家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
「日めくりレシピ」で月初めの土日は、スイーツを紹介しています。
私は、子供ころからお菓子作りが大好きで
いろんな凝ったスイーツも作ってきました。
けれど日めくりレシピではそんな難しいものではなくて、
手作りっぽい温かさとかヘルシー感だとか、ちょっとした遊び心とか
そういうものが入っているものを紹介したいなと思っています。
おうちのおやつのインスピレーションを高めるために
おやつ関係の本も結構読みます。
「4時のオヤツ」は、中でも大好きな一冊です。
作者の杉浦日向子さんは、マンガ家であり、エッセイストであり、
お江戸の風俗研究の第一人者。
杉浦さんのお江戸ものは本当に面白く
関西人の私が読んでも、読めば読むほどお江戸が大好きになって
へえ~とか、ほお~とか、どんどんお江戸にはまっていく。
読みだしたら止まらない世界です。
けれど、今回この本は、昭和の香り漂うショートストーリ。
ご本人のプロローグによると
4時というのは中途半端な時間。
午前であっても午後であっても
(凡人の私はここでおおーっと思ってしまった、そうか4時って夕方の4時だけじゃなくて明け方の4時もあるんですねえ~)
半端な時間に、ふと口さみしくなる。
でも、何か食べたいのは空腹だからじゃなくて、ほんの少し物足りないのは気持ちなのだと。
だから、この本に出てくるお話は、もちろん全てにオヤツが出てくるのだけれど
そのオヤツ自体が主人公ではなくて
あくまでそれらのオヤツは
登場人物の会話の中にある、寂しさややさしさや、ほんの少しのすれ違いや
口に出さなかった言葉や、逆にこっそり伝えたかったことや
そんな、半端な気持ちを代弁している黒子に過ぎない
だからこそ、そのオヤツが、またおいしそうで、いとおしくて、
読み手の心にはいりこむ。
紹介されているのは
柳屋のたい焼き
梅むらの豆かん
うさぎやのどら焼き
山田屋まんじゅう
川端道喜のちまき
等、実在のお菓子で、私の大好きなものもたくさん入っていて
そうそう、このお菓子を買ってくるときって、こういう感じなんよね~って
自分の実際の暮らしともオーバーラップするのが、何とも言えない親近感。
そして、杉浦さんのお兄様がとられている写真が、またよくって
それらの写真だけをパラパラ見るだけでも、楽しめます。
さて、この「4時のオヤツ」が甘党向きの本としたら
辛党向きには、「ごくらくちんみ」がおすすめです。
こちらはタイトル通り
酒の肴となる珍味が登場するショートストーリー
わずか1300字の中に、日常の暮らしの情景、人と人とのささやかなかかわりをギュウーっと濃縮させた珠玉のストーリー
さりげなく切り取られた会話の向こう側に、日々の暮らしの営みが果てしなく広がります。
実は、杉浦さんは
有望な新人漫画家としてデビューされたのだけれど
免疫系の難病に侵され、体力的に無理が利かなくなって漫画家を引退。
その後、江戸風俗研究家として、テレビなどでも活躍。
難病そのものは緩解しつつあったのに、今度は下咽頭ガンがみつかり
それでもなお、日々の生活を楽しみながら、前向きに生きる杉浦さん。
この「ごくらくちんみ」はそんな生活の中で
「小説新潮」に、毎月1300字のショートストーリとして連載されていたもの
これを読むと、生きるということは、苦しいことがあっても
自分が楽しもうと思えば、楽しめるのよ
という、杉浦さんの声が聞こえてくる感じがして
仕事も一生懸命、プライベートも一生懸命
前向きに楽しく生きなくっちゃと、元気をもらえるのです。
そんな杉浦さんは
ガンの再手術を受けた直後
なんと南太平洋クルーズに、付き添いなしで一人で出かけらます。
強くて、明るくて、前向きで、常に人生を楽しむすべを知っている人。
46歳という若さで亡くなられたのは、とても惜しいけれど
それでも、今でも杉浦さんの残された作品を読むと
もっと前向きに、もっと楽しく生きてもいいんだよと
励ましてもらえる気がするのです。
なので、この2冊
甘党の人にも、辛党の人にも
おすすめの本です。
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今日の「日めくりレシピ」は「黒みつだんご」
京都の四条通の露店で売っているお団子をまねて作ってみました。
このお団を買って新幹線の中で食べるんですけど
きな粉がぽろぽろとあちこちに飛び散るので
ちょっと行儀悪いのですが雑誌を広げて、その上に黄粉を受けて食べたりします。
ほんのり甘いお団子をほおばる!それも新幹線の中で!
これ、かなり幸せな気持ちになれます。
「日めくりレシピ」はツイッターでも毎日紹介しています。
奥薗壽子で検索してみてください。
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