家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
NHKドラマ「みおつくし料理帖」があまりにも面白いので
とうとう、本を読み始めました。
「八朔の雪 みおつくし料理帖」(高田郁著 角川春樹事務所)
高田郁さんの小説は、今までに何冊も読んだことがあって
どれも外れがなく、本当に面白くて大好き。
みおつくし料理帖も、興味はあったのですが
シリーズ全10巻は長いし、読み始めたら他のことができなくなりそうで
手を出したらあかん、と自分に言い聞かせてきた本でした。
でも、とうとう読み始めたら、案の定、ハマルハマル。
大阪から江戸にやってきた料理人の澪が(いろいろ複雑な事情がある)
お江戸で、たくさんの人たちのやさしさに守られながら
料理人として成長していく話で
その人情話もさることながら
関西の味と、お江戸の味の間で迷いながら料理を考える澪が
かつて、京都から東京に出てきたころの自分とオーバーラップしてしまうんです。
私が東京に出てきてのは20年ほど前で
まだインターネットもそれほど普及していなかったし
食品の流通とかも、今とは全然違っていたので
関西と関東の味の違いの中で、戸惑うことはかなりあったし
自分がおいしいと思う関西風の味が、東京で受け入れられるのかも不安でいっぱいでした。
だから、澪の気持ちがとってもよくわかる。
さらに、お江戸の庶民の食べ物が、よくわかるのもこの本の魅力。
澪が、安くておいしい庶民の味として、かす汁を作るんですけど
お江戸では、酒粕って食べなくて
酒粕は、赤酢を作る原料なんですね。
赤酢というのは、江戸前寿司に使われる酢で関西にはありません。
江戸前寿司を食べに行くと、ご飯がちょっと茶色くて
うちは赤酢を使っているから、という風に自慢(?)されることがあり
なんで江戸前寿司は赤酢なんだろうと思っていたのですが
酒粕から作られる、お江戸発祥のお酢なのだそう。
関西では、かす汁として食べるのに対して、お江戸では酢の材料になる。
面白いですね。
…と、ここで、依然読んだ「菜の花の沖」(司馬遼太郎著)を思い出したんですけど
江戸時代、酒は、もっぱら関西が主な産地で
新酒の季節には、競って船でお江戸まで運ばれた様子が書かれていました。
関西から大量のお酒を購入することで
大量のお金が関西に流れてしまうので
関西が経済的に力を持つことを恐れた幕府は
江戸でも酒造りができるように奨励したのだけれど
いい酒はほとんど作れなかったという話が、書かれていました。
となると、ここから推測するに
酒造りの技術があり、おいしい酒を大量に作っていた関西には
美味しい酒粕も大量にあったはずで
酒粕がおいしいからこそ、それを使ったかす汁のような料理が生まれ
酒造りがうまくいかなかったお江戸では
そもそも酒粕の流通も少ないし、多分酒粕自体もおいしいものはなかったはずなので
それを使ってお酢を作ることを考えたんじゃないかな。
そう考えれば、すべてが理にかないます。
お江戸の人情物語を読みながら
お江戸の食文化も学ばせてもらって、楽しませてもらえるとは。
全10巻
どんどん読んでしまいそう…
コメント
先生、おはようございます。
えー‼本当にこんな涙を流して読まれているのですか?。
リアルな絵ですね。
先生は、主人公とご自分を重ね合わせて読む事ができるから、尚更本に引き込まれるのでしょうね。
勉強にもなるし、面白そうな本ですね。
読んでみようかな?。
先生、今日も1日健やかにq(^-^q)。