でいりいおくじょのBLOG

2021.03.07

読書日記「八月の銀の雪」

以前にも書いたんだけれど

今、時代が大きく変化している気がしています。

 

お笑いが第7世代から第8世代に代わるみたいに

本も、音楽も、料理も

今、新しい波が来ていますね。

 

その波に、乗れないまでも

新しい波を感じたり、面白がったりしたいと思っています。

 

そんなわけで

とりあえず、本の世界で、

新風を感じてみようと思って

 

本屋大賞の候補作を読破してみようかと思っています。

 

「推し燃ゆ」

「自転しながら公転する」

の2冊を読んだので

 

3冊目です。

 

「八月の銀の雪」(伊予原新著  新潮社)

 

5編の短編からなる本です。

それぞれ、専門的な科学の話が出てきます。

 

本当にへえ~っというような専門的な話なので

今まで読んだことがないようなタイプの小説だなあと思っていたら

作者の伊予原新さんは、東京大学大学院で地球惑星物理学を専攻されたそう。

なるほどね~。

 

といっても、メインのストーリーは

あくまで人間ドラマ。

 

それぞれの物語の主人公は、いずれも

ほんの少し人生がうまくいっていない人なんですが

そこに、科学の知見が入ることで

ふっと、心がかるくなったり

見る角度を変えることで、違う考え方ができるようになったり

というような話。

 

私は、2つ目のクジラの話と

3つ目の、ハトの話が好きかな

 

特に、ハトの話は良かったです。

 

大きなタワーマンションの向かいに、古いアパートがあって

そのアパートを立て替えたい業者は

そのアパートの住人を、どうにか立ち退かせたい。

 

住人の立ち退き交渉を任された男性と

そこに住む老婆の話で

 

その老婆のところに、ある時からハトが飛んでくるようになるんです。

どうやら、そのハトは伝書鳩らしく

その鳩の素性を探していくうちに、いろんなことがわかるという話なんです

 

なんで、ハトは、帰るべき方向を間違わずに帰れるんだろう

という、男性のセリフが深いんです。

 

ハトは、頭の中に磁石のようなものを持っていて

帰るべき方向をそれで図っているために、方向を間違わないらしいのですが

帰るべき方向を間違っていなくても、帰れなくなってしまうハトがいる。

 

その一方で、

人間は、進むべき方向を見失うし、迷う、

 

ハトと人間。

 

でも、まあ、最後には、迷いながらしか進めないのが人間なんだし

それでも、迷いながらでも、前に進み続ければ

最終的には、どこかに行きつけるわけで

そこが、もともとの変えるべき場所とは違っていても

新たに変えるべき場所になれば、いいではないか。

そんな風に思える話でした。

 

ハトよりも、知能が進んだ人間が迷う

そこにこそ、進化の意味があるのかな。

 

他の4編も、それぞれに、へえーっと思いながら

最後は、じわっと来るような話です。

 

お勉強もできて、感動もできる

なんか、新しい小説でした。

 

2021年3月6日本

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