でいりいおくじょのBLOG

2018.07.03

金地院 長谷川等伯「猿猴捉月図」

今日は大阪でテレビの収録。

今回の京都は、この仕事のために来たのでした。

 

さくさくと料理の収録を済ませた後は京都に帰ってきて

ぎりぎり、まだどこかお寺などを回れる時間だったので

金地院に行ってきました。

 

金地院は南禅寺の塔頭で

もともと北山にあったのを、徳川家康の政治顧問である金地院崇伝がここに移したそう。

 

金地院に行ってみようと思った理由は

ここの鶴亀の庭というのが有名で、かの小堀遠州のデザインで美しいと評判だったことと

長谷川等伯の描いた襖絵、「猿猴捉月図」と「老松」を見たかったから。

 

まず鶴亀の庭。

 

石で、鶴と亀が向かい合わせに並んでいる図を表現しているそうで

確かに亀の方は、亀に見えました

はい、見えた‥。

(うっかり写真を撮るのを忘れました…)

 

でも、鶴の方が、かなり無理がある感じ。

いやいや、すいません。

枯山水の庭って、見る人の想像力と知識がかなり必要で

物の本によると、見る人の想像力を膨らませることで

庭とのコミュニケーションができると書いてあったのですが

いや、私、まだ、全然、お話しできないでいます。

 

この鶴の方は、ここに徳川の将軍様が来られた時に、このお庭を見るための席があって

そこから見るとこんな感じに見えるそう

 

IMG_7517

 

 

 

 

鶴を思いっきり想像するのですが、むずかしい・・。

 

更に、ここに植えられている樹木はいずれも常緑樹ばかりで

これも、永遠に続く徳川の権力を表しているのだそう。

う~ん・・。

 

そうそう、こちらは八窓席という茶室も有名で

京都の三大茶室の1つです。

(後の2つは大徳寺弧蓬庵の忘せん(竹に全)席、曼殊院の八窓軒)

普通お茶室というと、身分の高い人も低い人も、皆さん一律ににじり口から腰をかがめて入るのが普通ですが

このお茶室は、お偉方がお見えになった時、腰をかがめなくても入れる入り口ががあるのが、びっくりでした。

千利休さんの、わびさびの世界とは、かなり違うようです。

 

う~ん・・。

 

でも、この茶室は、ネーミングの通り窓があり、そこから入る光がとても美しいそうで

今日は曇っていたのですが、夕方の光が入った時に虹色に輝くといわれている茶室は、見てみたいなあと思いました。

 

それにしても、ここを移築した崇伝さんは

黒い宰相といわれるかたで、幕府の中でも大きな力を持っておられたそうで

さすがに権力の匂いがするお庭ですねえ。

それが他の枯山水の庭とは明らかに違うオーラを放っているのが、私のような素人にもはっきりと見て取れるお庭でした

 

さてさて、この金地院に来たもう一つの目的

長谷川等伯の襖絵です。

 

「猿猴捉月図」は、教科書にも載っているので、私でも知っています。

一匹のサルが、片手で枝をつかみ

もう片一方の手で、水に映った月を取ろうとしている図。

 

最初、じっくり細部の筆遣いなどを見せていただき、

それはそれで感動したのですが

その後、電気を消した状態で見せてくださったんです。

 

すると、そこからがこの絵のすごさ。

最初は暗くて、あまりよく見えなかったのが段々目が慣れてくると、

不思議なことに、枝にぶら下がっている猿の枝をつかんでいる方の手が、

わっさわっさと揺れ始め

それから、水面に映っている月と、月を映し出している水面の、光が反射してきらきら光る感じとか、そこに吹いている風の感じとか、かすかな音とか

いろんなものが、目からも、耳からも入ってきて

 

そこに、あたかも、池があり、木々が生えて、猿が一匹いるかのような

世界が目の前に静かに広がったのです。

 

長谷川等伯のすごさって、こういう事だったのかと

本当に驚き、感動しました。

 

単に、猿と、木と、月が描かれているのではなく

そこに、多次元の世界を作っている。

 

つまり単なる絵ではなく、等伯さんはそこにある世界、音も、匂いも、光も、風の感触も

全てを書き込んでおられるのですね、

多次元の世界、すごすぎる。

 

考えてみたら、この絵が描かれた時代、電気はなく、夜になればロウソクの生活だったはずですから

その光で、見てこそわかることがあるし

本当に素晴らしいものは、こちらからわかろうと努力しなくても

何の知識も持たなくても、伝わるのだということも分かりました。

 

そして、本物というのは

幸せな気持ちで満たしてくれますね。

この襖絵を見るためだけにこちらを訪れてもいいくらいの素晴らしさでした。

 

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