でいりいおくじょのBLOG

2014.10.04

読書日記「4時のオヤツ」「ごくらくちんみ」(共に杉浦日向子著 新潮文庫)

「日めくりレシピ」で月初めの土日は、スイーツを紹介しています。

私は、子供ころからお菓子作りが大好きで

いろんな凝ったスイーツも作ってきました。

けれど日めくりレシピではそんな難しいものではなくて、

手作りっぽい温かさとかヘルシー感だとか、ちょっとした遊び心とか

そういうものが入っているものを紹介したいなと思っています。
 

おうちのおやつのインスピレーションを高めるために
 

おやつ関係の本も結構読みます。
 
 
 

「4時のオヤツ」は、中でも大好きな一冊です。
 
 
 

作者の杉浦日向子さんは、マンガ家であり、エッセイストであり、
 

お江戸の風俗研究の第一人者。
 
 
 

杉浦さんのお江戸ものは本当に面白く
 

関西人の私が読んでも、読めば読むほどお江戸が大好きになって
 

へえ~とか、ほお~とか、どんどんお江戸にはまっていく。
 

読みだしたら止まらない世界です。
 
 
 

けれど、今回この本は、昭和の香り漂うショートストーリ。
 
 
 

ご本人のプロローグによると
 
4時というのは中途半端な時間。
 

午前であっても午後であっても
 

(凡人の私はここでおおーっと思ってしまった、そうか4時って夕方の4時だけじゃなくて明け方の4時もあるんですねえ~)
 

半端な時間に、ふと口さみしくなる。
 

でも、何か食べたいのは空腹だからじゃなくて、ほんの少し物足りないのは気持ちなのだと。
 
 
 

だから、この本に出てくるお話は、もちろん全てにオヤツが出てくるのだけれど
 

そのオヤツ自体が主人公ではなくて
 

あくまでそれらのオヤツは
 

登場人物の会話の中にある、寂しさややさしさや、ほんの少しのすれ違いや
 

口に出さなかった言葉や、逆にこっそり伝えたかったことや
 

そんな、半端な気持ちを代弁している黒子に過ぎない
 
 
 

だからこそ、そのオヤツが、またおいしそうで、いとおしくて、 
 

読み手の心にはいりこむ。
 
 
 

紹介されているのは
 

柳屋のたい焼き
 

梅むらの豆かん
 

うさぎやのどら焼き
 

山田屋まんじゅう
 

川端道喜のちまき
 

等、実在のお菓子で、私の大好きなものもたくさん入っていて
 

そうそう、このお菓子を買ってくるときって、こういう感じなんよね~って
 

自分の実際の暮らしともオーバーラップするのが、何とも言えない親近感。
 
 
 

そして、杉浦さんのお兄様がとられている写真が、またよくって
 

それらの写真だけをパラパラ見るだけでも、楽しめます。
 
 
 

さて、この「4時のオヤツ」が甘党向きの本としたら
 

辛党向きには、「ごくらくちんみ」がおすすめです。
 
 
 

こちらはタイトル通り
 

酒の肴となる珍味が登場するショートストーリー
 

わずか1300字の中に、日常の暮らしの情景、人と人とのささやかなかかわりをギュウーっと濃縮させた珠玉のストーリー
 

さりげなく切り取られた会話の向こう側に、日々の暮らしの営みが果てしなく広がります。
 
 
 

実は、杉浦さんは
 

有望な新人漫画家としてデビューされたのだけれど
 

免疫系の難病に侵され、体力的に無理が利かなくなって漫画家を引退。
 

その後、江戸風俗研究家として、テレビなどでも活躍。
 

難病そのものは緩解しつつあったのに、今度は下咽頭ガンがみつかり
 

それでもなお、日々の生活を楽しみながら、前向きに生きる杉浦さん。
 
 
 

この「ごくらくちんみ」はそんな生活の中で
 

「小説新潮」に、毎月1300字のショートストーリとして連載されていたもの
 
 
 

これを読むと、生きるということは、苦しいことがあっても
 

自分が楽しもうと思えば、楽しめるのよ
 

という、杉浦さんの声が聞こえてくる感じがして
 

仕事も一生懸命、プライベートも一生懸命
 

前向きに楽しく生きなくっちゃと、元気をもらえるのです。
 
 
 

そんな杉浦さんは
 

ガンの再手術を受けた直後
 

なんと南太平洋クルーズに、付き添いなしで一人で出かけらます。
 

強くて、明るくて、前向きで、常に人生を楽しむすべを知っている人。
 
 
 
46歳という若さで亡くなられたのは、とても惜しいけれど
 

それでも、今でも杉浦さんの残された作品を読むと
 

もっと前向きに、もっと楽しく生きてもいいんだよと
 

励ましてもらえる気がするのです。
 
 
 

なので、この2冊
 

甘党の人にも、辛党の人にも
 

おすすめの本です。
 
 
 
 
 

*************************
 
 
 

今日の「日めくりレシピ」は「黒みつだんご」
 
 
 

京都の四条通の露店で売っているお団子をまねて作ってみました。
 
 
 

このお団を買って新幹線の中で食べるんですけど
 

きな粉がぽろぽろとあちこちに飛び散るので
 

ちょっと行儀悪いのですが雑誌を広げて、その上に黄粉を受けて食べたりします。
 

ほんのり甘いお団子をほおばる!それも新幹線の中で!
 

これ、かなり幸せな気持ちになれます。
 
 
 

「日めくりレシピ」はツイッターでも毎日紹介しています。
 

奥薗壽子で検索してみてください。
 
 
 

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