家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
先日、たまたまブラジル版バーベキューのシュラスコのお店の前を通ったら
なんだかものすごーくブラジル料理が食べてみたくなって
入ろうとしたんだけど、なんと、満席で予約なしでははいれない状態。
オリンピックの影響でブラジルの料理も人気なんですね。
それで、改めてきちんと予約を入れて食べに行くことにし
その前に、ブラジル料理についての予習を兼ねて、本を読んでみました。
「おいしいブラジル」(麻生雅人著 SPACE SHOWERBOOKS)
ある国の食文化を知るには、まずその国の歴史と地理的な条件などを知る必要があると思うんですけど
特にブラジルの場合、その説明なしではいろんなことを理解できないと思うんですね。
そういう意味では、この本は、まず最初にその辺の説明をきちんとしてから
ブラジル料理をいろんな側面から説明してあるので、
ブラジルというものを大きく理解しつつ、料理の細部も楽しめるように仕掛けてある本です。
というのも、ブラジルというのは、その辺のところを何も知らずにシュラスコやマテ茶やアサイーだけを取り上げても、
ブラジル料理って何なのか、あまりよくわかりません。
ブラジル料理って多彩で、いろんな国の要素がいっぱい混ざりすぎていて
逆にとらえどころがないと思うんです。
この本の言葉を借りるならば
もともとこの土地にいた人々と、この土地に移り住んでいた人々の影響が混ざり合って作り上げられた文化。
もともと暮らしていた先住民族が作り上げてきたきちんとした文化があったところに
16世紀になって入植して、ここを植民地にしたポルトガルの影響
さらに、その後国の政策で世界中からの移民を受け入れてきたことによる
アフリカや、イタリヤドイツといったヨーロッパ文化。
世界中の国の文化がここで混ざり合っているわけです。
ブラジルの文化は、まさにハイブリット。
そう考えると、ブラジルがイメージしやすくなるかも。
外国からの文化と、昔から培ってきた国の文化が融合。
例えば日本だって、あの鎖国の時代に
ポルトガルやスペインから入ってきた文化を、うまく自国の文化と融合ざせて
カステラとか、てんぷらとか、ポン酢とかをつくちゃったので
他国の文化を自国に取り込むことに関しては、そんなにびっくりしない気がするのですが
ただ、その取り込み方が、日本とブラジルとでは全く違うんです。
日本の場合、いったん取り込んだ文化をぐっと日本人仕様につく作り替え
さらに、洗練されて、日本のオリジナルなものにまで昇格させちゃっていると思うんですね。
それはたぶん、日本が島国で、日本人という単一民族国家だからで
外国文化も日本的にリメイクできてしまう。
でも、ブラジルは多民族国家で
その文化を、移住してきた外国人自身が広めていくわけですから
祖国の味をより洗練させたり、よりブラジル風に変化させるというよりは
あくまで、自分たちが祖国の味をブラジルで食べたいということで定着していくわけです。
だからこそ、いろんな国のバラバラの食文化がブラジルという大きなくくりの中で共存できちゃうんでしょうね。
そんなわけで、ブラジルの食べ物は
イタリアの要素も、アフリカの要素も、アラブの要素も、アジアの要素も
いろんなものが混ざり合うでもなく共存しているんですね。
この本を読んで、そこが、一番おもしろいなあと思いました。
それにしても
この本の中で紹介されている料理名とか、お店の名前とか、商品名の言葉の響きが
なんか、今まで聞いたことのないような、不思議な音感で
なんか不思議なファンタジーの世界に連れていかれたような感じにもなってくるんです。
ペキのピラフ、ミナス風フェイジョントロペイロ、トヘズモ、パモーニャ、モコトー
なんていったらいいか、上橋菜穂子さんのファンタジーに出てくる食べ物みたいな感じ。
言葉の響きだけで、不思議な世界にいざなわれる。
いったいどんな料理なのか、ものすごーく興味がわいてきます。
これはもう、絶対一度は食べに行かなくっちゃ。
コメント