家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
高校の時の世界史の先生がとても変わっていて
授業の初めに、必ず一人ずつ中国歴史の年号を暗唱させられるのです。
殷、周、春秋戦国、秦、前漢,新、後漢、魏蜀呉、西晋、東晋、宋、斉、梁、陳、隋、
五代、北宋、南宋、元、明、清、中華民国、中華人民共和国
一万回の法則というのがあって
どんなことでも一万回やれば、記憶が無意識のところに入り込み
意識しなくても、するするとできるようになるといわれているけれど
あの頃、あの先生に世界史を習った生徒は、
たぶん今でも、中国の歴史の年号を、暗唱できるんだろうなと思う。
でも、これが暗唱できたことで、よかったと思ったことは
唯一、漫画のキングダムを読んだときに
中国の歴史の中での、時代背景を把握できたことくらいかな。
そんなことを、なぜ突然思い出したかというと
ここのところ、開高健氏の本を続けて読んでいたら
自分の知識の浅さや
食に対する探究心の足りなさなどをつくづく思い知り
食の世界はまだまだ広く、深く
食の歴史も、食の文化も、もっともっと知りたいと思い
中国食文化の本を読んでみたからでして
「中華料理の文化史」(張競著 筑摩eブックス)
この本は、中国の年代ごとに、どんなものが食べられていたかを書かかれているのですが
ここで、かつて覚えた年代が、ばっちり役に立ったわけで
先生、ありがとーって、心の中で感謝した次第。
さて、この本なんですが
とにかく、へえーっと思うことがたくさん書いてあって
例えば、後漢(25~220年)に書かれた「礼記」という本の中に
食卓での料理の並べ方が書かれていて
この時代、なんと一人一人箱膳で食べていて
ごはんが左、汁もの右
その向こうにおかずを置くのが正しいとされていて
それって、今、私たちが日々やっている正しい食卓の配置と同じなんですよね。
つまり、その時代の中国の作法が、そのまま日本に入ってきたってこと。
後漢というと、日本の飛鳥時代よりはるかに前ですから
なんか、すごいなあと思ってしまう。
さらに、お箸のおき方とかも
お箸って、日本は横向きに置くけれど
中国では、お箸を縦に置きますよね。
お箸って、中国から伝わってきたはずなのに
なぜ日本は、本家の中国とは違うお箸のおき方をするのかと
常々不思議に思っていたんだけれど
そのなぞも、この本を読んで解けました。
つまり、日本が縦のものを横にしたのではなく
横のものを縦にしたのは中国のほうで
中国でも、少なくとも唐の時代までは横向きにおいていたそう
宋の時代以降
北方の騎馬民族が移住してきて、文化が混ざり合い
肉を食べるナイフの文化が入ってきたとき
ナイフは縦に置くのに合わせて、お箸も縦に置くようになったのだとか。
なるほど、なるほど。
おなじみの中国料理については、もっと驚くことがいっぱい書いてあって
詳しくは、ぜひ読んでみてほしいのですが
いずれにしても、中国4000年の歴史といわれているけれど
今、私たちがよく知っているおなじみの定番中華料理って
せいぜい、古くても400年くらいの歴史しかないそうで
マーボー豆腐に至っては、せいぜい100年くらい前に考えられたそう。
へえ~っです。
こんな本を読むと、無性に中華料理が食べたくなり
今日は、駒込の“炒め処寅蔵”に行きました。
街の小さな中華料理屋さんですが
きちんとした品のいい中華料理を食べさせてくれるお店です。
まずは前菜
豆腐とねぎの和え物
蒸し鶏の花椒ソース
ピータン、キュウリの和え物
メインは
餃子と黒酢酢豚とマーボー豆腐
餃子は、見た目が華やかな羽根付き餃子とは違い
見た目は地味なのですが
かりっと香ばしく焼けた皮が香ばしく
中の肉あんのうまみがじわっと口に広がり
さらに肉のうまみだけじゃない、なんとも深い香りが口の中に広がります。
ひき肉のうまみだけじゃない、このおいしさは何だろうと
それが知りたくて、また一口また一口とどんどん食べたくなるおいしさでした。
あのおいしさと香りはいったい何だろうと、帰ってきてからもずーっと気になって
もしかしたら、あれかな?と、今ちょっと思い当たることがあって
近いうちに、試してみようと、今ワクワクしているところです。
〆は蒸し鶏ラーメン
本当は、四川担々麺も食べたかったのだけれど
もうおなかいっぱいで無理でした。
でも、一回で食べきれないメニューを残しておくと
また次、食べに行きたいというきっかけになるので
その楽しみを残しておくほうがいいんですよね。
いずれも見た目は、地味な料理ですが
本当においしいものは、こんな風に見た目は寡黙で
口に入れた瞬間に饒舌になるようなものなのでしょうね。
ああ、私もそんな料理を目指したいな。
また今日も新たな刺激をたくさんもらえた一日でした。
コメント