家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
先日,DVDで「紙の月」を見たのだけれど
原作とは違う、一つの映画作品になっているような気がして
きちんと原作を読んでみたくなり、読みました。
「紙の月」(角田光代著 ハルキ文庫)
やっぱり、本を先に読みべきだったというのが正直な感想。
梅澤梨花が、なぜ、夫を裏切って、若い男性と関係を持ったのか
なぜ、銀行のお金を横領してまで、その男性に貢いだのか
梅澤梨花という女性が、少しずつお金に翻弄され,狂っていく怖さ
それが、本当にじわじわ伝わってきます。
お金というものの不思議
お金がなければ、お金がないことばかりが気になり
たくさんあっても、たくさんあることがすぐに当たり前になって
もっともっとほしくなる。
贅沢をすれば、満ち足りるのは一瞬。
一万円を贅沢だと思ったはずなのに
あっという間に1万円は当たり前になり、
贅沢さも、満足感も、あっというまにふくれあがる。
バブルですねえ。
この物語の舞台になっている、1990年代後半。
その実体のない豊かさを、紙の月とネーミングしたセンスはさすがです。
美しい月を手に入れたと思った瞬間、それが偽物の紙でできた月だったという感じは
秀逸ですねえ。
それにしても
その実体のない豊かさを手に入れるために
人をだまし、横領してまで、むさぼる梨花と
倹約倹約と、厳格なまでにストックに暮らしてく木綿子と
かつての贅沢な生活が忘れられず、
生活レベルが落とせない和貴の妻、牧子。
高価なものを買い与えることで娘の愛情をつなぎとめられると思っている亜紀。
一見、違っているようには見えているけれど
結局は、お金に翻弄され、自分を見失っているという点では同じですねえ。
それから、もう一つ、怖いなあと思ったのは
お金によって、優越感を持ち
人を上に見たり、下に見たりしてしまうということ
お金によって、精神的に人を支配しているような気になるということ
誰かに何かをしてあげるのに
最初は、見返りなど求めていなかったはずが
いつの間にか、
これだけしてあげたのに、
こんなにしてあげたのに
いったいどれだけしてあげたと思っているの
という風に、梨花が考えるようになるシーンがあるけれど
これもまた、怖いし、醜いですねえ。
読みながら、心がざわざわしながらも
いろんなことを考えさせてくれる良い小説でした。
一読の価値あり。
さすが角田光代さん、すごい。
コメント
先生、おはようございます。
原作と実写版に違和感を感じることはあらりめすよね。
背伸びをしながら月を掴もうとする先生の絵から、先生が言いたいことがよく伝わってくる気がします。
日々の当たり前の暮らし、感じる幸せは沢山ありますね。
先生、今日も1日健やかにq(^-^q)。