家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
「確かに奥薗さんのやってるいることは尊いと思うけれど
私は、本格的な鶏ガラスープを何時間もかけて作るより
たとえインスタントを使っても、
その時間を子供と遊んであげたほうが、子供にとっては幸せなんじゃないかと思う」
と、ある時知人から言われました。
もう20年以上前のことです。
正直、ショックでした。
でも、その通りだと思いました。
当時私は
子供に、できる限り自然のおいしさを知ってほしいと思い
料理の本の通り、昆布をつけたり、鰹節をこしたり
鶏ガラをコトコト煮出したり
毎日、スープやだしをきちんととることにかなりの時間を使っていました。
何時間もかけて、コトコトスープストックを作るのは、本当に子どものためだろうか?
私っていいお母さんでしょ、という自己満足かもしれない?
そんな思いが、頭の中をぐるぐると駆け巡りました。
けれど、だからと言って、子供の食べ物をいい加減にするのはやっぱり自分では妥協できません。
それからいろいろ試行錯誤の日々。
和風のだしに関しては、つけない、こさない、引き上げない、全部食べるという
奥薗流のだし取り方法が出来上がった経緯は、以前書いた通りです。
(2014年9月28日 読書日記「素人のように考え~」のところで書いていますので、よかったら読んでみてください。)
このやり方なら、にこにこして子供と遊ぶことと、自然のうまみを食べさせることと
両方とも手に入れることができる!!
問題は洋風のだしです。
もともと、和風のだしは、昆布にしても鰹節にしても、すぐにうまみが出るように加工されていますが
洋風のだしは、動物の肉や骨から旨みを取るので
どうしても、煮込んでいく必要があります。
スピーデイーにというのはなかなか難しい。
(これも、20年以上試行錯誤をして、今はほぼ自由自在に旨みを引き出せるようになりました、これは、おいおい書いていきますね)
そこで、最初のころ、よく使ったのがベーコンでした
もともと、ベーコンは西洋料理における鰹節といわれていて
ベーコンを入れるだけで、おいしいスープになったりします。
これはいい、ベーコンを使えば、簡単だわ。
と思ったのもつかの間
ベーコンって、ピンキリで、おいしいのもあればまずいのもある。
なんでもそうだけれど、値段のいいものは、確実に美味しい。
家庭料理研究家として仕事をし始めると
値段と品質の問題は、レシピを書くたびに、いつも心に引っかかっています。
家庭料理研究家の仕事というのは
自分がおいしいものを作れるということではなくて
誰でもが、失敗なくおいしいものを作れるレシピを考えること。
レシピにベーコンと書いたとき、どんなベーコンを使うかで、大きく味が違うということは、できたら避けたい。
そもそも、ベーコンにはJAS規格があって、2種類に分別されています。
ベーコンと ロースベーコン及びショルダーベーコン
いろいろ細かい規格基準はあるようですが
原材料に関していえば
バラ肉を使ったものがベーコン
ロース肉を使えばロースベーコン、肩肉を使えばショルダーベーコン
ちょっと語弊があるかもしれないけれど、豚肉の脂身が適度に入っているかどうかで区別できます。
つまり、ロースベーコンとかショルダーベーコンって、ハムに近い感じですね。
ベーコンをスープや煮物などのだしに使うとなると
バラ肉の脂のコク(もちろんスモークの香りも大事ですけど)がどうしても必要になります。
これをじっくり加熱して、引き出すことによって、煮汁が深い味わいになります。
逆に、ハムに近いローズベーコンやショルダーベーコンは
脂が少ないので、煮込んでもコクが足りず、スープのうまみだしにはちょっと物足りない感じ。
煮込まず、さっと炒めたり焼いたりして食べたほうがいいのです。
ベーコンには2種類あって、料理によって使い分けたほうがいいのだけれど
レシピだけでは、なかなかそこまで伝えきれなくて、歯がゆい気持ちでいるというのが現状です。
さらに、豚バラを使ったベーコンでも、製品によって旨みが強いものと、それほどでもないものがあります。
だから、本当はちょっと値段のいいものを買うほうがいいということになりますが
そう書いてしまったら、身も蓋もありません。
そこで、家庭料理研究家として
そんなに高くないベーコンで、おいしいスープを取る方法を考えたわけです。
そこにお金をかけられる人もかけたくない人も、時間がある人もない人も、
誰でも、平等にうまみを手に入れられなくっちゃ。
その方法とは、ズバリ、ベーコンと一緒に昆布を使うことです。
「うまみの文化・UMAMIの科学」(山口静子監修 丸善株式会社)
によれば
うまみ成分グルタミン酸のうまみは、濃度が高くなればうまみも強くなりますが
イノシン酸は、濃度が高くなってもその強さはほとんど変わらないのが特徴だそう。
けれど、そのイノシン酸にグルタミン酸を加えると、うまみは飛躍的に強くなる。
これがうまみの相乗効果。
ということはつまりベーコンのうまみ成分のイノシン酸に
昆布のグルタミン酸をプラスすることで、うまみがグンとアップする。
それは、単に昆布のうまみをプラスしたというだけではなく
相乗効果が起こるわけですから、飛躍的なアップの仕方になるのです。
となると、ベーコン自体からもの最高のおいしさが引き出せなかったとしても
昆布を使うことで、それをフォローできるということです。
この2つを掛け合わせる方法として、奥薗流なら昆布をチョキチョキ切手入れるだけなので、とっても簡単!!
ということで、今日の結論
ベーコンは、洋風料理の鰹節になれるのか
答えは、なれる。
ただし、
ベーコンの種類を気にして、使い分けること
ベーコンと一緒に昆布を使うこと
ベーコンを買うとき、料理するとき
この2つのポイントを、ちょっと気にしてもらうと
ベーコンを使ったスープや煮物が、ぐんとおいしくなるはず。
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今日の「日めくりレシピ」は「もやしと豚肉のシンプル中華丼」
野菜をいろいろ使わずにもやしだけ作ると
逆にもやしのシャキシャキ感が際立って、もやしのおいしさを堪能できます。
ちなみに、昨日は「キノコとベーコンの炒めサラダ」
このサラダは、ベーコンを炒めて作るので
どちらのベーコンを使っても作れます。
ただし、ロースベーコン、ショルダーベーコンの場合は
炒めすぎないほうが、おいしいと思います。
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