でいりいおくじょのBLOG

2024.06.11

読書日記「春にして君を離れ」

エッセイや詩や哲学や

今、学びたいことが山ほどあり

読みたい本、読まなければならない本が山ほどあり

実際、毎日コツコツ読んでいるのですが

 

なんか、突然

全然違うジャンルの本を読みたくなり

昔から好きだったアガサクリステイ―を読みました。

 

翻訳物は基本あまり得意ではないのですが

アガサクリステーだけは、なんか好きなんですよね。

 

読んだのは

「春にして君を離れ」(アガサクリスティー著 早川書房)

 

これは、アガサクリステイ―の中でも異色の作品で

事件も探偵も出てこないのです。

 

ジョーン(主婦。夫は弁護士)が主人公で

 

嫁いだ娘(最近子供が生まれたばかり)が病気だというので

バクダットに住む娘の所に行き

ロンドンに帰る途中で大雨に会い

汽車が止まってしまったため

何もない砂漠のホテルに1週間足止めされてしまう。

 

という話で

言葉で書くと、それだけの事なんだけれど

この足止めされた1週間の間に

ジェーンが、いろんなことを思い出したり考えたりするんです。

 

砂漠のホテルなので

料理も、同じような物しか出てこないし

観光する場所もなく

読む本もなく、

手紙を書いてみるんだけれど、すぐに書くことがなくなって‥。

 

やることがないから、

これまでの生活のこと、最近のこと、過去の事

いろんなことを思い出すようになります

 

主婦として

弁護士の夫を支えてきた私

 

私がいなければ、夫はこんなに成功していなかったはず

 

子供たちも、私がいたからきちんと成長した

私が、いなかったら、どうなっていたか

 

やっぱり、私のおかげ。私はよくやっている。

みんな、もっと私に感謝するべき。

・・・・・・・。

 

けれど、いろんなことが次から次へと思い出されていくうちに

 

本当にそうだったのか

という想いがよぎり始めます。

 

夫のロドニーは弁護士よりも農場を経営することが夢で

今でも心の中ではそう思っているのではないか

 

子供たちとの、いろんな出来事も

自分が思っていたことと

子供たちが思っていたことは、違っていたのではないか。

 

見えないところで、上手く収めていたのは夫の方ではなかったか。

 

ジョーンとの結婚生活に波風が立たないように

夫のロドニーは、自分の本当の気持ちを隠して暮らしていたのではないか

 

そして、その心を見せることができたのが

ジョーンの友人のレスリーだったのではないか。

 

断片の思い出が、つながっていくうちに

それまでの暮らしが、自分が見てきたものとは全く違うように見え始め。

家族、友達、生活、子供達、全く違う様相を呈してきます。

 

自分がいなければ、家族は何もできない

生活が回っていかないと思っていたのに

 

本当は

夫のロドニーと子供たちに守られて

自分を傷つけないように気を使われて暮らしていたのだという事

 

そして、それは気のせいではなく

本当にそうだったのだという確信へと変わります。

 

やがて不通になっていた汽車が動き出し

家路に向かうジョーン

家に帰ったら、みんなに謝ろう、やり直そうと思うジョーンだったのですが‥‥。

 

そこの最後の所は

ネタバレになるので敢えて書きません。

ここが一番大事なところ。

 

これを読んで、あらためて思ったことは

じっくり、じっくり自分の人生を振り変えるという事って

やっぱり人生のある時期、必要だって事。

 

って言うのも

この1年、読むと書くの教室で学んだことは

これだったからです。

 

自分の人生で実際に起こった事は、変えようがないのだけれど

その事に対する自分のとらえ方、感じ方が変わることで

全く違うことが、目の前に現れるという事を、

私自身、経験しました。

 

まさに、砂漠のジョーン。

 

でも、本当に大事なのは

気づく事ではなく

その後の人生を、どう生きるかという事

それこそが、一番大事なところ。

 

