家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
フライパンのふたには、大きく分けて3つありますね。
どんなサイズのフライパンにも使えるパカッとのせるだけのタイプと
ガラス製のピタッと閉まるのと。
残り一つは
手持ちの鍋のふたを適当にフライパンのふたとして使う場合。
結論から言うと
私的には、ピタッと閉まるガラス蓋が一番おすすめです。
フライパンにふたをするということは、
中の蒸気や熱を逃がさずに調理するためにするのだから
最優先するべき機能は、密封性だと思うからです。
この3つの中で、一番密閉性が高いのは、ガラス製のピタッと閉まるタイプ。
そうなると、残り二つ
上にパカッとのせるタイプと、適当な鍋のふたを使うのとではどちらがいいか
私の意見としては、適当な鍋のふたの方に軍配をあげます。
ただし、フライパンの口径より、小さいふた。
つまり、フライパンの上に乗せるのではなく、中に落としてふたをするという意味です。
これにも理由があります。
それを説明するために、フライパンのふたにまつわる話を少し。
そもそも、
フライパンにふたをして、素材の持っている水分だけで蒸し焼きにする、などという調理法は、日本料理には存在しませんでした。
それをメデイアを通して紹介した人は、私が知っている限りでは丸元淑生先生が最初だと思います。
1980年代です。
当時、私は単なる料理好きの素人でしたが
とにかく料理の腕を上げたくて、料理本を読み漁り、試作を繰り返し、勉強を重ねていました。
ところが
”なぜそれをするのか””なぜそうしたほうがおいしのか””なぜそんな手間なことをするのか”という疑問に対して、帰ってくる答えは
昔からそうしているから、一般的にそういうことになっているから。
それって、答えになっていない!!
私は、たくさんの疑問の中で、アップアップしていました。
その時出会ったのが丸元先生の本で
全身に電気が走るくらいの衝撃を受けたのを今でも覚えています。
最新のアメリカの栄養学や科学を基に、理論的に組み立てられた調理法
私は、夢中になりました。
先生が提唱されていた調理法のひとつに、ブロッコリーやホウレンソウを、それ自体が持っている水分だけで加熱する方法がありました。
それ自体は画期的で素晴らしい方法でしたが、一つ問題がありました。
それは、先生が高価な無水鍋を使われていたということです。
無水鍋というのは、火にかけることで、中の水蒸気がふたと本体の間に入って
ウオーターシールという現象を起こしてピタッと密閉することができ
中の熱も蒸気も逃さず調理できる鍋(フライパン)のことです。
もちろん、私も大枚をはたいて買い、同じように実践しました。
けれど、その後私は家庭料理研究家を目指すようになったとき
そこに大きな疑問を感じたのです。
高価な無水鍋を使わなければできない料理は、はたして家庭料理としてどうなのか。
普通に誰でも持っている道具で、失敗なくできなければ、家庭料理としての価値は下がるのではないか。
そこで、普通のフライパンに、手持ちの鍋のふたを合わせてやってみたのです。
逃げるであろう水蒸気の量を考慮して、少し水を加えて蓋をする。
すると、まさかの簡単にできてしまった。
うそ~!!!
でも、そんなことで満足する私ではございません。
そうなると、今度はどういう蓋がベストなのか、それを突き止めなければ、気が済まない。
実は、その当時、フライパンのふたをいうものが存在していませんでした。
今の人は、信じられないかもしれませんが
蓋がついていたのは、高価な多重層のフライパン(無水料理ができるの)タイプだけだったと思います
その後、東京で仕事をするようになった後も、東京のキッチンスタジオでさえ、フライパンのふたというものがない時代が、長くありました、
今から15年位前。
だから、当時私は、撮影の時には自分のフライパンのふたを持ち歩いていました。
それはともかく、
生来の好奇心というか、実験好きな性格ゆえ
家にある、いろんなふたで、これがいいか、あれがいいかと実験した私。
まず、フライパンの口径とちょうど同じものがあればいいけれど
そんな世の中、甘くありません。
大きいか、小さいか。
結論は小さい、です。
なぜなら、口径より大きいと、フライパンの上からかぶせることになりますが
鍋のふたって、ふちのところに段差があり
それがフライパンの取っ手があるためにうまくかぶさらないのです。
どうしても斜めになり、その隙間から蒸気も熱も逃げる。
ちなみに、現在売られている上に乗せるタイプのふたは、
そのことを考慮してか、ふちのない、まっすぐな形になっていますが
これがまた、くせもので
重さがないせいか、上に載っているだけで、ピタッと閉まっておらず
蒸気も熱も逃げまくりです。
以前、時間を計ってみたら、同じようにかぼちゃを蒸し煮した場合
ぴったり閉まるふたなら5分で柔らかくなるところが
閉まらないふただと15分くらいかかりました。
その間蒸気も逃げまくるので、焦げ付くリスクも高まります。
苦肉の策としては、加熱している間中、熱と蒸気を逃がさないように、
蓋をぎゅっと手で押さえること。
密閉させれば、まだ少しはましになります。
でも、あのふたって、使っているうちにだんだんゆがみが出てきて
上から押さえても、ピタッとフライパンにくっつかなくなってくる。
そうなると、もうお手上げです。
一方、フライパンよりも小さいふたならどうか、
小さいといっても、行平鍋のふたみたいな平らなものだと
蓋にならないので無理。
(中華鍋タイプのフライパンなら、途中で引っかかってふたになるけど)
使うのは、ふちのある鍋ふた。
これだと、フライパンの底面にくっついてドーム状になるので、
内部でうまく熱が回ります。
ちょうど、鉄板焼きのお店で使っているドーム型のふたを同じ原理です。
あんま大きなドームになっていない方が、中の空気の容量が少ないので
むしろ熱効率はいいのです。
ところが、最近は、何でもかんでもフライパンで料理する方が主流になってきて
むしろ鍋のふたのほうがないおうちのほうが多くなってきているので
私のおすすめは、フライパンのふたを大小2つもつこと。
私自身、ふだん26センチのフライパンで料理していますが
蓋は、26センチのと22センチのがあって
少量を蒸し焼きにするときは、
わざと小さい方を使って、鉄板焼き方式で蒸し焼きにします。
この方が、短時間で熱が回ります。
ということで、今日のまとめです。
フライパンのふたはどんなものがいいか。
ピタッと閉まるものがおすすめ。
もしお財布に余裕があれば、小さめのものがあると便利。
平らなものではなく、ふちのあるタイプを。
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今日の「日めくりレシピ」は「豚肉とかぼちゃの炒め蒸しサラダ」
ピタッと閉まるふたを使って、カボチャをおいしく加熱してください。
電子レンジより断然おいしくできますよ。
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