でいりいおくじょのBLOG

2024.07.11

読書日記「レモンとねずみ」

ちょっと前のvoicyで、石垣りんさんの「かなしみ」という詩が紹介されていて

それを聴いていると

何か、すごく心を揺さぶられるものがありました。

 

それで

その詩が収録されている詩集を読んでみました。

 

「レモンとねずみ」(石垣りん著 童話屋)

石垣りん レモンとねずみ

 

エッセイ教室のテキストが

石垣りんの「朝のあかり」というエッセイ集で

それを読んで以来、すっかり大好きになった詩人です。

 

「わたしの前にある鍋とお釜と燃える火と」(童話屋)

石垣りん 鍋とお釜

 

「石垣りん詩集」(伊藤比呂美編 岩波文庫)

石垣りん2

 

も、すぐに手の届くところに置いていて

毎日のように読んでいます。

 

詩って、いまだによく分からないんだけれど

石垣りんさんの詩は

なんていうのか

言葉が、両手を広げて、受け入れてくれている感じがするんです。

 

お座布団を差し出して、まあまあ、ちょっとそこに座って

良かったら、ちょっと読んでみて

みたいな雰囲気があるの。

 

もちろん、書かれている内容は

けっこう、厳しいことや、つらい事や

深い悲しみ、寂しさが描かれているものもあるんだけれど

 

けっして、押しつけがましくなく

上から目線でもなく

私みたいに詩の事なんて何にもわからない者にも

寄り添ってくれるんですよね。

 

そうして、ついつい、読み進めていくうちに

気が付いたら、すっぱり石垣りんワールドに入っている。

 

食べ物で言ったら

おうどんみたいな感じかな。

 

別にお腹がすいていたわけでもないのに

気が付いたら、ペロッと汁まで飲み干して

おかわりしたくなるみたいな

 

さてさて、

そんな石垣りんさんの詩集

「レモンとねずみ」

 

これは、石垣りんさんが亡くなられた後

未発表の詩を整理して(なんと350編くらいあったそうな)

その中から、40篇を編纂して、一冊にまとめたものです。

 

未発表のものなので

詩集に入っているのとは、なんか少し違う感じががするというか

(編纂の仕方によるのかもしれません)

より、本当の石垣りんさんの心の深いところから言葉が出ているような感じがしました。

 

なんだろう?

読んでいると、すごく切なくなる。

 

石垣りんさんは

4歳の時に母親を亡くし

その後父親は、3回再婚し

小学校を卒業後、14歳で銀行に就職して

家族を養いつつ、詩を書き

生涯独身で過ごした人。

その間、戦争も経験し

空襲で家が焼かれたりもした。

 

言葉にできない

悲しさ、寂しさ、やるせなさ、憤り、

それを、ひたすら書くことで、生きた人。

書くことで、生かされたといっていいのかも。

 

未発表の詩というのは

発表されたものとは違う

何かもっと、生々しいような感情が確実にうごめている感じがします。

 

それは、けっして激しくはなく

むしろ、静かで、だからこそ、何かもっと言葉にならない深い何かがうごめいていて

どこか、優しさや、ぬくもりさえ感じるんです。

 

石垣りんさんの詩は

常に、生活があり

コトバの中に日々の暮らしがあるみたいで

この詩集の中の詩は、

石垣りんさんの内面のぎりぎりの切実なものを

より強く感じました。

 

ぎりぎりの切実さを

りんさん自身は、全部きちんと静かに受け止めている感じ。

 

詩集の最後に

石垣りんさんがなくなられた後のお別れの会で

谷川俊太郎さんと、茨木のり子さんが朗読された弔辞が収録されています。

 

それを読むと

自分に対して、本当に正直にまっすぐに生きられた方なんだなあと思いました。

自分にうそをつかず

見たくないものから目をそらさない、逃げない

自分自身の中にある、嫌なものも含めて

現実を受け入れて、淡々と自分の命を全うする

 

そういうことを、

石垣りんさんから、学ばせてもらっているところです。

 

#65 年を経ても変わらない内なる子どもーー石垣りん「かなしみ」より | 若松英輔「若松英輔の「読むと書く」ラジオ」/ Voicy – 音声プラットフォーム

 

 

コメント

  1. 甘利京子 より:

    若松英輔の「読むと書く」ラジオ聞きました
    1回からすべて聞きたくなるようないい内容でした
    『レモンとねずみ』探してみます
    いい本をありがとうございました

    1. 奥薗壽子 より:

      voicy、聞いてくださって、ありがとうございます。
      良いですよね。
      「レモンとねずみ」かなり古い本ですが
      是非探してみて下さい。
      とってもいい本です。

  2. ママデューク より:

    石垣りんさんの「かなしみ」、ネットで探して読んでみました。
    高倉健さんのヤクザ映画「昭和残侠伝」シリーズで、健さんが歌う歌の一節「親に貰った大事な肌を、墨で汚して白刃の下で」
    を思い起こしました。
    親不孝なヤクザになっても、親を有り難く想う気持ちと65歳と歳をとって親もとっくに亡くなっているけれど、親を有り難く想う気持ちがボクの中でリンクしました。
    それでは失礼致します🙇‍♂️足立区一のお調子者f@

    1. 奥薗壽子 より:

      石垣りんさんの詩、読んでくださってありがとうございます。
      素直な言葉で書かれていますが、だからこそ、
      いろんなことを思いますねえ。
      任侠映画とは!!たしかに、たしかに、通じるところある!!

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