで出来上がる不思議な世界が、この物語の面白さです。
 
 
 

けれど、この小説の面白さはそれだけではありません。
 
 
 

おばあさんは孫達がきた日
 

大鍋やら中鍋やら中華鍋やらを使ってい戸棚から取り出して
 

張り切って料理をつくるのだけれど、それが途方もなくまずく
 
 
 

次の日はもっとひどく、更に次の日はもっと深刻になり
 

孫のたみこが一切の食事作りを担当することになるのですが
 

その料理がとても美味しそうで美味しそうで。
 
 
 

例えば
 

ナスと牛肉とこんにゃくの炊合せ
 

ニラと豚肉の炒めもの
 

鶏レバーと葱とピーマンの炊いたもの
 

さや豆と高野豆腐と鶏肉の煮物
 

マーボー豆腐にあさりのピラフ
 
 
 

あさりのピラフを食べるおばあさんの描写がまたいい。
 
 
 

右手にスプーン、左手に貝の殻をつまみあげて
 

紐で締めた茶巾みたいなひだのある口を開けてちゅうちゅうと貝の汁をすすり
 

実を吸い上げ、殻の内側にくっついたご飯のつぶを舌の先でなめて取る。
 
 
 

おばあさんの口元から発するチュウチュウという音や
 

おばあさんの口のひだひだとか
 

目の前におばあさんがいるみたいに、浮かび上がってくきて
 

もう無性に、あさりのピラフが食べたくなってきます。
 
 
 

この本を読むと
 

醤油味のホッコリする煮物がすごく作りたくなって
 

昨日は筑前煮、作りました。
 
 
 

里芋、牛蒡、人参、こんにゃく、レンコン、鶏もも肉
 

と、材料をあれこれ買ってきたら
 

全体量がすごく多くなって
 

普段使わないような大鍋を、棚の中から引っ張りだして
 

(ここ、おばあさんと一緒)
 

大量に作りました。
 
 
 

いつもはフライパンで、一回に食べきれる量だけをちまっと作るっいて
 

それが簡単でいいわ、と思っていたのですが
 

たまに、こんなふうに大量に作ってみると
 

気持ちがおおらかになって、めちゃ楽しかった。
 
 
 

ちなみにうちの筑前煮は、
 

一口大に切った鶏もも肉に、あらかじめ塩で下味をつけ
 

(下味をつけておくほうが、鶏肉がぱさつかずしっとり仕上がるし
 

また、後から煮こむ時も上手く味がまとまるんです)
 

皮目の方からこんがり焼きます。
 
 
 

鶏肉って皮をしっかり焼いて、
 

皮からじくじくと油を出し、その脂の旨味で野菜を煮ると
 

ワンランク上のコクのある仕上がりになるんです。
 
 
 

後は、その脂で野菜を炒め、
 

昆布のチョキチョキ切ったのと水と酒を入れ
 

醤油と砂糖と味醂も、全部一緒に入れて
 

ふたをして煮るだけ。
 
 
 

5分位したら火を止めて、余熱で野菜に火を通すと
 

鶏も野菜も美味しくなるんですね~。
 
 
 

30分位放ったらかしにしたら
 

再び火をつけて、煮汁の水分を飛ばし
 

調味料を全体に絡めたら
 

いい感じの甘辛味になります。
 

筑前煮は、濃い目の甘辛味が野菜にも肉にもからんでないと
 

美味しさが半減するので
 

最後に煮汁の水分を飛ばして全体に絡めるのは大事です。
 
 
 

同じ筑前煮でも
 

大鍋で大量に作ると、何だかめちゃめちゃ美味しそうに見えます。
 

なんだろう、やっぱ、こういうものって大量に作るほうがおいしいっていうけど
 

それはある意味真実ですねえ。
 
 
 

あまりにもたくさん出来すぎたので
 

娘の友人宅におすそ分け。
 

煮物って、作って楽しく、もらって嬉しく、食べてもらって幸せ、みたいな
 

いいことづくめの料理ですね。
 
 
 

煮物ってなんか手間も時間もかかって面倒くさいと思うかもしれませんが
 

本に刺激されて、煮物を作ってみる。
 

そういう料理の仕方もいいのではないでしょうか。
 
 
 

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