家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
久しぶり、読み終わってしまうのが寂しくなるような本に出会いました。
各界の著名人29人に、
子供のころから、どんなものをどんなふうに食べ、
今、食べるもの、食べないもの、だれとどんなふうに食べるのが好き
というような、食べることにまつわるインタビューをまとめた本。
「食べる私」(平松洋子著 文芸春秋)
「オール読物」で連載されていた「この人のいまの味」をまとめられたもの。
単に、食についてのインタビュー集だと思ったら大違い
周到な事前準備と、的確な質問と、抜群の咀嚼力で
29名の方の職だけでなく、人間の核心を浮き彫りにしていく文章力は
もう、さすが平松洋子さん!!としか言いようがありません。
印象的だったのは
子供のころの食生活が少なからず、その後の生き方に影響をしているということと
自分の生き方に一本筋が通って、きちんと生きておられる方は
そこに何か自分なりのたしかな価値観を持っておられるということ。
何を食べる、何を食べない、食にこだわる、こだわらない、そういうことすべて含めて。
ストイックに食と向き合いながら、その中でも食べる喜びが伝わってくる高橋尚子さんのインタビューもよかったし、
宇宙飛行士の山崎直子さんの、宇宙と地球、アメリカと日本、家族、子供、様々な環境の変化の中でさまざまな職を体験されたのち、今は手作りのパンやヨーグルトづくりにはまっているという話もステキだった。
どの方の話も、本当に面白かったのだけれど
自分の環境とよく似ているなあと思ったのは、大宮エリーさん。
お母さんが料理下手で
実家に帰っても食べたいものがない。
洗い物が結構たまっていて、かわいい調理道具なんかもない。
お雑煮のお餅が溶けていて、どろどろになっている。
人生において、喜劇と悲劇は隣り合わせで
自分の意識の持ち方次第で、“つらい”を“おいしい”に変えられる。
その人生哲学を持って、自らの運命を切り開いていくエリーさん。
うん、それって私の人生観、そのものですわ。
私自身、母親が料理下手で
子供のころには、食べられないものがいっぱいあって(特に母親の作ったものは)
おいしいものを作ってもらえないのなら自分で作ればいいと思って始めた料理が
思った以上に面白くて、おいしくて
小学生のころから始めた料理のおかげで、好き嫌いもなくなり
(考えてみたら、小学生の時に自分の料理で自分の好き嫌いを克服してた、私)
母親が料理下手でも、別に何にもつらくありませんでした。
料理研究家を志した時
自分の中に、おふくろの味とか、子供のころから親しんだ家庭の味がないという事実に愕然として
自分の未来に絶望した時期もあったけど
与えてもらえなかったのなら、自分が与える人になればいいのだと頭を切りかえて
せっせと家族に料理を作り続けました。
そうして、一つ一つ家族とのおいしい思い出を作っていって
でも結局は、子供のころに与えられなかったものを埋め合わせることはできず
心の中に、空虚なブラックホールが開いたままだということに気づいたとき
再び、後ろから石を投げつけられるような絶望を感じたけれど
そのどうしても埋めることのできない大きな空洞のおかげで
こんなにも家庭料理がいとおしく、
こんなにも料理が好きで
毎日、毎日飽きもせず作り続けられるのだと、最終的に気づいて
その瞬間に“つらい”が“おいしい”に
悲劇は喜劇に変わりました。
うん、よしよし、この空洞は宝物だ、ラッキーだ!!
たぶん、この本を読んだら
こんな風に自分のこれまで食べてきたことと、今ある自分のつながりに気付けると思う。
本当に面白いので、おすすめの一冊です。
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さてさて、今日のお弁当です。
玉ねぎつくねの照り焼き
人参とえのきのポン酢和え
小松菜のベーコン炒め
卵焼き、ミニトマト
いつものつくねに、ちょっと大きめに切った玉ねぎを混ぜ
水を入れて蒸し焼きにしました。
とろりと柔らかくなって甘い玉ねぎが、おいしいです。
ご飯の上にかかっているのは
自家製のかつおのふりかけです。
出し殻ではなく、かつお節を粉にして作りました。
たまに、こういうのを作ってみると、結構おいしくていいものです。
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動画で作り方を紹介しています。
良かったらチェックしてみて下さい
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