でいりいおくじょのBLOG

2014.12.06

読書日記 「犬心」(伊藤比呂美著 文藝春秋)


一か月ほど前、NHKのクローズアップ現代で

「どう過ごす?ペットと老いの日々」

というのをやっていて、興味深く見ました。
 

高齢者のみの世帯や独居世帯で、終末期の伴侶として

ペットが家族以上の存在になっているという話でした。
 

ペットとの密な関係が高まる一方で

外部との人間関係を遮断したり、

自分が病気になってもペットを置いて入院することを拒絶し、揚句には自分の健康をおざなりにするなどの問題が起こっているそう。
 

その番組の中で紹介されていたのが、この「犬心」という本。
 

作者であり、詩人の伊藤比呂美さんは、

「良いおっぱい 悪いおっぱい」「おなか ほっぺ おしり」

以来のフアンなのですが

こんな本を書いておられることを全く知らなかったので

さっそく読んでみたというわけです。
 

伊藤さんの家で飼われている飼い犬

タケ  ジャーマン・シェパード 13歳

この本は、タケの亡くなる前の2年間をメインに

犬と人間の暮らしをつづったエッセイ集です。
 

この本には他に2匹の犬が登場して

一匹は、伊藤さんちのパピヨン ニコ
 

もう一匹は、熊本で一人暮らしをしているお父さんと一緒に暮らす パピヨンのルイ

(伊藤さんはカリフォルニア在住)
 

ルイはお父さんとお母さんの年老いた侘しい生活を生き生きとした楽しいものにしてくれた、いわば介護犬といっていいような存在でした。

ところがお母さんがなくなってしまい、

一人になってしまったお父さんの家族以上の存在になってしまったルイ。

年をとって、一人暮らしのさみしさが日々増していくお父さんのさみしさを

ルイが癒すことになりました。

寝ているときにルイがおなかの上に乗っかってくる、その温かさが

お父さんにとっては唯一、日々感じることのできる温かさになっていきます。
 

父さんの唯一の家族的楽しみは、

ルイに食べ物を与えること

一番おいしいところをルイに与えます。
 

お医者さんから止められても、ルイが肥満や糖尿病でいっぱい薬を飲まなくてはならなくなっても

お父さんは自分の食べ物をルイに与えます。

そうやって、ルイとお父さんは毎日を何とか生きてきました。
 

一方、カリフォルニアで伊藤さんと暮らすタケも

日に日に老いていきます。
 

エネルギーが有り余っている幼犬から、落ち着いた成犬になり

いつの間にか、飼い主の年齢を飛び越えて老犬になる。
 

昨日までできていたことが、毎日少しずつできなくなり

だんだんお散歩もつらくなる。
 

歩くのが嫌でも歩かなければ、筋力は確実に落ちる。

歩かなければ、歩けなくなるのよとタケを励ましながら歩かせるのだけれど

その老犬タケの姿は、離れて暮らす父親の姿でもある。
 

年をとっていく父親と、年をとっていく飼い犬

やがて、お父さんが亡くなり、タケも亡くなる。

生きていること、と死んでいくこと。

今、ここに存在した命がなくなる。

さっきまでここにいたものが、今はもういなくなる。

いなくなったけれど、なくならないものがある。

それは犬も人間も同じ。
 

実は、私も今年4月、突然犬を飼い始めました。

奥薗虎之助。

ミニチュワダックスフントとチワワのミックスで、犬種としてはチワックス。
 

生後二か月で家に来て、かわいいかわいいの時期が過ぎて

今10か月のやんちゃ盛りです。
 

うんことおしっことと飯とお散歩と、それだけの繰り返しであたふたと一日が過ぎ

変なものを食べたとか、かじったとか、何かを見つけて逃げ回っておいかけまわしたとか

そんなこんなの毎日。
 

その中に、子供たちが小さかった頃

まだ母親として右も左もわからず、子供たちの一挙手一投足に、一喜一憂した自分がいます。
 

あのころ、母親として未熟すぎて、経験もなさ過ぎて

そして、ただただ忙しすぎて

十分に子供のために時間を使ってあげられなかったことや

もっともっと、抱っこしたり、なでなでしたり、もっと大きな心で見守ってあげたかった

後悔に似た気持ちを

ここで、もう一度、この虎之助を育てることで埋め合わせているのかもしれないと、

思ったりします。
 

やがて、虎之助が大人になって、私の年齢を超す時が確実にやってきて

その時になったら

今度は自分の老いていく姿を、虎之助に重ね合わせていくのかもしれないとも思います。
 

この本の帯に「これは、いのちのものがたり」

とかいてあるのだけれど

動物と暮らすということは、まさに命と向き合うことなんでしょうね。
 

人間よりも速いスピードで成長し、老いていく姿を目の当たりにすることで

否が応でも、自分の生きてきた道を振り返らずにはおれません。
 

子供や親や祖父母たち、家族の成長と老化と死について、

目を背けてきたと、後悔したこと

一緒に過ごした時間についても、過ごせなかった時間についても

動物と暮らす時間の中で、あれこれ思い出し、後悔し、取り戻すことになるんだと思います。
 

動物を飼っている人も、かつて飼ったことのある人

飼ったことはないけれど動物と暮らしてみたいと思っている人

ぜひ読んでもらいたい一冊です。
 

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今日、明日の日めくりレシピは、月初めスイーツ。

今日は「庄内麩のかりんとう」です。
 

山形の庄内地方の特産品、庄内麩を使って作るかりんとうです。

揚げずに作るので簡単&ヘルシーですよ。
 

「日めくりレシピ」は、毎日ツイッターでもお知らせしています。

奥薗壽子で検索してみてくださいね。
 

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