家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
台所と食卓は、家族の歴史であり
ここを中心に、いろんなことが変化していったんだという事をしみじみ思った
そんな本を読みました。
「東京の台所」
「男と女の台所」(大平一枝著 平凡社)
朝日新聞のデジタル版で連載されているもので
朝日デジタルの中でも一番の人気の記事だそうです。
この本には、職業も家族構成も違う、いろんな人(家族)の台所が出てきます。
著者は、見ず知らずの人のところに行って
台所に入らせてもらい
写真を撮って、話を聞かせてもらう。
取材した台所の数は、実に140軒超え
料理の得意不得意は関係なく
おしゃれとか、きれいとか、新しいとか、古いとかも関係なく
そこで暮らす人の想いとか、暮らし方とか、こだわりとか、そこに流れている時間とか
台所を中心にして繰り広げられる暮らしを描いていく。
そんな台所から見た様々な人生の一コマを切り取ってまとめたのが、この本です。
例えば、ある家族の話
妻は出産を機にフリーで働き始める。
フリーなので、ある程度時間の融通はきくのだけれど、そのぶん頑張りすぎてしまう。
やがて子供が2人になり、その忙しさは想像を絶するほどに。
それでも、寝る時間を削り、頑張り続ける妻。
時々、夫が子供のために夕飯を作ってくれるんだけれど
普段自分だったら子供に食べさせないような、メニューが並び
添加物とか、栄養バランスなんかが気になって、気に入らない。
けれど、子供たちはうれしそうで、おいしそうに食べる姿を見て
こういうのもありなのかもという風に思い始め
やがて、すこしずつ心が楽になっていく、というような話。
これを読んだ時、いい話だなあって思いました。
上手に、気づけて良かった。
そうして自分自身のことがよみがえりました。
確かに、私にも、こんな時があったなと。
台所は仕事をする場所でもあり、必死で子供を育てる場所でもあり
まさに戦場でした。
あの頃、本当に時間がなくて
いろんなことに追われていたから
忙しかったのは台所だけじゃないはずなのに。
思い出すのは、いつも台所で必死になっている私。
もっといろんなことを思い出してもいいはずなのに。
全てが台所を中心に動いていました。
思い出すのは、台所と食卓のシーンばっかり。
楽しかったことも、しんどかったことも、
全部の思い出は、台所につながっている気がします、
そうそう、私、子供たちが大人になった時
美味しく、楽しくご飯を食べているシーンを思い出してほしくて
ご飯は楽しく食べよう、っていつも思ってきました。
しんどくても、忙しくても、にこにこしてご飯を食べようと、それだけは本当に思ってきました。
うちの子供たちは、2人とも大人になりましたが
子供の頃の思い出が、楽しい台所のシーンだったらいいな。
考えてみたら、
食べることは一生続くわけだから
これからも、台所と食卓を中心に、暮らしは続いていく
まだまだ、いろんなことがあるんだろうなって思うと
ワクワクとドキドキ。
それもまた、楽しみ。
この本を読むと、自分の人生が台所とつながっていることを
再確認することができます。
台所から、これまでのことを振り返ってみるのも
いいものです。
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