家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
料理は日々進化して
ネットやテレビや雑誌を見れば
もう怒涛のようにレシピがあふれていて
家庭料理研究家としては、
流行っている料理や、新しい料理法や、人気の料理など
もちろん知っておく必要はあるのだけれど
そればっかりでは、いつの間にか自分の料理を見失う危険があります。
昔からずーっと作り続けられている料理というのは
やはり大事に受け継いでいかないといけないし
かといって、昔ながらの方法がベストかというと
必ずしもそうではなく
いらない手間を省いたり、素材や調理道具の変化に合わせて調理法を変えてみたり
もっと簡単に、もっとおいしくできるように
レシピを改良し続けるのも、家庭料理研究家の大事な仕事だと思っています。
そんなわけで、昔ながらの料理法も、
料理屋さんがやっている料理法も勉強して
料理を多角的に見る目を持つのも大事な勉強。
ちょっと古い料理書を読み返してみると
読むたびに新しい発見があります。
「吉兆味ばなし(一)」(湯木貞一著 暮らしの手帳版)
この本は全4巻で
今まで、折に触れて何度も読んできた本で
正直、付箋だらけだし、鉛筆で線もいっぱい引いてあります。
この本の一番の特徴は
これは料理屋の仕事
家庭では、やる必要なく
もっとシンプルに料理したほうが、家庭ではおいしくできる。
ということが、何回も繰り返し語られていること。
家庭料理というのは、食べる人の好みも健康状態も全部知っている人が
その人の顔を見ながら、ちょうどいいタイミングで作ることができる点で
料理屋は、家庭料理にかなわないと書かれています。
ついつい、プロの料理人は、プロなんだから
素人の主婦より、すべてにおいてうまいと思いがちで
お店で出てくる料理のように作ろうとしがちですが
本当は、料理屋さんの料理と家庭料理とは根本的に違っているし
そういう意味では、家庭料理とお店の料理
どっちが上で、どっちが下というように優劣をつけるべきものでもないはず、と思うのです
この本は
吉兆の料理の技や、料理の組み合わせ、献立のコツなどが
丁寧に書かれていますが
その一方で、家庭で料理を作る人に対する温かい視線があって
家族のために、日々料理を作っている人にむけて
プロのやり方をわかりやすく(決して偉そうではなく)伝授してくださる料理本なのです。
読むたびに、新しい発見があったり
以前読んだときは、全く興味がわかなかったのに
今回読んでみると、これどんな味なんだろうと、とても作りたくなったりとか
1982年出版なので、確かに古くなっている部分もありますが
読むたびに、料理のやる気を刺激されます。
今回は、この本の中で、心が動いたのがおだまき蒸しでした。
おだまきというのは、うどんの入った茶碗蒸しで
関西の人間は、結構作ると思うんですが
関東の人は、そんな料理があることも知らない人が多いかもしれません。
この本の中ではすっぽんのおだまきが紹介されていて
すっぱんだしで作ればおいしいでしょうが
やっぱりこれは、料理屋さんのおだまき
私は、普通のかつおだしで、鶏むね肉とシイタケを入れて作ってみました。
普通、茶わん蒸しって
卵1にたいして、だしが150ccくらいの割合で作ると思うんですけど
私は、おだまきの時は、もう少しゆるめで
卵1に対して、だし200ccで作ります。
中からうどんを引き上げたときに
固まった卵がゆるゆるで、結構汁だくな感じのほうがおいしい気がして。
あと私の作り方の特徴としては
冷凍うどんをチンして解凍し
アツアツのうどんを底に入れることと
だしは、計量カップにかつお節を入れて、そこに熱湯を注いでだしを取り
そこにしょうゆと塩とみりんで味をつけて
アツアツのだしを卵と混ぜてしまうこと。
一般的な茶わん蒸しの作り方では
だしは粗熱を取ったものを卵液と混ぜ
熱くない具材を使うのですが
家庭の場合、これをすぐに蒸すわけですから
卵液もうどんも熱々で使うほうが
結局、短時間でむらなく蒸し上がります。
これも、料理屋さんのやり方なら
だしはまとめて取ってあるだろうし
具材もあらかじめ準備してあるだろうから、全部冷めていて
注文が入ってから、それらを合わせるので、全部冷めたものを使うほうが
自然ですが
家庭の場合だと、わざわざ冷ましておく必要はなく
むしろ、冷まさないほうが上手に作れるとわかれば
もっと、気軽に家庭で茶わん蒸しが作れるのではないかと思ったりするのです。
ちなみに、うどんの入ったおだまき蒸しは
我が家では、お昼ご飯などに主食として食べています。
なんでうどん入れるかな~と思うかもしれませんが
卵とじうどんのような感覚で食べられて
とってもおいしいのです。
コメント