でいりいおくじょのBLOG

2016.08.30

読書日記「筋肉」よりも「骨」を使え!

以前、SWITCHという番組で、俳優の片桐はいりさんと対談されているのを見て

初めて河野善紀さんという方を知り

ただものではない空気感とか、おっしゃっていることのシンプルなのに奥深いすごさとか

いろんな事に圧倒されて
 

もっといろんなことが知りたくてこの本を読んでみました。

「筋肉」よりも「骨」を使え!(甲野善紀 松村卓著 デイスカヴァー携書)
 

甲野善紀氏は古武術研究の第一人者で

松村卓氏は骨ストレッチの考案者であり、スポーツ選手の指導者。
 

甲野氏は、それまでのスポーツの常識に疑問を呈し

筋肉の力に頼った体の使い方ではなく、むしろ無駄な力を使わないことで最大限の力を引き出すという古武術的身体操縦法を提唱されていて
 

実際、テレビでも

目にもとまらぬ速さで竹刀を振り下ろす合気道というんでしょうか、そういう技とか

ほとんど力など入れておられないように見えるのに、

どうやっても体を動かすことができない技とか

(うまく表現できなくてごめんなさい、実際の甲野氏の動きは感動ものでした)

甲野氏の小さな体のどこにそんな力があるのかと思うようなシーンを目の当たりにして

本当に目が点になったのでした。
 

この本は、師弟関係にあるお二人が、そんな筋力に頼らない体の鍛え方、身体能力の高め方など、それまでのスポーツの世界の常識とは全く違う話をされている対談集。
 

私自身はスポーツをやっているわけでもないし

トレーニングのやり方という部分についても全く門外漢で

正直、半分以上は理解できないで読み進んだような感じでした。
 

なので、どれほど理解できたか、はなはだ心もとないのだけれど

私なりに理解したことは
 

筋肉を鍛えれば鍛えるほど、筋肉は固くなり動きを妨げ

骨の周りの筋肉を柔らかくすることで、無駄な力を使わず動けるようになる

つまり、科学データに基づいてトレーニングして、頭で考えて動くのではなく

体が自然に動くべくして動く動きを自分のものにし、

意識よりも先に体が動く術を習得する、これが甲野さんが提唱されていることなのではないかと。
 

目に見えるもの(筋肉)を動かすには、目に見えないもの(骨)の活用が必要であるということ。
 

おっしゃっていることはわかる気がします。

スポーツのことでは理解しにくいので

料理に置き換えて考えてみると、わかる気がするのです。。
 

料理も頭で作ろうとすると、壁に当たって身動きできなくなる。
 

そう、頭で段取りを追って料理しているうちは

既成の型から抜け出せないのです。

また、科学的根拠や、料理のコツのようなものばかりにこだわると

どこか、機械的で料理の本質を見失ってしまう。

でも、だからといって、それらを無視したら

どこをよりどころにしてレシピを考えるべきか、道を見失う。
 

こだわりすぎるのもダメ、かといって無視もできない。

そうして、壁にぶつかって、もがき苦しむことの繰り返しです。
 

でも、この本を読んでふとと思ったのは

おばあちゃんの作る煮物や漬物がなぜおいしいのか

仮に正確なレシピがあって、その通りに作っても、やっぱり何かが違うはず・
 

それはたぶん、頭で考えずに作っているかどうかなんでしょうね。

すべての動作一つ一つが、自然に流れてできあがる料理は

どこか次元の違う何かがあって

シンプルで素朴であっても、しみじみとしたおいしさになるんだろうな、きっと。
 

葛飾北斎が長生きをして修業を積んで、最終的に究めようとした奥義も

やっぱりそういうことだったと思う。

描こうと頑張らなくても、さらっと線を引くだけで、そこに命が宿っているかのような絵。

料理の世界でもやはり、そんな境地があるはず。
 

大根をさっと煮ただけなのに

その人が煮れば、しみじみおいしい…みたいな。
 

どうすれば、そこにたどり着けるのかわからないけれど

日々料理を作って作って作って作って

いやになるくらい作って作って
40年も50年も作って作って作って

何も考えずに体が勝手に動いて料理できるまでになれば

その先に、きっと何か見える気がする。
 

そういえば、この前「きょうの料理」にばあば、こと鈴木登紀子先生が出ておられて

(91歳になられるんですね、お若くてきれい!!)

やっぱり、力の抜け方がすごいなあと思いました。

技も、知識も、そういうことを超越した緩やかで、居心地のいい料理の世界がそこにありました。
 

ことさら何かを見せようとされていなくても

確実に料理の楽しさも、料理の本質もきちんと詰まっている。
 

私も、あと40年くらい精進して料理を作り続けたら

あそこに行けるかなあ、行きたいものだなあ、と思いながら拝見しました。
 

とにかく、力を抜くこと

頭で考えずに、

ありふれた暮らしの中でありふれた料理を日々淡々と作り続ける。

山に登った人にしか、頂上からの風景は見えないわけですから

毎日料理を作り続けた人だけが見える風景も確実にあるはず。
 

できれば、そこにたどり着きたいなあ

私が料理をただ作るだけで、

料理の楽しさが伝わり、料理を作ってみたいと思う人が増えていくような、そんな境地。

まだまだ、先は長いけれど、いつかきっと、と思いながら
 

今日も、料理を作り続けている私です。

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