でいりいおくじょのBLOG

2012.05.02

ジャクソン・ポロック展そして「アキレスと亀」

アメリカを代表する抽象画家
ジャクソン・ポロック展に行って来ました。
抽象画と言うと
なんだか難しくて訳の分からない絵
というイメージがあって
これまでは、敢えて見たいとも思わなかったし
同じ画家の方が具象から抽象に方向転換された途端
なんとなく、気持ちが離れていくような経験も
今まで何回もしてきました。
 
私は正直それほど絵画や芸術に詳しいわけではない
本当にド素人ですが
その私から見ると
抽象画というのは
書いている方の思いやエネルギーが強すぎて
その前に立つと
絵を見るより、もうその気配でたじろいでしまうというか
 
料理で例えるなら
作り手の思いのほうが食材よりもうんと強くて
料理人のドヤ顔が過剰に見えすぎて
食べる前からお腹いっぱいになってしまうような料理
そんなイメージでした。
 
でも、最近は
抽象とか具象とか、
そういう線引きをすること自体、間違っているような気がしてきて
 
つまり
小説なら
歴史小説でも恋愛小説でも娯楽小説でも推理小説でも
そのその世界に誘ってくれるものなら
全て楽しめるしく
クラシックでもポップスでも演歌でも
心地いいものは心地いいわけだし
もちろん料理だって
煮ただけのこんにゃくでもタイのお刺身でも
おいしいものは美味しく、
つまり、垣根も上も下もないんじゃないかと思い始めたわけでして
 
最近の私は随分許容範囲が広くなってきているのです。
 
そんなわけで
ジャクソン・ポロックです。
 
20世紀前半
世界の美術の中心がヨーロッパだった時代
アメリカは世界の中で力をつけつつありましたが
まだまだ世界恐慌などもあり
経済的には不安定な時代。
 
その時代に
抽象画で一躍注目を浴びたのが
アメリカ人、ジャクソン・ポロック。
 
床にキャンバスをおいて
流動性の絵の具を流し込んだり、撒き散らしたりする
「ポーリング」という手法で描かれた絵です。
 
流動的な線と色の使い方
思わず引き揉まれていくような世界観。
 
でも、絵を見ながら
ずーっと私の頭の中に浮かんでいたのは
 
「アキレスと亀」
という北野武作品の映画。
 
凡庸な芸術家とそれを支える妻を描いた作品ですが
 
その中でたけしさん演じる芸術家の男性が
絵の具を投げつけたり、物を飛ばしたりして
作品と作っていくシーンがあって
 
不謹慎かもしれないけれど
そのシーンとポーリングが絵を書いているシーンが
何故か頭の中でぐちゃぐちゃと混ざり合ってきて
 
ポーリングの回顧展なのに
何故か見終わった後には
たけしさんの凄さのほうが心に残っていたという
変な感覚に陥りました。
 
芸術って何なのか
そっと心に入り込む、
気持ちよさや優しさやいとおしさ?
弱さや切なさを超えた強さ?
 
私には、「アキレスと亀」の方が
多くのことを語りかけてくれているようなきたしたのでした。
 

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