でいりいおくじょのBLOG

2020.12.13

映画日記「ぼけますから、よろしくお願いします。」

痴呆症の母さん、耳の遠いお父さん、離れて暮らす娘

老いゆく両親の姿を、娘でもある監督が丁寧に記録したドキュメンタリー映画です。

 

お互いを思いながら、うまく気持ちが伝わらないもどかしさ

どうしようもない現実。

けれど、その底辺にある優しさや温かさが痛いくらいに迫ってきます。

 

「ボケますから、よろしくお願い申し上げます。」

 

お父さんとお母さんは、広島県呉市で2人で暮らしています。

娘(監督)は、東京で仕事をしています。

 

帰省の時は、東京上野のアナゴ弁当を買って帰るのがお決まりで

それを美味しそうに、食べるお父さんとお母さんの姿からドキュメンタリーは始まります。

 

お母さんの食べっぷりがいい。

本当においしそうに食べる姿は、見ているだけで幸せになります。

 

料理が好きで、社交的で、好奇心旺盛なお母さんと

新聞を読んでいるか、歌を歌っているお父さんの組み合わせは

なんとも微笑ましくて、お似合いで、いいご夫婦です。

 

そんなお母さんに、痴ほう症の症状が現れ

85歳を過ぎたあたりから、家事が思うようにできなくなっていきます。

 

こういう時、

ああ、大変なことになった、どうしようどうしようってなるんじゃないかと

私は、想像していたんだけれど

 

この映画は、あくまでお母さんの気持ちに寄り添っていくんです。

 

お母さんは、周りに迷惑をかけたくないんです。

迷惑をかけたくないという気持ちが強いから

今まで通り、全部きちんとやれないことが、ものすごくもどかしく

でも誰かに助けてもらのは申し訳なく、そんな自分に腹が立つ。

 

思うようにできないことで腹を立て

子供みたいに駄々をこねて、怒ったりする。

 

お父さんも、娘の直子さん(監督)も

それは病気のせいだから仕方ないって思っていて

お母さんのを優しくサポートしているです

 

お父さんは、慣れないゴミ出しをし

3時間もかけて洗濯をし、洗濯物をたたみ

お母さんのために、リンゴの皮をむいてあげる

黙って、お母さんを助けているの。

 

でも、そのことがよけいに、お母さんの申し訳なさや情けなさを増幅させ

思うように動けない自分に、ますます腹が立つ。

 

ある日

お母さんがいら立って、泣き叫び、自分なんか死んだほうがいいって言った時

それまで淡々とお母さんを見守っていたお父さんが

はじめて、声を荒げてお母さんを怒鳴るんです。

 

おこらんで――ってお母さんが泣き叫ぶのに対して、お父さんが言います。

 

お前が怒るから、わしが怒るんだ、と

迷惑だと思わんでいい

ありがとうって感謝する、それだけのことでいいんだ、と。

 

このシーンは、本当に泣けました。

そして、お父さんの言葉はその通りだと思いました。

 

年を取るって、迷惑をかけないと生きられなくなることなんだと思います。

だって、いろんなことがだんだん衰えていくんだから

全部、同じようにできなくなって当たり前なんですよね。

 

でも、その時、

ごめんね、っていうんじゃなくて

ありがとうって言う事。

そこが、大事、

 

何かが少しずつできなくなっていったら、

その部分を誰かに少しずつ代わりにやってもらって

そして、ありがとう、ありがとうって暮らせばいい。

 

それが、年を取るってこと

それで、みんなが幸せになる。

 

お母さんは、いつも人をほめる。

娘が作ったぶり大根を、おいしそうにできたねえっていう

お父さんが焼いた塩サバを見て、おいしそうに焼けたねっていう

ヘルパーさんが作ってくれた蒸し芋を美味しいね~と言ってほおばる。

 

それだけで、十分なんですよ。

周りのみんなを幸せにしている。

ぼけたっていいんです。

 

歳をとることが、少しわかり

自分自身が、やがてそうなっていくんだろうなということを

少し受け入れられそうな気持になりました。

 

本当に、いい映画でした。

おすすめです。

2020年12月12日ぼけ

コメント

メールアドレスは公開されませんのでご安心ください。
また、* が付いている欄は必須項目となりますので、必ずご記入をお願いします。

内容に問題なければ、下記の「送信」ボタンを押してください。

PageTop