でいりいおくじょのBLOG

2024.09.24

映画日記「あえかなる部屋 内藤礼と光たち」

内藤礼のドキュメンタリー映画を見ました。

 

「あえかなる部屋 内藤礼と光たち」

 

東京国立博物館での内藤礼の個展を見た後

日曜美術館でも、この個展が取り上げられていて

それを見たら、内藤礼について、もっと知りたくなりました。

 

テレビの中で、特に心を奪われたのが

豊島美術館にある母型という名の作品。

 

何もないドーム型の建造物(上がまあるく空いている)で

中は、何もなく、地下水が静かに湧き上がってきて水玉になり、

まるで生き物のように水玉が転がって流れ

水たまりに流れ込む。

 

上に開けられた穴からは、空が見えて

風が吹き込み

そこにつるされたリボンをゆらゆらと揺らしている。

 

文字で書けばそれだけのことなんだけれど

 

見ているだけで、吸い寄せられるようで

自分が、その一つの雫になって、ころころと転がっていくような

不思議な気持ちになります。

 

静かで、けれど、確かにそこにいる感じもあり

儚くて、けれど、何か守られている感じもあり

 

なんていうか、

ここにある何かに、ものすごく安らぎを感じて

 

生まれるという、生きているという事は

祝福だなって思えたんです。

 

でも、そんな気持ちになるのはなぜなのか

すぐには、分かりませんでした。

 

それで、もっと知りたくなって

このドキュメンタリー映画を見ることにしました。

 

映画は内藤礼さんに取材を申し込むところから話が始まり

内藤礼という方が、うっすらと立ち現れてきます。

 

けれど、もともと、取材されることは嫌いで

今まで、製作現場も、製作工程も人に見せたことがないという状況のなか

 

監督は丁寧に辛抱強く、内藤礼さんとの関係を気づいていこうとされます。

 

けれど、やはり、カメラが回っているところでは作れない

という事で、撮影は暗礁に乗り上げます。

 

すごくわかります。

私みたいな、料理を作っているだけの人間でも

カメラがあったり、人がいる所で

レシピを考えたり、料理を作ったりはできないですから。

 

私みたいなものでも

何もないところで自分と向き合うことを必要とするのですから

 

内藤礼さんのような方が、撮影という状況に耐えられるはずがないと思います。

 

この映画の製作をやめるかどうかというギリギリの選択の中で

後半は、内藤礼さん自身の撮影をせずに、その作品をめぐる物語が紡ぎ出されます。

 

内藤礼さんの作品の中に、小さな人という

木を彫った小さな人型の作品がしばしば登場するのですが

この小さな人というのは、見たものを希望だと思って疑わない人なのだそう。

 

そう思って、小さな人を見てみていると

何か、見えないものでつながっているような不思議な感じがしてきて

ああ、自分の中に小さな人がいるのだと思いました。

それはつまり、祈り。あるいは愛。

 

それを想って、あらためて母型という作品を思い浮かべると

あれは、まさに子宮の中なのだと気付きました

 

絶えず生まれている水の玉

ころころ転がって、水玉どおしがくっついたり、水たまりになったり

 

あそこに小さな人が宿って

そして、命が生まれる。

 

リボンがゆらゆら揺れて空が見える

生まれるって、あの空を、外の世界とつながるってことなんだな

 

生まれるって、今自分が生まれてここに居るって

すごいことだと思え

この空間の中に、なんとも言えず安らぎと安心を感じるのは

つまりそういう事なのだと、あらためて気づきました。

 

地上の生は祝福である。

 

このことが、自分の中にすとんと落ちた時

何か、上手く言えないけれど

心がすごく安心しました。

 

生きていると、いろんなことがあって

なんで生まれたのか、何のために生きているのか

見失い、苦しい時もあるけれど

 

それでもやっぱり

生まれてきたという事は

それだけで祝福されているのだと

改めて思えました。

 

上手く言葉が紡げず、伝えきれない事がたくさんあり

本当は、もっとうまく伝えたいのだけれど

 

言葉にしてしまうと壊れてしまうような何か、

このドキュメンタリー全体にあふれています。

 

豊島美術館の映像を見るだけでも

心が優しくなるので、

是非見て下さい。

おすすめです。

 

豊島美術館の映像は、Youtubeでも見れます

↓↓↓↓

 

『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』 特報 (youtube.com)

 

内藤礼 あえかなる部屋

映画の方はアマゾンプライムです。

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