家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
映画を見たら、やっぱりもう一度本も読み返したくなり
今年最後の本はこれにしました。
「鉄道員(ぽっぽや)」(浅田次郎著 集英社e文庫)
この本は、「鉄道員(ぽっぽや)」を含む短編集です。
あとがきで浅田次郎さん自身も書いておられることですが
ここに含まれる8つの短編のテーマは「奇蹟」
たゆまざる努力や真摯な懊悩がもたらす「奇蹟」
生きていると、理不尽なことに出くわします。
何も悪いことなんてしていないのに
なんで、こんな目に合わなきゃならないんだろうと
悔し涙を流すこともある。
でも、まじめに一生懸命生きていたら
それを見ていてくれる人が必ずいて
最後には、きちんとうまくいく。
それを浅田次郎さんは「奇蹟」と言い
浅田次郎さん自身、それを本当に信じていておられるそう。
ここに収録された8編の短編は、そんな軌跡を描いています。
以前、この本を読んだのは、たぶん20年くらい前で
その時も、確かに感動したんだけれど
いま改めて読み返してみると
あの頃よりも、もっと心にしみました。
多分、あの頃よりもそういう奇蹟を信じるようになったんだと思う。
まじめに生きていれば
最後には、きっとうまくいく。
そうでなきゃおかしいやんって。
この8編の短編の中で、どれが好きかは意見が分かれるところですが
(本当にどれもいい話)
私は、鉄道員(ぽっぽや)と「うらぼんえ」が好きかな
ちえ子は両親が離婚し、両親がともに親権を放棄したことで一人ぼっちになり
祖父母に育てられ、やがてその祖父母もなくなって
ちえ子は帰る家もなくなってしまうんです。
そんなちえ子は苦労と努力をして薬剤師になり
お医者さんと結婚するんだけれど
その結婚した相手がひどい奴で
浮気をして子供まででできてしまうの。
優柔不断で頼りなくて、はっきりしない、サイテーな奴。
ある時、夫の田舎で盂蘭盆会があって
ちえ子も出席するんだけれど
そこで、親戚が寄ってたかって、別れさせようとしてくるの
ええーっ、夫もひどいけれど、親戚の人たちもひどい
なんでそんなひどい事するん?
もう、かわいそうで、かわいそうで。
でも、そこで奇跡が起こるわけですよ。
頑張って、一生懸命生きているちえ子を救ってくれる人がいるの。
そう来なくっちゃね。
そうですよ、そうでなきゃ、かわいそうすぎる。
でね、読んでいる時は、親戚の人たちのことをひどいって思っていたんだけれど
読み終わった後、もう一度振り返ってみたら
もしかしたら、本当にひどいのは優柔不断な夫だけで
それ以外の人は、みんなちえ子の味方だったんじゃないかと思えてきた。
そんなだらしない夫と、そのまま一緒にいるより
分かれてやり直した方が、幸せだもん。
一見ひどい人たちに思えたけれど
実は、その人たちのおかげでちえ子は自由になれた。
一生懸命頑張って生きてきたちえ子が
結果として、幸せに向かっていけたことで、心がじわっとうれしくなりました。
ああ、やっぱり、まじめに一生懸命生きていると、
わかってくれる人は必ずいるね
そう信じられて、うれしくて
心が喜びました。
今年もたくさん本を読みました。
今年最後に、こんな希望のある本で終われてよかったです。
来年もまた、たくさんのいい本に出合えますように。
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