でいりいおくじょのBLOG

2016.09.13

読書日記「しろいろの街の、その骨の体温の」

この前「コンビニ人間」を読んだ時

著者の村田沙耶香さんのプロフィールをみていて「あっ」と思いました。
 

この本を書かれた方なのか・・。

「しろいろの街の、その骨の体温の」(村田沙耶香著 朝日新聞出版)
 

この本は、大好きな西加奈子さんが、好きな本としてエッセイで紹介されていたもの。

すごく興味がわいたのだけれど

その時は、まだ村田沙耶香さんという作家さんをよく知らず

まして、小学生が主人公の物語ということで、ちょっと手に取るのをためらったのでした。
 

でも、今回「コンビニ人間」を読んでみて、ぜひ別の村田作品も読んでみたく

それなら、絶対にこれだと思い読んでみました。
 

西さんといえば「円卓」という小学生の女の子の成長物語としては素晴らしい作品がありますが

その西さんが絶賛されているだけのことはある、本当にいい作品でした。

いろいろなことを考えたり、思い出したり、読んでる間中うなりました。
 

細かいストーリーについては、とにかく読んでいただくとして
 

自分がどんなふうに子供から大人になったのかなんて、正直あまりよくわからないのだけれど

自分の子供たちのことを思い出しながら読むと、なんかものすごく納得できることがたくさん。 
 

子供が大人になる時って

たしかに体のあちこちが、好き勝手に無秩序に成長して骨格を作り

びっくりするほど日に日に成長しているかと思えば

ある日突然、部分的に成長が止まってしまうかんじ。

それって、無秩序に街が建設されていく様とすごくよく似ていますね。
 

で、突然成長が止まった後に、行き場を失った熱が、

内側でどんどんたまっていき、それをどうしていいのかわからず持て余す。

行き止まりのトンネルや、先に延びない鉄道路線によって外に広がらない街の中で

抜いても抜いても生えてくる雑草のように

もはや、そのエネルギーをどう扱っていいのかもわからず、悶々と持てすことになる。
 

うちの子供たちも、確かにあのころ、出口を失ったエネルギーを持て余していましたねえ。
 

特に息子は、学校にも世の中にもすべてにいら立ち反抗し

それでも自分の中でうごめく何かわけのわからない熱と、どう折り合いをつければいいのかわからず

かなりもがき苦しみました。
 

たぶん、子供から大人になるためには

行き止まりになってしまったトンネルや線路や道の向こうがわにむかって

新しい風穴を開ける必要があって

その向こうに、自分の知らないもっと大きな明るい世界があるということを確信できて

それに向かって進めるんだとか、進んでもいいだという希望が持てることが必要なんだと思います。
 

そこへ至る道筋や手段は、一人一人違うし

息子の場合、自分も周りの人もたくさん傷つけたけれど

そうすることでしか、トンネルを抜け出せなかったのですから仕方ありません。

でも、それもすべて、長い目で見れば無駄じゃない。

今振り返れば、本当にそう思います。
 

人の成長は、それぞれにいびつで

人間としてのハード部分に関しては、いびつなままで成長は止まってしまいますが

それでも、内面の成長はハード部分の成長が止まってからが本番で
 

無秩序に作られた街でも、その無秩序さのまま

中に住む人々の手によって住みやすい街へと進化できるように

子供たちも、そして私自身も、まだまだ内面は進化の途中。まだまだ未完成です。
 

村田沙耶香さんの作品は

「コンビニ人間」では、コンビニという現代の象徴的な存在を、人間の上にオバーラップさせて描いておられましたが

この作品では、白い鉄筋で徐々に建設されていく無機質なニュータウンと、

子供が大人に成長していくプロセスをオーバーラップさせた作品でした。

無機質なものと、人間との思わぬ共通点にハッとさせられるとともに

外側と形作る骨格と、その内側にある目に見えない熱とエネルギーと

そんなものを、感じながら読ませていただきました。
 

物語は、女の子が大人になるために、自分の意思で一歩踏み出しますが
 

いったん工事が中止された部分も、また新たに建設工事が始まるように

人間いくつになっても、また何か新しいことを始めてもいいんだと

私自身は、自分の都合のいいように解釈し、読後は何か希望が持てるすがすがしい気分でした。
 

本当にいい作品でしたので、おすすめです。
 
 

コメント

メールアドレスは公開されませんのでご安心ください。
また、* が付いている欄は必須項目となりますので、必ずご記入をお願いします。

内容に問題なければ、下記の「送信」ボタンを押してください。

PageTop