でいりいおくじょのBLOG

2023.02.27

読書日記「友情」

武者小路実篤の詩画集を見ていたら

昔読んだ本をもう一度読み直してみたくなって読んでみました。

 

「友情」(武者小路実篤著 岩波文庫)

 

たまたま美容院で読んだ雑誌で

今読み返すべき本の特集をやっていて

そこで偶然目にしたのがこれ。

 

そうそう、武者小路実篤は十代の終わりにハマったのよね

 

そう思うとなんだか無性に読み返してみたくなって

読み始めたら、面白くて一気読みです。

 

ストーリーはこう

 

主人公の野島は売れない脚本家。

 

ある時友人の仲田の妹、杉子にひとめぼれ

 

杉子に会いたくて、仲田の家に行きたいんだけれど

仲田には、その気持ちを悟られたくないし

けれど、杉子を一目見たいし

 

で、偶然杉子を見かけたり、ちょっとあいさつなどされようものなら

もう、天にも昇る感じで上機嫌になる。

 

その気持ちを、誰かに聞いてもらいたくて

相談したのが大宮。

 

上編は、

恋する野島が、杉子の一挙手一投足にふりまわされ一喜一憂し

それをひたすら大宮に話して、大宮だけが野島のことを理解し

大宮は、杉子と野島がうまくいくように仕向ける

 

ところが、途中から雲行きが怪しくなる。

 

杉子って、もしかして大宮のことが好きなのでは?

って、なる。

 

で、大宮もこれはまずいって思って、

フランスに留学してしまうんですよ。

 

野島も、杉子を大宮に取られるんじゃないかと内心びくびくしていたところがあるので

大宮がフランスに行って一安心した野島は

意を決して杉子に求婚!!

 

そして、あっけなく撃沈!!!!

 

ボロボロになった野島、気の毒だとは思う。

思うけれど、

でもねえ、野島では無理だろうって思いましたよ、私は。

 

だって、ちょっと根暗で、社交的でなくて

運動もできなくて、なんか魅力がない。

野島には悪いけれど、結婚はしないな、って思った。

ごめん、野島。

 

ここまでが上編。

 

ところが、ところが

下編で、物語は急展開!!

この小説の真価は下編からといっても過言ではありません。

 

やっぱり杉子は大宮のことが好きで

フランスにいる大宮に手紙を出して、

めちゃめちゃアタックするわけ。

 

えええええええ~~~~~杉子ってこうキャラやったん?

 

いやあ、すごいです。

 

大宮って見た目もかっこよくて

売れっ子作家で

お金持ちなんですよね。

 

どうやら、その辺のところを全部計算しているようなんですよ、杉子。

めちゃ打算的!ぎゃ~~~~~~~~~~~っ。

 

上編は、野島の目を通して見えている杉子を描いているので

めちゃステキで、かわいい女性に書かれているんだけれど

 

下編は、杉子本人が書いた手紙を通して

杉子の人間像があぶり出されるので

下編の杉子が本当の杉子なんですよ。

 

そう思うと、ますますぎゃ~~~~~~~~です。

 

自分がきれいでモテることを知っていて

そのうえで、一番いい条件の人を選ぶようなやつ

ぎゃ~~~~~~~~、めちゃ嫌な女やん。

 

上編を読み終わった時は

野島、しょうがないわって思ったけれど

 

下編を読み終わってみると

杉子と結婚しなくてよかったよ、っておもった

 

逆にフランスで結婚することになる大宮が

めちゃ気の毒に思えた

(物語は、フランスについた杉子を大宮が迎えに行くところで終わる

続編があったら、大宮の地獄の日々が書かれていたのかも)

 

さらに言うと、

野島は杉子と結婚できなかったことで

必死で勉強をして、いい作品を書き始めている

たぶん、ここから、どんどん活躍することになるんじゃないかと思う。

 

まじめで、打たれ強くて

好感度めちゃめちゃアップです。

 

 

・・・・・・・・・。

 

と、ここまで書いて、もう一度考え直す。

 

下編は

大宮と杉子の手紙で構成されているんだけれど

 

実は、この手紙、

大宮が同人誌に投稿して掲載されたものなんです。

 

野島はそれを読んでいる。

 

なんで同人誌に掲載した?

 

同人誌に掲載したという事は

大宮の創作がかなり入っているし

友人の好きだった人を奪った自分を正当化して

周りから悪く思われないようにする

という意図がかなり入ってる可能性あり。

 

つまり、大宮が友人の好きだった人を横取りした事実を

上手く書き換えて

いかにも、自分はそうしたくなかったのにこうなってしまった

という風に思わせるようにしたのではないか。

 

さらに言えば、

杉子も、野島が見ていた彼女とは違うように書かれていて

彼女と結婚するって、そんなに幸せじゃないのかも

みたいな感じを、読み手に与えている。

(となると、杉子は本当はステキな女性だということになる)

 

いやあ、これは大宮にやれましたね。

頭良いけど、なんか嫌な感じ。

 

いやいや、こういうのも

読む人によって感じ方は様々です。

 

いずれにしても、最後まで読むと

野島ええ奴、応援したくなる。

ここは、間違いない。

 

結局、男どおしの友情って、いったい何なんだろう?

 

とにかく読めば、いろんなことが想像できて

めちゃめちゃ面白すぎますよ、この話。

 

この本が

いまだに、多くの人に読み継がれているの、わかるわあ。

 

初版が1932年ってなっているから

もう90年くらいたっているのに

全然古くなっていない

これも、びっくりです。

 

これは読む価値ありです。

是非是非、おすすめ。

 

 

友情

コメント

  1. 洋子 より:

    奥薗先生はじめまして。

    先生の動画をいつも楽しく拝見しています。簡単で調味料も少ないのに美味しくて、すっかり我が家の定番料理になっています。

    「友情」は読んだことはありませんが、先生の楽しい語り口のおかげでストーリーが手に取るように分かる気がして引き込まれてしまいました。
    ちょっと怖い大宮さんですね。真相は如何に。図書館で借りて読んでみたいです。
    昔からの名著って、読むごとに新しい発見があるような気がします。
    ずい分本を断捨離してしまいましたが、残した本をまた読み返したくなりました。
    ありがとうございます。

    1. 奥薗壽子 より:

      コメント、ありがとうございます。
      名著って、読み継がれているだけのことはあって
      読むたびに新しい発見があったり、違った解釈が出来たり
      自分が味方したくなる人物が変わったりするのがすごいなあって思います。
      是非是非、読んでみて下さい。それぞれの人物、どんな風に見えるかな?

  2. トマトっ子 より:

    奥薗先生の読書日記とか映画日記、お料理のレシピと同じくらい大好きでめちゃ参考にさせてもらってます。
    先生の紹介文がまた上手いから、え〜〜なにそれ読みたい!観たい!ってわくわくするんですよね。
    『友情』私も読んでみます。

    1. 奥薗壽子 より:

      うれしいコメントありがとうございます。
      読み終わった後も、その後どうなっているだろうか気になっています。
      そういうところも名作のゆえんなんでしょうねえ。
      是非読んでみて下さい。

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