家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
下処理によって、魚にどれだけ塩分が入るのか
この塩分量にこだわっているのには訳がありまして
栄養士さんの塩分計算によると
サンマを2.5%の塩水に5分つけただけで1.25gの塩分が入るとおっしゃる。
サンマは元々0.3%の塩分を持っているので
そうなるとサンマ100gの塩分量は1.55g
鯵の干物1尾に含まれる塩分量が1.4gですから
サンマを塩水に5分つけたらアジの開きよりもしょっぱくなるということになるわけです。
実際、何度やってもサンマを5分でこれほどしょっぱくするのは不可能。
けれど、それを指摘しても
データをもとに計算するとこうなるとおっしゃる。
加えて、どれくらいの塩分が入るのかというデータはこちらに無いので
実際にはありえないといっても、それを証明することができないのです。
このままでは
試作を重ねて作り上げた減塩料理が、計算上は高塩分の料理になってしまう。
実際、そうなるのなら、自分のやり方が悪かったのだと反省しますが
どう考えても自分は間違っていない自信がある以上
なんとしても自分のレシピを守らなければなりません。
そこで、女子栄養大学に測定をお願いしたところ
やってくださるということで、感謝感激したのですが
間が悪いというか、今丁度年度末で忙しく
やっていただくのを待っていては、発売に間に合わない事が判明。
もう、こなったら自分で測定するしか無い!!
ということで
塩分測定器買いました!!12600円也!!
3万~10万くらい出せば
かなりの精度のものが買えたのですが
ちょっと買う勇気がなく
精密度と値段で、このあたりがわたし的には限界でした。
測定方法は
サンマ1尾、内臓と頭をとって100gにし
その身を包丁で細かく叩いたあとペースト状にし
ペースト状では測定できないため
水大さじ2を加えてよく混ぜて計ります。
この方法で測定した結果は塩分量0.3%
これは食品成分表の数字と一致しているので
これ以降の下処理したサンマの測定にもこの方法を使うことにしました。
<実験1>
サンマを筒切りにして塩水に5分つけ、キッチンペーパーで水分を拭く
その結果2.5%の塩水に5分つけた場合
サンマに入る塩分量は0.1g
残った塩水の塩分濃度が2.4%になっていたので
塩水の塩がサンマに移ったと考えていいと思います。
3%の塩水で5分つけた場合は
0.1~0.2gの間くらいになりました。
測定誤差があるといけないので
この測定をそれぞれ4回ずつやりましたが
いずれも殆ど差は見られませんでした。
このことにより
2.5~3%の塩水に5分つけただけで、
さんまが鯵の干物より濃い塩分になるという可能性は完全に否定できたといえます。
ちなみに2.5%塩分というのは水1カップに粗塩小さじ1を溶かしたもの。
3%塩分というのは1カップの水に精製塩小さじ1を溶かしたものです。
<実験2>
イワシを手開きにして2.5%の塩水につけたあと、ペーパーで水気を拭く。
(筒切りにするよりも身が薄いため、塩分が浸透しやすくなります)
これも各4回ずつ測定
2.5%の塩水に5分つけた場合
平均して、100gあたり0.4g入るという結果になりました。
2.5%の塩水に1分浸けて引上た場合
平均して、100gあたり0.2g入るという結果になりました。
身が薄い魚の場合、
浸ける時間によって浸透する塩分量に差がでるということがわかりました。
<実験3>
直接塩をふる。
サンマ1尾(150g)頭も内蔵もついた状態で塩1gを、
しっかり表面に馴染むまで手ですりこみ10分置き
出てきた水分をペーパーで拭きとって測定。
4回やった結果
下処理によってプラスされた塩分量は100gあたり0.5gとなりました。
これはほぼデータ通りといえます。
ただし、
鮭の切り身100gに、塩1gをふって、指でなじませて10分おいた場合
サンマと違って、10分後に塩が完全に溶けきらないため
ペーパーでの拭きとり加減でかなりの測定誤差が出てしまい
100gあたり0.2~0.6gとなりました。
<実験4>
塩1gと酒大さじ1で溶いたものを全体にからめ
出てきた水分をペーパーで拭き取る。
(この方法も今度の減塩本で紹介しています)
さんま丸ごと(150g)と、鮭の切り身(100g)、
それぞれでやってみましたが
どちらも、浸透した塩分は0.2gとなりました。
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さて、これだけのことをやるのにどっぷり2日かかりましたが
家庭の台所でやったこの実験結果が
生きるのか、生きないのか
現時点ではわかりません。
でも、今自分のできる精一杯のことを
やったということだけは、間違いないと思っています。
→続く
コメント
サンマやサーモンは脂が多いので塩がはいりにくいだけでは?
魚の脂の量によって。塩の入り方が違うというのは、確かにそうかもしれません。
けれど、この時、私が違うと思ったのは
この時の栄養士さんの塩分計算法なのです。
塩水に使用した塩の1/2量を、魚の塩分量として計上するというのが、栄養士さんの基準でした。
魚の種類とか、そういう事ではないのです。
塩水に浸けた場合の掲載方法は、こういう風に決まっているという風なことを言われたと思います。
塩分濃度ではなく、塩水に使った塩の1/2量が、その塩水に5分浸けただけでしみこむのか?
そこに魚の種類も量も考慮されていません。
更に、この計算方法で行くと
水1カップに対して塩小さじ1を入れた塩水に5分浸けた場合と
水1リットルに30gの塩を入れた塩水に5分浸けた場合と
どちらも、約3%濃度塩分の海水なのに
計上される塩分は
前者2.5gにたいして後者15gとなります。
1㍑に30gの塩を溶かしが塩水に魚を5分つけて、それを食べるだけで15gの塩が口に入るということが実際にあるでしょうか?
そのことを何度言ってもご理解いただけず、困り果てました。
そういう風に算出するきまりになっている、という事なのだそうです。
本当は、こういう実験をして、それを塩分として計上することに対して、正直迷いはありましたが
本を出版できなくなるかどうかというギリギリのところで、
こうするしか、レシピを守る手段がなかったのです。
測定記録のない調理法で料理をした場合の塩分量を表示するにはどうすればいいのか
その時は、そうするしかなかったことをご理解いただければ幸いです。
大変参考になりました。私は脳梗塞を発症しまだ通院中です 医師からは血圧下げるために減塩生活を送るよう指導されています。また私は釣り好きなので、魚が大量に釣れる場合があります、その時は干物にするのですが なるべく減塩にしたいので塩分表とかを使って計算しています。そのデータがあやふやでは困ります。奥薗先生みたいに自分で実験できる人は良いですが 私には無理です。病院では希望すると栄養士さんから、減塩レシピ等の指導を受けることができます。その栄養士さんのデータがそれでは信頼が薄くなります。奥薗先生正確な塩分表が出来るよう頑張って下さい。私も1日6gを目標に毎日生活しています。 先生にエール送りたいと思います 奥薗先生ガンバレー。
ありがとうございます。
減塩本を書いたとき、一番気になったのは、減塩することで、食事が楽しくなくなったり、食欲が落ちたりする心配でした。
減塩は大事ですが、やっぱりおいしく食べるってことも、同じくらい大事ですよね。
そういう意味では、薄味になれるってことも大事ですが、うまく自分の舌をだまして、ゲームみたいな感覚で
楽しみながら、減塩ができて
食べる楽しみもあって、楽しく暮らせる。そういうのが理想ですね。
元気で楽しく暮らしながら、一日6g、ファイトファイト、何かお役に立てればうれしいです。