家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
最近、娘が「ブラックジャック」を読んでいて
その影響で、手塚治虫作品をきちんと読み直してみたくなり、読んでみました。
「火の鳥」って、作品としてはめっちゃ有名だし、タイトルはよく知っていたものの
じっくり読んだことがなかったのです。
火の鳥
その血を飲むものは永遠の生命を得るという
その鳥は、われとわが身を炎に焼き、若鳥に生まれ変わる。
永遠の命
それを欲する人と欲しない人
永遠の命を得ることは、果たして本当に幸せなことなのか。
読む前は、そういうテーマの話なんだろうなあ、と漠然と思っていたのですが
いやいや、そういうことを考えさせらえる部分もありますが
この作品に込められたテーマは、そんな単純なことではなく
もっと壮大な、とてつもなく深い物語でした。
物語は、古代日本の古事記を彷彿させるストーリーから始まり
古代と未来を行ったり来たりしながら展開していきます。
日々食べるものがあり、大切な人と一緒に暮らす
ただ普通に暮らすことを望んでいるだけなのに
ある時、突然そのささやかな暮らしが壊され、普通の暮らしが奪われ多くの命が奪われる。
それは、文明が進化し、科学の力で生活が便利になり
一見便利な時代が来たように見えても
実は、便利な生活やその上に作られた幸せも、もろさという点では古代のころと何ら変わらない。
最後に火の鳥が言うセリフがあります。
人間というのは、何百年何千年たっても、どこかでいつも宗教のむごい争いを起こすのです。
きりがないのです。止めようがありません。
それは、宗教とか人の信仰って、みんな人間が作ったものなの
どれも正しいのですから、正しい者同士の争いは止めようがないのです。
悪いのは宗教が権力と結ばれた時だけ
権力に使われた宗教は残忍なもの
人間の権力は、人間自身の手でなくすもの・・。
物語は、東大寺の大仏建立や、大化の改新
源平合戦と日本の歴史を手塚流にストーリー展開させたかと思えば
人間と狗族、物の怪たちとの戦い
あるいは、未来都市で、地上に住む光一族と地下に住むシャドーと呼ばれる人たちとの抗争
など、
物語は時空を超えて、あちこちに縦横無尽に展開していきます
そのすべてで言えることは
権力というものの、麻薬性と残虐性。
人が権力を手に入れたとき
その権力を永遠に手放したくないと考える。
永遠の権力を手に入れるために、人は神になろうとするが
人が神になどなれるはずもない
ひとたび権力を手に入れた人間は
すべてを自分の思い通りにできるのではないかと錯覚し
何をやっても、自分だけは許されると勘違いする。
自分に逆らう者は、葬り去る。
それは権力を持った人間の権利だとさえ思う。
人を人と思わない
命の尊さを忘れてしまう。
その時、人としての堕落が始まる。
そうと気づかないうちに堕落は一気に破滅へとつながる
そうして、権力、堕落、破滅というルートを
永遠に繰り返し続ける。
「火の鳥」は、長い人類の歴史の中で繰り返されてきた人間の愚かさを
繰り返し繰り返し、描いた作品だ。
けれど、そんな世界とか宇宙とか、歴史とか、そんな壮大なことではなくて
日々暮らしている、この生活の中で
自分にとって何が幸せで、欲していることはなになのかということを
ついつい見失っていることがあるのではないかということにも、きづかせてくれる。
自分の家族、生活している小さなコミュニテイーのようなところでも
自分とは違う考えや、習慣に対して
一方的に
を突きつけることはないか。
自分の価値観を一方的に押し付けていることはないか。
声の大きさは、人数の多さというもので
少数意見を封じ込めていることはないか。
自分の足元を、もう一度照らしてみて
自分は大丈夫か
破滅への道を歩み始めていないか
我が身を振り返って自分自身の生きざまをもう一度見つけなおさせてくれる作品でもありました。
いずれにしても、
折に触れて、何度でも読み返したくなる作品です。
お正月休みの読書におすすめです。
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今月の「日めくりレシピ」の週末スペシャルは、
私の故郷京都の野菜です。
昨日と今日は、九条ネギ。
「ねぎ焼」と「関西風カレーうどん」を紹介しました。
どちらも、九条ネギのおいしさを堪能できる料理です。
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