でいりいおくじょのBLOG

2014.02.24

読書日記 昆布の歴史から、昆布の使い分けまで、広く知ることのできる一冊


『昆布と日本人』(奥井隆著 日経プレミアシリーズ)
 

昆布商人の小説もいいですが

昆布について深く勉強するには

やはり実際の昆布商の方が書かれた本も読んでおかないと。
 

この本の著者は、永平寺に100年以上御昆布司として昆布を収めてきた
 

由緒正しき昆布屋さんの4代目。
 

(私もここの昆布、使っています)
 
 
 

昆布を食べる文化や習慣がどのように広がり定着していったかという昆布の歴史と
 

昆布商としての歩み
 

それから昆布種類と使い方
 

昆布が持つ、これからの可能性、など
 

幅広い角度から詳しく書かれているので
 

これを読むだけで、かなり深く昆布のことを知ることができる一冊です。
 
 
 

中でも私が、ああそうなのか~と思ったのは
 

地域によって好んで使う昆布に違いがある理由が書いてある部分。
 
 
 

江戸時代後半、海運の発達と販路拡大したことが大きく影響していたのですね。
 
 
 

そもそも北海道からの荷物を船で運ぶルートは
 

太平洋側から行く東回りと日本海側からいく西回りがあるのですが
 

太平洋側を通るコースは波もあらく海難事故が多かったので
 

日本海側を回る西回りで大阪・京都に送られることが多かったんですね。
 

その時に栄えたのが福井の敦賀港。
 
 
 

最初はここで荷をおろし、山を超えて琵琶湖を船で渡り、更に陸路で大阪に運んでいました。
 

その頃商業の中心は大阪でしたから。
 

で、濡れたままの昆布では、この時運ぶのが大変なので
 

福井では昆布を乾燥させたり加工する技術が発達したそう。
 

乾かしたほうが、持ち運びが楽だったのです。
 
 
 

そのうち、下関から瀬戸内を回って大阪に運ぶ海路が開拓されて
 

北陸の港は、途中で荷を下ろす港としての役割を終えるのだけれど
 

昆布を加工したり食べる文化は残っていくというわけです。
 
 
 

今日本の中で、一世帯の昆布消費量と金額が最も多いのは富山。
 

その背景にも、やはりこの北前船の寄港地だったということが大きく影響しています。
 
 
 

富山は北海道開拓地代、多くの入植者が知床半島に移住し
 

親戚縁者に知床でとれる羅臼昆布を送ったつながりもあり
 

昆布文化が大きく花ひらいたのだそう。
 

そしてそのつながりから
 

知床半島でとれる羅臼昆布は、富山で最も多く消費されている昆布なのだそうです。
 
 
 

その富山の昆布は沖縄にも影響します。
 

薩摩藩は財政を立て直すために、琉球を通して清国と密貿易をするのですが
 

清は、当時日本の昆布を欲しがったそうなんですね。
 

というのも、海のない中国内陸部では、ヨードなどのミネラル分が不足して
 

体調をくずす人が多かったため
 

昆布は薬としても、重宝されたそうなのです。
 
 
 

そこで、薩摩藩は富山の薬売りに、藩内で薬を売る許可を与える代わりに
 

昆布を持ってこさせ
 

それを琉球経由で手に入れた中国の漢方の薬種と交換し
 

膨大な富を得たのだとか。
 
 
 

その結果
 

薩摩藩と清国の間にある琉球(沖縄)では、昆布と豚肉を使った料理が発達したんですね。
 

だから、沖縄で今消費されている昆布の主流は
 

だし昆布ではなく、長昆布という、いわゆる早煮昆布です。
 

このへんも歴史を紐解いてみると、すごく面白いですね。
 
 
 

で、東京の日高昆布の話です。
 
 
 

京都では懐石料理や京料理に使うために
 

だしが濁らず透明でクセのない出し汁がとれる利尻昆布が好まれ
 

大阪ではとろりとおいしい塩昆布を作るのに真昆布が好まれました。
 
 
 

その結果、北海道から運ばれてきた昆布の上質なものは西日本でどんどん買い取られ
 

量が多くて売れ残った日高昆布が、最後に江戸まで運ばれることになりました。
 

その結果、江戸で消費される昆布は、日高昆布が多くなったということのようです。
 
 
 

著者の奥井氏も書いておられますが
 

30年前の東京ではほとんど日高昆布しか売っていなかったそうで
 

たしかに、私が東京に来た時も
 

日高昆布ばかりがたくさん売られていて
 

年末に昆布が大量に売られる時期でも、日高昆布ばかりが目につき
 

東京人は日高信仰みたいなのがあるのかと思っていました。
 
 
 

この本を読んで、やっとその謎が解けて、スッキリした感じです。
 
 
 

ちなみに、私が普段使っているのは羅臼昆布。
 

理由は
 

まず、1×10センチの短冊状に切って
 

それをさらに細く切って使うのが、私のやり方なのですが
 

羅臼昆布は、平べったくて、乾いた状態でも柔らかいし
 

少量でも濃い旨味が出るし、
 

加熱すると短時間でとても柔らかくなります。
 

私は、昆布を引き上げずそのまま具として全部食べてしまうので
 

そういう意味でも羅臼昆布が一番使いやすく、食べやすいのです。
 
 
 

京都人の好きな利尻昆布も大好きなのですが
 

利尻昆布は、羅臼に比べて硬くて切りにくいのです。
 
 
 

日高昆布は
 

あまりだしが出ないのと
 

昆布がぺったんこになって無くて、うねうねしているので
 

キッチンハサミで細く切りにくいのです。
 
 
 

でも、こんな風に書くと、すご~くこだわっているようにみえるかもしれませんが
 

実はそうではなくて
 

こだわりたい人はこだわったらいいし、
 

こだわりのないのもそれはそれでいいと思っています。
 

別にこだわらなくても
 

昆布はとにかく使うことが大事で
 

昆布を使いさせすれば確実に料理が美味しくなると私は思っていて
 

まずはお徳用昆布でも何でも使ってみて下さい、と私は言いたいです。
 
 
 

まずは、手に入りやすい昆布を使ってみて
 

使っているうちに、こだわりが生まれてくれば、いいんじゃないですかね。
 
 
 

地球上にある昆布の種類の半分が日本の近海に自生しており
 

利尻昆布、真昆布、羅臼昆布、日高昆布、長昆布などは
 

地球上で、北海道近辺にしかないのだそうです。
 
 
 

その昆布を加工、保存する技術を工夫し
 

出しという第5の旨味に早くから気付き、出し文化を定着させたり
 

浜によって微妙に違う昆布を使い分けてしまう日本人の感覚というのは
 

本当にすごいとしか言い様がありません!!
 
 
 

最後に
 

昆布というのは、うま味調味料の出現で
 

いっときは『消え行く業界』とまで言われたこともあったようですが
 

最近は、世界中のシェフたちが日本のだしに注目し
 

昆布もヨーロッパに輸出される時代になってきたそうです。
 
 
 

日本料理や割烹など、プロの料理人の人達だけでなく
 

やっぱり、家庭料理でも
 

というか、家庭の料理の中にこそ
 

出し文化というものを大切に守っていかなければと
 

あらためて思ったのでした。
 
 
 

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