本当にわかるという事は

自分の中で、何かが変わるという事

その後の生き方が変わるという事

変われるという事

 

分かるだけじゃダメなんですよ

本当にわからないと

本当にわかるという事は

自分が変われるってこと。

 

自分が変わるってことは

一歩踏み出すって事

 

この本を読んで、面白かったで終わってはいけない。

自分の事として、考えねば

 

そんな本です。

おすすめです。

 

アガサクリステイ―

コメント

  1. まり より:

    外国の小説って、あまり読んだことがないのですが(登場人物がすごく多くて誰が誰だかわからなくなります)、この本はとても読んでみたくなりました。これって私にも言えるかもしれない。。。と思いました。
    「自分の人生で実際に起こったことは変えようがないけれど、そのことに対する自分の感じ方、とらえ方が変わるとまったく違うことが目の前に現れる経験をした」と先生はおっしゃっていますが、私はそういう経験がまだできていません。なんというか、考えるのが面倒くさくなったと言ったらいいのか…いつの頃からか、自分の人生に起こったことをあれこれ考えても仕方ないや、というふうに投げ出してしまったのかもしれません。
    いろんな角度からとらえられたら、いつか、わかる時が来て、変われる時が来るのかしら。
    この本、注文して読んでみます。 紹介してくださり感謝です。

    1. 奥薗壽子 より:

      自分の人生をじっくりじっくり振り返ってみると、
      案外、思っても見なかった違う世界に出会えたりするんです。
      焦らずに、自分の人生を振り返ってみて下さい。
      この本も、是非是非読んでみて下さい。

  2. きみ田中? より:

    まさに今の自分に必要な事だと思います。
    夫や家族に守られていたと最近になり気づき始めました。
    朝から再確認できました。
    ありがとうございます。

    1. 奥薗壽子 より:

      自分が思っている以上に、周りのやさしさに助けられているなあと思います。

  3. モフモフごろごろ より:

    奥園先生のでいりいおくじょの大好きです!
    毎日楽しみにしてます💖
    今日のお話も心にしみ共感してます。
    本当に、、、

    私の場合は、気づいた後、自然に変化していきました。
    今も😄
    玉ねぎの皮を一枚一枚むくように、少しずつ少しずつ。。。

    無理なく自然に。。。

    こんな風にコメント書ける私になれたことも、想像できないくらいの大変化です~😊
    楽しくって嬉しいです~

    せんせい、いつもありがとうございます✨✨

    1. 奥薗壽子 より:

      玉ネギの皮をむくように!まさにそんな感じですね~~。
      今、つるつるの面が出てきたって感じですかね。良かったです。
      こちらこそ、うれしいコメントありがとうございました。

  4. より:

    奥が深いですね 考えや思いの幅❓はやっぱり持っていたいなと感じます 私は気づくと独りよがりの考え方になっちゃいます 
    面白そう!ミステリー好きだけどこの本は読んでみたいと思います

    1. 奥薗壽子 より:

      本を読んで、いろいろ考えること。そういう時間が大切だなって思います。
      是非是非読んでみて下さいませ。

  5. ぽちゃ子 より:

    先生、また、恐ろしい本を・・・
    でも、恐ろしいなんて言っていてはいけないですね。
    直面して、認めて、変わらないと。

    解説、栗本薫さんでしたよね?
    懐かしいなぁ。
    今読み返したら、昔とは比べ物にならないほどの衝撃を受けそうです。
    心に余裕のある時に、また読んでみたいです。

    1. 奥薗壽子 より:

      恐ろしい本(笑)
      確かに、ミステリーよりもある意味恐ろしいかもですね。
      解説は栗本さんです。その解説によると栗本さんのご主人は恐ろしさも悲しさも感じなかったとのこと。
      だから、この本って、読む人によって、感じ方がものすごく変わる本なのではと思いますね。
      たぶん、読むたびに、感じ方が変わるのかもです。
      心の余裕がある時に、よかったら。

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