家庭料理研究家奥薗壽子オフィシャルサイト
自分とほぼ同年代の作家さんは気になります。
山本文緒さんも、その一人。
一時期、更年期で体調を崩されていて
その顛末を書いた本などもあり
全然面識もないのに、
元気になられたかなあなど思っていました。
だから、2021年度の本屋大賞の候補作に、そのお名前を見た時
これはもう、絶対に読まねばと思ったのでした。
「自転しながら公転する」(山本文緒著 新潮社)
ざっくりとしたストーリーを説明すると
ショッピングモールのアパレルで働く都。
三十代独身、実家暮らし。
以前は東京で独り暮らしをしながら働き、
アパレルの店長までやっていたのだけれど
母親の病気のために、仕事を辞めて実家に戻り
派遣社員として働いている。
貫一という恋人はできたけれど
結婚は出来そうもなく
アパレルの仕事は嫌いじゃないけれど
決して満足しておらず。
母親の病気の世話をするために実家に戻ったのに
本心は、世話をするのが嫌で仕方ない。
いろんな思いが、行ったり来たり
悩み、もがき、苦しみながらも
日々の時間は過ぎていく。
読みながら
自転しながら公転する
というタイトルが、秀逸すぎると、何度も思いました。
自転しながら公転するって
地球の事なんですが
人の暮らしも、同じように自転しながら公転しているなあって
しみじみ思いました。
日々、もがき、悩み、苦しみながら
でも、一日一日を自転しながら生きている
その一方、もっと大きな時間の流れもあって
地球が太陽の周りをまわるように、
私たちの暮らしも、そんな軌道の上で回っていて
しかも、地球が太陽をまわる軌道って
同じように見えて、絶対に同じ軌道をたどらないらしく
それもまた、私たちの暮らしもそうだなあって思う。
一見毎年、毎年、同じように見えても
確実に、良くも悪くも、変化している。
自分以外の惑星と、近づいたり、遠ざかったり
その中で、お互いにひきつけあう星に出会う。
都と貫一は、まったく違う価値観の人間なんだけれど
磁石のNとSがお互いにひきつけあうように
人間もまた、対局にいる人通しがひかれあうというのは
自然の事なのかもしれないなあと思いました。
そう思うと、それは男女の事だけではなく
もっと広い意味で
自分とは全く違う人や物に、わけもなく惹かれることはよくある話で
やっぱりこれもまた、自転しながら公転しつつ、生きている証なんだろうなあ。
都の目線で書かれている部分は、
30代前後の人なら、共感しまくるだろうし
都の母親目線で書かれている部分は
私くらいの年齢の人なら、だれでもおおーって思うはず。
とにかく、現実とオーバーラップすることが多く
自分の暮らしを思い浮かべながら読みました。
最後の終わり方は、賛否両論あるようですが
でも、それぞれの登場人物の人生観が明確になり
ある意味、すっとした終わり方だと私は思いました。
私は、都のような考え方は、あまりなじめず
完全に貫一さんタイプなので
最後まで、貫一さんが大好きで
最後まで貫一さんが、まったくぶれなかったことが、
なんだかすごーくよくて、きゅんとしました。
本当に面白くて一気読みできます。
これは、おすすめです。
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