でいりいおくじょのBLOG

2014.08.30

読書日記 「銀二貫」(髙田郁著 幻冬舎時代小説文庫)

大阪天満の寒天問屋を巡る、人情時代小説。
 

NHKの時代劇ドラマで放送されていた時

大阪の寒天問屋というのが興味深く、

また、寒天問屋を舞台にした話というのは、今まで聞いたこともなかったので

ものすごく興味があったんだけれど、なかなかテレビを見る時間がなく

ドラマを見ないまま、原作の小説のほうを読んでみました。

作者の髙田郁さんの作品は

「みおつくし料理帖」もドラマ化されているので

前から、ものすごく読んでみたいと思いつつも、今回初めて読みました。

(ドラマも、見たいと思いつつ、見れなかった~)
 

舞台は江戸時代、大阪。

主人公の松吉は、仇討で父親を亡くすのですが、寒天問屋の主人和助に助けられ

寒天問屋の丁稚として働くことに。
 

武士の子として生まれたのに、丁稚として生きることを余儀なくされる松吉

その松吉の成長を軸に、寒天問屋を取り巻く様々な事件と人情。

ストーリーとしても、抜群に面白いのはもちろん

生きることの悲しさやつらさはあるものの、それを温かく支えあう人情。

ひっそりと寄り添うような、さりげない温かさ。

まじめに生きることは、時として損をすることがあったとしても

まじめに正直に生きることでしか、人は最終的には幸せになれないというような

当たり前のことを、改めて確信させてくれる。
 

はっきり言って、泣けました。

目がはれるほど泣けました。

いい話です。
 

さて、この小説ストーリも抜群に面白いのですが

もう一つの読みどころは、やっぱりなんといっても寒天です。
 

江戸時代に寒天問屋というものがあったということも初めて知ったし

しかも、大阪!!

まあ、大阪はその当時商売の中心地だから、

大阪にいろんなものもの問屋があったのはわかるのですが
 

なぜ寒天?

と思っていたら、なんと

京都伏見は寒天発祥の地!!!ということを初めて知りました。

そこからすそ野を広げた「寒天場」に並ぶ寒天が、この時期の京の風物詩であった、そうな。
 

なぜ、京都伏見が寒天場(寒天を作る場所)かというと

京都の丹波の天草を、伏見の水で煮て寒天を作るから。

天草と水は、バラバラではだめで、やはりここにも相性があるのだそう。
 

ちなみに、京都って盆地なので、内陸のイメージがありますが

丹波地方の先は日本海に続いているし(ほら、天橋立とか有名)

伏見の水は、おいしいお酒が造れるくらいなので、これも名水です。
 

寒天は天草を煮溶かしたものをこして

それを固めて冷やして棒状にし(これをついたらところてん)

それを夜の寒気で凍らせて、煮中の温度で溶かすというのを繰り返し

そうやって、不純物を取り除いて乾かしたものが棒寒天。
 

雪が少なく

夜の温度がぐっと下がって、昼の温度が上がる地域が寒天造りに適しています。
 

現在、寒天の産地といえば、長野県の茅野。
 

実は、私、茅野に寒天造りを見学させてもらいに行ったことがありまして

ただ、寒さを利用して凍らせたらいい、というようなことではないということもよく知っているのです。
 

気温はマイナス20度以下にもなる夜中の3時とか4時に

外に干してある寒天を、手作業で表裏ひっくり返す作業をされるんですよ。

干しっぱなしにすると、寒天がまっすぐ乾燥しないそうで

まつ毛や鼻水はもちろん、長靴も服も凍るとおっしゃってました。
 

棒寒天が曲がっていようが、煮溶かせば同じじゃないかと思うのですが

モノづくりのプロは、そういうわけにはいかないですね。
 

大変な作業です。
 

だから、小説の中で、冬の寒天場が出てくると

それが目に見えるようでした。
 

それから、糸寒天と棒寒天の話

練り羊羹を作るために、コシの強い糸寒天を何年もかかって開発したり

更に、蒸羊羹ではない練り羊羹を作るための試行錯誤など

料理という観点から読んでも、読み応え満載です。
 

ちなみに、蒸羊羹というのは、関西でいうところの丁稚羊羹というやつで

あんこに小麦粉や片栗粉を混ぜたものを竹の皮などにはさんで蒸したものです。

ねちっとした、独特の食感が特徴で

私なんかは、子供のころからよく食べたので、懐かしい味です。

練り羊羹が上等のお茶菓子としたら

蒸羊羹は、普段のおやつって感じ。

関東の人は、たぶんあまりなじみのないものなんじゃないかと思います。
 

寒天のおかげで、日持ちする練り羊羹を作ることができ

寒天は和菓子界にも、新しい革命を起こすんですね。
 

そんな寒天

今は、粉寒天も開発され

(長野の伊那にある、寒天の大手メーカーの見学にもさせてもらったことがあります)

そこで、世界中の天草が研究されていて

食感や硬さなど、どんな風にもブレンドで作れるとおっしゃっていました。
 

更に、純度の高い寒天が開発されたことで

今や寒天は、科学の実験の培養にも貢献しているし

化粧品のクリームのとろみとか、歯医者さんの歯型を取るゴムみたいのとか

食べる以外にも、いろんなところで寒天のお世話になっているのです。
 

そう思って、大阪の寒天問屋の話をよんでみると

面白さが何倍にもなること、間違いありません。
 

寒天なんて、昭和の食べ物って思ってたら大間違い

低カロリーで食物繊維豊富。健康にもいい寒天

今の時代にぴったりの食べ物です。
 

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今日の「日めくりレシピ」は週末おやつスペシャル!!

「キウイ寒天」を紹介しています。
 

キウイフルーツはビタミンC、食物繊維が豊富で低カロリー。

ダイエットにも美容にもおすすめのおやつですよ。

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