家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
減塩本が、いよいよ大詰めに入って来ました。
この本も、結構長い道のりでした。
ラクして短時間で本を作るのは
やろうと思えばできないこともないのだけれど
そういうやり方が、どうしても好きになれません。
今回の本は減塩がテーマで
減塩というと
塩分を減らすことだけに目が向きがちですが
本当に大切なのは
どうやって減塩の意識を持ち続けられるのか、ということだと思うのです。
アイデア料理なら
一回作って美味しい、でもいいと思うんです。
でも減塩の場合は
これくらい薄味でも大丈夫
って、一回想っただけでは不十分で
繰り返し繰り返し、その味で食べ続けることができて
しかも、それが自分にとって普通の味になっていくこと
そういうレシピである必要があると私は思うんです。
つまり
普遍的なやり方として
いかに食生活に浸透していくか
それが、大事なテーマ。
そのために
まずは自分自身を減塩生活に追いやって、どっぷり浸かってみる。
もちろん、家族も巻き込みました。
減塩なんて、全く興味のない家族は
突然薄味になったことで戸惑いましたが
たまに薄味になるくらいなら、我慢できるんです。
これ、ちょっと味が薄いんじゃない?
って。
でも、それが来る日も来る日も続くと
なんでこんな味薄いの?って文句をいいだし
その内、口数が少なくなる。
これだな、と思いました。
減塩が続かない理由は、嫌になるんです。
薄味に慣れろといっても
別に減塩に何の興味もなく必要にも迫られていない人間は
そうそう、慣れるもんじゃない。
病院とかで強制的に3食全部薄味になるならまだしも
減塩に興味もなければ積極的でもない家族は
私の作ったもの以外にも口にするわけで
ますます、家のごはんがまずくなったと思うだけ。
そうなると、私も心が弱くなって
また塩分を減らさない料理に戻り、
ああやっぱりコレのほうが美味しいなあ、と思ったりする。
別に減塩する必要なんてないんじゃないか
美味しく食べられたらいいじゃないかと、大きく心は揺れる。
けれど、やっぱり
元気で暮らすこと、やりたい事をやり続けること
家族に迷惑をかけずに生きること
医療が進んで、昔よりみんな長く生きられるようになって
あちこち具合が悪くなっても生きていける時代になって
そいいう事を考えれば
やっぱり、塩分を減らすことで少しでも元気に暮らせるのだとしたら
まだ元気なうちに、自分の生活を見直すことができるきっかけがあるとしたら
それは、家庭料理研究家として、一人の主婦として
取り組むべきテーマ。
そう思って、家族を巻き込んでの減塩生活を半年くらい続けて
減塩料理をつくること、食べる事への不満と疲れが最高潮に達し始めて
その時
ああ、これでやっと減塩料理を考えるスタート地点に立ったと
私、思ったんです。
この不満と疲れと減塩なんてやりたくないんだという嫌悪感を知らなければ
何も始まらない。
塩分を減らすだけではない減塩料理の取り組みです。
味付けを薄くしないで減塩するために
頭をつかう。
いろんなことを考え
いろんなことを試し
定番の家庭料理だけに料理を絞り
美味しく減塩する方法を
一つ一つ探って行きました。
それまでの不満と疲れと嫌悪感を常に思い浮かべて
そういう気持ちが頭をもたげないやり方を
探りました。
だからこそ
それを自分の言葉で全て書きました。
普通の本は、文章の殆どをライターさんが書いておられるのだと思いますが
私の場合は、自分のレシピに対すると思いは
自分の言葉でなければ伝わらないと思っているので
全て自分で書くというのが、これまでずーっと続けてきたやり方なのです。
時間とエネルギーはかかりますが
レシピに込めた思いを伝えるには
そんな愚直なやり方しか、私には思い浮かばないのです。
そうやって、コツコツ書いてきた仕事も
ようやく、終わりが見えてきました。
効率とか生産性とかを全く無視した遠回りばかりしている自分のやり方に
時々自分でも呆れてしまいますが
そういう本の作り方をしている料理研究家が一人くらいいてもいいじゃないかと
自分では納得しているのです。
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