家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
この前テレビでホルトハウス房子さんが出ておられて
鶏ガラからスープを作っておられるのを見て
私もやってみたくなりました。
実は、子供が小さいころ
できるだけ本当の味を食べさせたくて
和風のだしはもちろん
鶏ガラスープも、週に1回とか2回、鶏ガラをコトコト煮出して
スープストックをまとめて取ってそれを使いまわして使っていた時期がありました。
多分あの時の私は、ただただ、いいお母さんになりたかったのと
駆け出しの料理研究家として
何か、目に見えないプレッシャーのようなものがあったのだと思います。
ところがある時、友人の一人が私に言いました。
「奥薗さんのやっていることは偉いと思うけど
私は、鶏ガラのスープを子供のためにつくるより
その分の時間を子供と一緒に遊んであげるほうが
子供にとっては幸せだと思う」
あの時は、本当に言葉にならないほどの衝撃を受け
家庭料理として、優先すべき順番はどこにあるんだろう
幸せな家庭料理って、どういうことだろう
ということを真剣に考えました。
そうして出来上がったのが
今の、奥薗流の家庭料理の原型でした。
すなわち、和風のだしは、昆布、煮干し、かつお節をベースに
基本的には引き上げずに、全部具として食べてしまう。
洋風のだしに関しては
肉や魚を上手に使って
そこから出る旨みを出しのベースとして
これもやっぱり、わざわざスープだけを取るということはしない。
それが、いろいろ考えた結果
私が行きついた、無理のない答えだったのです。
以来、鶏ガラをコトコト煮る代わりに
鶏もも肉や胸肉と昆布を掛け合わせて旨みのベースを作ったり
骨から出る旨みがほしいときは、手羽先や手羽元を煮て
だしを取るのと一緒に肉も食べておかずにしちゃうみたいなことをやってきました。
でも、先日のテレビで
ホルトハウス房子さんが丁寧に丁寧に鶏ガラを洗って下処理をして
時間をかけてコトコトとスープストックを作っておられるのを見て
こういう時間も悪くないなあと思えるようになったのです。
子育てで忙しい時と違って
ある程度年齢を重ねたら
台所で鍋を火にかけながら、その横で本を読んだり、何か書き物をしたりといった時間が
なんてゆったりと豊かなんだろうと思えたのです。
そんなわけで、今日は早速鶏ガラを買ってきてスープ作り。
ホルトハウス房子さんのまねをして、丁寧に脂肪や血合いを洗い流して
あとは、鍋に水とともに入れて火にかけるだけ。
ほったらかして、ごくごく弱火でコトコト煮ること3時間。
そうして出来上がったスープは
たしかに、肉からとったさっぱりした旨みに比べて、
骨から出た旨みはぐっと深みのある味わい。
番組ではラーメンを作っておられましたが
たしかに、このコクはラーメンに合いそうです。
というのも、私、鶏のスープのラーメンは結構好きでよく作っていたのですが
鶏もも肉を煮て作ったスープだと
ちょっとコクというか、何かが足りない気がしていて
いつも煮干しとか、シイタケとかを掛け合わせてダブルスープにして
味を複雑にしていたのです。
それはそれで、結構おいしいのですが
骨からとった、このコクのあるスープだと、これだけでラーメンによく合いそう。
そんなわけで、私もこのスープで鶏ねぎラーメンを作ってみました。
スープの味付けはしょうゆのみ。
これで十分なおいしさです。
ラーメンのトッピングは
鶏むね肉をレンジにかけて蒸し鶏を作り
それを細く切って細切りにしたねぎを混ぜ、塩とごま油で和えたもの。
これでぐっと食べごたえがアップします。
ラーメンは、細めのちぢれ麺
最近はこういう生めんも、普通にスーパーで売られるようになりましたね。
あらかじめ温めておいた丼に熱々のスープを入れ
(私はあらかじめスープの味を調えてから器に入れます)
あとはゆでたての麺を入れてトッピングをのせ
仕上げに、ごま油とこしょうを振れば出来上がり。
本当は、動物性の脂が入ったほうがスープが麺によく絡むのですが
ごま油のような植物性の油でも
入れないよりは入れたほうがスープがからみます。
香りもいいしね。
おうちラーメン、出来上がり!!
お店で食べるのとは違って、あっさりさっぱりのシンプルなラーメン。
でも、コトコト鶏ガラからとったスープがとってもぜいたくで
こういう贅沢を、きちんと贅沢だなあと思って受け止めて
しみじみ味わえるようになるには
やっぱり、いろんな生活の紆余曲折があってこそ
そのありがたみもわかるようになるのかもしれません。
これからは、時々、こんな風に鶏ガラのスープをまたとってみようかな
そういうゆったりとした時間を楽しめるような
年齢の重ね方をしたいものだと思いました。
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