家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
NHKでやっている「100分de名著」
今月は安部公房の「砂の女」
実は
安部公房って、年代的にドンピシャでして。
大学時代演劇をやっていたんですけれど
安部公房の作品にハマりまくり、実際に上演したりしていました。
いやあ、あの当時、若くてとんがっていたんです。
でも
おそらく、そんなに理解はしていなかったと思います。
あの不条理な世界観に浸っている自分が、たまらなく好きだっただけ
安部公房を読んでいる私、かっこ良い!!みたいな。
そんなわけで、安部公房の名前を久しぶりに目にして
矢も楯もたまらず、読んでみました。
読んでみてびっくり
ああ、こんな話だったのか~って感じで
めちゃめちゃ面白い。
あのころ読んだのとは、全然違う感じ
(歳をとって再読すると、そういう事ありますよね)
本当に面白い。
ストーリーを簡単に書くと
教師をしている男が、昆虫採集のために砂漠に行き
そこの村で一晩泊めてもらうことになるんです。
案内されたのは
砂に掘られた穴の中にある家
そこには女が一人で暮らしている。
壊れかけた家の中に女が一人
絶え間なく上から砂が降りかかってくる。
あくる朝目を覚ますと
女が、裸で寝ており
慌てて外に出ようとするのだけれど
縄梯子がなくなっていて、男は穴から出られなくなるんです。
その後、男は、あの手この手で
この穴から抜け出そうと試みるんだけれど
どうやってもこの穴から出られないんです。
どうやら、ここの穴に入れられたのは
村の人の策略なんです。
女を縛り上げてストライキを起こたり
仮病をつかってみたり
砂をよじ登ったりしてみるんだけれど
どうやっても逃げられない。
この男の運命やいかに!!!
(結末は、書きませんね)
この、砂をよじ登って逃げ出すシーンなんかは
アルカトラズの監獄を脱出する映画を見ているようなハラハラドキドキ感です。
というのも
砂をよじ登って、穴から出るのが第一段階で
その穴から這い上がった後、村から脱出しないといけないんだけれど
一方は海なんです。崖なんです。
まさにアルカトラズの監獄
あの監獄も、監獄を抜け出すのがめちゃめちゃ難しいんだけれど
海に浮かぶ島に作られた監獄だから
監獄を抜けた後、どうやって海を渡るか
そこがまた、難題なんですよね。
ひえええええ~~~~~~~。
この小説は
そういう脱出の面白さもあるんだけれど
そこじゃないんですよね。
現実逃避って言うか
今とは違うどこかに行けば、
何かが変わって、今よりも生きやすくなるんじゃないかと思うんだけれど
目の前の現実から逃げたところで
一瞬、大きく変わったように思えても
結局は、そんなに大きく変わらず
何か少しの不満と、もう少しこうなればいいのにという願望と
後は、これも悪くないのかも、というあきらめと
そういう現実の中で生きるしかない。
今とは違う、どこかに
もっと幸せな何かがある。
でも、何かがちょっと変わったところで
それは、砂の山みたいなもので
風に吹かれが吹き飛ばされて、違う場所に山をつくるだけで
自分という本質は、変わらない。
自分もまた、変わっていないようでありながら
どんどん変わっている。
いや、これ、まさに福岡伸一先生の動的平行ですよ。
何にすがって生きるのか
名誉なのか、お金なのか、自由なのか、
結局、すべてを手に入れる事なんてできなくて
お金があっても自由がない
自由があっても、達成感がない。
でも、その中で、知らず知らずのうちに順応していき
諦めなのか、幸せなのか、その境界線があいまいになっていきます。
私も知らず知らずに、そんな風に生きているんだろうなと思います。
今私は、砂の中なのか、外なのか
そんなことも思いました。
これは、読んだ方がいい。
本当におすすめ。
コメント
以下、私見です。自業自得という言葉がありますが、身に覚えがないと思うことは(例えば異世界と交わったとき等)確かにあります。でも、そこで傷ついても立ち止まっても休憩したとしても、どれだけ社会で自分の人生を生きていけるかだと私は思っています。まずは、健康と気力からですね。